世界最大級のカスタムカーの祭典・東京オートサロンのドレスアップ部門で最優秀賞に輝いた佐野雅幸さん。「自分が作った車が世界中で走る」という幼いころから描き続けた夢の実現に向け、経済成長に伴い自動車ブーム真っ只中のタイへ。自慢のカスタムカーで挑む。
愛され続ける「カスタムカー」

タイで最大規模のモーターショー「タイ国際モーターエキスポ」
約2週間の開催期間中には、150万人以上が来場する大人気のイベントで、最新のトレンドは電気自動車。販売台数は、ここ数年で飛躍的に増加し2023年は前の年から7倍増えて、7万台を突破するとみられている。

これまでタイでは日本車が多くのシェアを占め「日本の牙城」と呼ばれてきたが、電気自動車ブームにより中国メーカーの存在感が増してきている。
そんな激動する自動車市場で、変わらず愛されているものがある。

ドレスアップされた、「カスタムカー」だ。
車のカスタマイズやドレスアップが大好きなタイ国民。
活気あふれる会場で、ひときわ真剣なまなざしで車をみつめる男性がいた。

SDESIGN 佐野雅幸代表:
「僕が作る車は決して負けてないと思います」
カスタムカーが愛されるこの地で挑戦する佐野さんに密着した。
「やれることってこれしかない」

富山県南砺市池尻。
緑豊かな場所で作られているのが、SD-3(エスディースリー)と名付けられたカスタムカー。

トヨタ自動車とスバルが共同開発した、後輪駆動の小型スポーツカー・GR86(ジーアールハチロク)をベースに作られている。
なめらかで美しいカーブを描くスマートな車体とボンネットの一部を透明にして、エンジンを見えるようにした独自のデザインが特徴だ。

このカスタムカーを手掛けるのが、佐野雅幸さん47歳。
従業員4人の小さな工房、SDESIGN(エスデザイン)の代表だ。

SDESIGN 佐野雅幸代表:
「これ全部僕が手書きで書いています。自分で作った車が町中走っているのが夢ですね」
小さいころから車が大好きだった佐野さん。
自動車整備士の道へ進み、個性豊かなオリジナルカーを手掛ける県内のメーカーへ就職。

スーパーカーの開発に携わるなど腕を磨き、34歳でエスデザインを立ち上げた。
SDESIGN 佐野雅幸代表:
「なかなか最初知名度もない状態からやっているので現実的に食べていくのも大変だったし…辞めたいと思うことは年中あります。年中ありますが、結局やれることってこれしかない。この道をひたすらやってる。」
競技用車椅子や義足など車以外の仕事もこなしながら、決して夢を諦めなかった佐野さん。
独立から8年がたった2018年。ようやく大きなチャンスをつかむ。
世界最大級のカスタムカーの祭典、東京オートサロンで、初参加だった佐野さんが、ドレスアップ部門で最優秀賞を獲得するという快挙を成し遂げた。

これをきっかけに、アメリカやオーストラリアからも注文が入り、生産が追いつかないほどになった。
次にねらう市場は、カスタムカー王国・タイ。
自ら現地で売り込もうと決めたが、従業員はどこか心配だった。

SDESIGN 堀幸代さん:
「職人気質過ぎて、売れないんですよ。自分で営業ができなくて。それでよく世界向かっていくなってちょっと心配ですね。」

SDESIGN 佐野雅幸代表:
「大丈夫です。多分」
従業員の不安をよそに、一人タイへ。

向かったのは、現地で人気のカスタムカーショップ。
日本のスポーツカー86のカスタムを専門に手掛けている店だ。
手作りのチラシをもって、おそるおそる商談を始めた。

SDESIGN 佐野雅幸代表:
「このボディキットを取り扱っていただける店を探しています」
店主:
「デザインがとても良いです。フルボディで約80万円は高くない」
デザインも価格は高評価。しかし、ある問題が…
店主:
「ワイドボディはきれいだが、タイの道路で運転しにくい」
デザインにこだわり、幅を広げ、車高も下げた佐野さんのカスタムカー。

舗装されていない道路も多いタイでは走りにくいのではと、痛い指摘を受けた。
佐野さんは、量産に向けて改良できるとアピールを続け、海外での初商談を無事にまとめた。

自分で作った車が世界中で走る。
幼いころから描き続けた夢の実現へ、また一歩近づいた。

SDESIGN 佐野雅幸代表:
「うちの独自のデザインで勝負していけば、いいとこ行けると思います」
11の国がある東南アジア。総人口は6.7億人。ASEAN・東南アジア諸国連合ができた1967年、230億ドルだったGDPは今や約3兆ドルと100倍以上に達している。世界から東南アジアに熱い視線が注がれる中、富山の企業はどのような戦略で挑むのか。発展が著しい東南アジアで奮闘する県内企業を紹介する。
(富山テレビ)