米大統領選のトランプ陣営が、ロバート・ケネディ・ジュニア氏に副大統領候補を打診したという怪情報がワシントンをさまよっている。

“副大統領打診”トランプ陣営は否定したが…

まずはFOXニュースとニューヨーク・ポスト紙という、いずれも共和党寄りのマスコミが1月末に伝えたもので、トランプ氏にごく近い人物がケネディ氏に接触してトランプ氏の副大統領候補への出馬を促したという。

“副大統領候補打診”について、ケネディ氏は「そんなことしたら離婚される」とコメント。トランプ陣営は否定。
“副大統領候補打診”について、ケネディ氏は「そんなことしたら離婚される」とコメント。トランプ陣営は否定。
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この話は直ちにトランプ陣営に否定されたが、ケネディ氏に接触した人物は「何が起きてもおかしくない」と前言を撤回せず、疑念が残る中で当のケネディ氏は1月31日、妻で女優のシェリル・ハインズさんを伴ってロサンゼルスでのパーティに出席した際に、芸能誌バラエティの記者にマイクを突きつけられるとこう言った。

「そんなことをしたら離婚されてしまうよ」

しかし、ケネディ氏とトランプ両陣営に献金している支持者の一人は、ニュースサイト「ブラスト」にこう語っている。

「事態はまだ水面下でうごめいている段階だが、その内にいろいろと表面化してくるだろう。なにしろボビー(ケネディ氏の愛称)は、投票所へ新しい有権者を連れてくることが強みだからだ」

ケネディ氏の支持層は

こうした憶測の背景に、2023年12月11日にニュージャージー州のモンマス大学が公表した2024年大統領選をめぐる世論調査がある。

ケネディ・ジュニア氏
ケネディ・ジュニア氏

「間違いなくケネディ氏に投票する」6%「おそらくケネディ氏に投票する」15%と、有権者の21%が「ケネディ氏に投票する」と答えていたからだ。その票がどの支持層から来るかといえば、トランプ、バイデンの支持者からそれぞれ14%、その他から49%となっている。

トランプ陣営の“ケネディ氏副大統領勧誘説”が流れはじめたのは、この数字が公表されたのとほぼ時を同じくする。

現実に、民主党のシンボルのようなケネディ家の血を引くロバート・ケネディ氏が、共和党でも最右翼のトランプ氏の副大統領候補になるには、超えなければならない課題が多いように思うが、それでもそうした情報がまことしやかに伝えられることに、2024年の大統領選でケネディ氏の存在感が大きいことを示しているようだ。

「無所属」から第3政党への鞍替えの可能性も指摘される
「無所属」から第3政党への鞍替えの可能性も指摘される

「民主党と共和党のエリートは、RFK Jr(ロバート・ケネディ)の勝利への成長の道を恐れている」

政治専門サイト「ザ・ヒル」3日の記事見出しだ。

筆者は、レーガン大統領やブッシュ大統領のスピーチライターだったダグラス・マッキノン氏で、ケネディ氏が近く無所属から既存の「リバタリアン党」に鞍替えする可能性が高く、その場合、全米50州で共和・民主二大政党の候補者と肩を並べて選挙を争う立場になるとしている。

討論会などへも参加できて、「泡沫候補」扱いをされずにその存在感を示す機会は大幅に増えると考えられる。

その結果、各州に割り当てられた「選挙人」の獲得までには至らなくとも、選挙の行方を大きく左右する立場になると予測でき、そうしたケネディ氏の成長の道が共和、民主両党の選挙戦を混乱させると記事は分析する。

「今後9カ月は、非常に興味深く、啓発的になるだろう」

マッキノン氏は記事をこう結んでいるが、はたして……。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。