大統領選を控えるアメリカで、「反トランプ」を掲げるテイラー・スウィフトさんをめぐる陰謀論が飛び出している。
11日に開催されるスーパーボウルで、恋人のために観戦に向かうのでは…といわれており、トランプ氏支持の極右メディアや熱狂的支持者層から、「試合が操作された」などとバイデン政権に対する批判が巻き起こっている。
スーパーボウルに陰謀論
アメリカ大統領選挙を前に、人気歌手、テイラー・スウィフトさんの動向をめぐり、陰謀論が飛び交う激しい批判が、トランプ前大統領の支持層などから巻き起こっている。
テイラー・スウィフトさんは、2020年に続き、再びバイデン氏を支持するとの見方があり、アメリカのメディアは「バイデン氏の陣営は、支持を積極的に求めている」と報じている。
これに対し、共和党の候補者指名が有力なトランプ前大統領の支持層などからは、政治への関与をやめるよう求める批判の声が巻き起こっている。
さらに、テイラー・スウィフトさんの恋人のアメリカンフットボール選手が、全米が注目するスーパーボウルに出場を決めたことで、その場をバイデン大統領への支持表明に利用するとの憶測も広がり、「試合が操作された」などとバイデン政権の不正を訴える陰謀論も出る事態となっている。
ここからは、フジテレビ・立石修取材センター室長がお伝えする。
── 世界の歌姫に、なぜトランプ支持者たちが反発しているのだろうか？
そもそも、テイラー・スウィフトさんといえば「Shake It Off」など、日本でも有名な曲がたくさんある、アメリカを代表する歌手の1人だ。
テイラーさんは、主に若者からの支持が絶大で、インスタグラムのフォロワー数は、2.7億人と日本の人口より多い。
また、人種やマイノリティーの支援活動も熱心で、雑誌「TIME」では「2024年の顔」に選出され、表紙を飾っている。
音楽のみならず、ライフスタイルにも影響を与える世界的インフルエンサーだ。
そのテイラーさんの恋人はアメリカンフットボールの有名選手、トラビス・ケルシー選手で、アメリカではスーパーカップル扱いだ。
そのケルシー選手が、プロフットボール決勝戦「スーパーボウル」に出場する。
ただ、テイラーさんは現在、世界ツアーの真っただ中。
試合前日の10日まで東京で公演を行っており、応援に行くのは難しい状況だ。
そこで、テイラーさんは東京での公演終了後、すぐにプライベートジェットに乗り込み、応援のため、スーパーボウルの競技場があるラスベガスに向かうのではといわれている。
忙しい中、恋人に会いに行くといういい話だが、これにトランプ支持者たちが「陰謀だ！」とかみつき、テイラーさん批判を繰り返している。
スーパーボウルは、アメリカの超ビッグイベントで、視聴者は1億人を超える。
ここにテイラーさんが恋人と並べば、アメリカ中の注目が集まる。トランプ氏の熱烈な支持者はこれが許せないようだ。
若い有権者からの支持が高い
その理由は、テイラーさんが「反トランプ」を明言しているからだ。
テイラーさんは、SNSでこれまでも「人種差別と白人至上主義の炎をあおってきた」と、トランプ氏を痛烈に批判している。
11月の大統領選も、前回の2020年に続いて、バイデン氏を支持するとみられている。
そのため、トランプ氏を支持する極右メディアや熱狂的な支持者層からは、「スーパーボウルでバイデン大統領支持をこの2人が打ち出すのでは！」や「民主党のテイラー・スウィフトを使った選挙妨害心理戦だ」など、テイラーさんのスーパーボウル観戦は「バイデン政権の仕組んだ陰謀」だとの怒りが噴き出ているという。
背景にあるのは、テイラーさんの絶大な影響力だ。
2024年に行われた世論調査では「テイラーさんが支持する候補者に投票する」と答えたアメリカ人は18％。特に35歳以下の若い有権者は約30％がそう答えていて、社会的な影響力が大きい。
そのため、トランプ氏支持者はどうしても気になってしまい、反発が起こっている。
今回の件に関して、アメリカの主要メディアであるCNNは「地球上で最も強力なエンターテイナーの1人が、邪悪な陰謀で操られていると考えるのは馬鹿げている」と論評している。
テイラーさんは10代でデビューし、キャリアの初期では政治的な発言などはほぼ見られなかった。
しかし、トランプ政権発足以降、明確に自分の政治に関する考えを打ち出してきた。
欧米ではアーティストが時の政権に対して、忖度(そんたく)なしに自分の考えを言うのは当たり前で、それを陰謀論に結びつけるのは、なんとも変だと思われる。
著名人は政治に利用されがちだが、政治とスポーツも分けて考えるべきだ。
（「イット！」 2月1日放送より）
