2024年元日、石川県能登地方を震源とし、最大震度7を観測した能登半島地震。石川県内では多くの建物が倒壊。これまでに220人以上の死者が確認されているが(1月15日現在)、福岡市の中心部を貫く「警固断層」を震源とした地震が発生した場合、福岡県では、その数を大きく上回る犠牲者が出ることが想定されている。「都市直下型」の地震から身を守るには、どんな備えが有効なのか、いますぐできる対策を取材した。

福岡市の多くで震度6強の恐れ

マグニチュード7クラスの地震は、かつて福岡でも発生している。2005年の「福岡県西方沖地震」。

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死者1人、負傷者1087人、全壊した家屋133棟に達するなど福岡市を中心に大きな被害が出た。

この西方沖地震の震源域となったのが、「警固断層帯」だ。

2005年に揺れたのは玄界灘に位置する「北西部」。164万の人口を有する福岡市の真下を通る「南東部」ではまだ地震は起きていない。

2023年に福岡県がまとめた防災計画によると、今後、警固断層ではマグニチュード7・2程度の地震が発生するリスクが想定され、福岡市内の多くで震度6強の揺れが発生する恐れがある。地震による死者は1147人、約1万8千棟の建物が全壊すると想定されている。

国の地震調査研究推進本部によると、警固断層で地震が発生する確率は最も高い「Sランク」だ。

地震に備えた効果的な対策は?

福岡で、いつ起きても不思議ではない大地震からどう身を守るのか?

災害に強い住宅に詳しい「福岡県建築住宅センター」の森住直美さんが、まず紹介してくれたのは、壁に補強材を取り付けて「耐震性」を上げる方法だ。

「福岡県建築住宅センター」森住直美さん:
(補強材は)住宅の壁が弱い場合に大破を逃れるということで、倒壊を少しでも軽減できるという意味で、効果は大きいと思います

そして、補強用の「筋交い」の重要性。さらに、重い瓦を軽い建材に変更した場合の揺れの違いは一目瞭然だった。

ただ、建物の耐震補強やリフォームには最低、数週間を要する。あすにでもできる対策として、森住さんは「家具の固定」などを挙げた。

「家具固定」に「感電ブレーカー」

ホームセンターなどで数百円から購入できる家具の固定器具。

さらに地震の揺れを検知し、自動でブレーカーを落とす装置。

感電ブレーカー
感電ブレーカー

停電から電気が復旧する際の「通電火災」も防ぐことができ、約1万円で購入可能だ。

また、福岡市ではすでに全世帯のうち半数以上を「単独世帯」が占めているが、1人暮らしの高齢者が生き埋めになるのを防ぐことができる「耐震ベッド」も注目を浴び始めている。

価格は25万円。

そして、福岡県は自宅にどんな補強が必要なのかをプロに診断してもらう取り組みを推進している。

「一般診断」は6千円、床下に入らない目視での「簡易診断」は3千円で受けることができる。

築50年近い木造住宅で暮らす小金丸幹夫さんは、「耐震診断」を受けた1人だ。

プロが行う「耐震診断」

「耐震診断」を受けた小金丸幹夫さん:
私の知り合いが熊本地震で奥様が下敷きになりまして、益城でね。助かったんですけど、複雑骨折で長いこと入院されていたんです

この家の耐震診断にあたったのは建築会社を経営する白水秀一さん。

白水さんは2007年に福岡市と協力して「耐震推進協議会」を立ち上げた。

「住環境工房らしんばん」白水秀一代表:
壁の位置とか、窓の位置が重要になるので、それを正確に図面の中に書き込んでいきます

部屋の畳をはがして床下の点検に入った白水さん。

基礎のコンクリート強度の分析や、木材の状態も見ていく。

「住環境工房らしんばん」白水秀一代表:
木材の含水率のチェックです。含水率が30%を超えてくると木が「じゅく」っと湿ってきて、シロアリの被害に遭いやすいと言われています

この住宅では実際に、シロアリによる被害が確認されている。

「住環境工房らしんばん」白水秀一代表:
これが「蟻道」です。膨らみがありますけど、なかがトンネルになってるんです。木材の中から食べるもんですから表面的にはなかなか分からない

その後、この住宅では耐震補強の工事が行われ、震度6強の地震でも倒壊しないレベルにまで耐震性が改善した。

改修にかかった費用は約230万円。このうち60万円は行政からの補助金を活用した。

耐震性確認を!1981年以前は特に注意

「耐震診断」を受けた小金丸幹夫さん:
もう年齢が年齢ですから、いま、もし地震で住宅が壊れて、もう1回、建て直す気力が自分にはないような気がするんです。(耐震診断を受けて)やっぱり安心感はありますよね

福岡県内の住宅全体の耐震化率は2018年の時点で89・6%だが、高齢者が多く暮らす木造の戸建てに限定すると78・3%と8割以下となっている。

県建築住宅センターの森住さんは、「まず自分が住んでいる住宅の耐震性を確認することから始めてほしい」と話す。

「福岡県建築住宅センター」森住直美さん:
昭和56年(1981年)以前の住宅にお住まいの方は、耐震性が低い住宅が多いので、まずは、いま、お住まいの住宅がどういったものかまず認識していただきたい
(テレビ西日本)

テレビ西日本
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