2024年が始まった。元日に能登半島地震が発生し晴れやかな気分での幕開けとはならなかったが、経済の世界では期待の持てる言い伝えがある。「辰年は景気が良くなる」とされているのだ。2023年に悩まされた物価高や、その一因となった円安、さらに超低金利が続く日本銀行の金利政策は2024年に変わるのだろうか、経済専門家に聞いた。

物価は高止まりか

2024年の初日の出
2024年の初日の出
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新型コロナによる長く暗いトンネルを抜け、徐々に人の流れ、物の流れに活気が戻りつつある。
しかし、物価の高騰や人手不足、ウクライナや中東で続く戦争、それに自民党の派閥による裏金問題など、不安を抱えたまま新しい年を迎えた。
言い伝えでは「景気が良くなる」とされる「辰年」の2024年、日本の経済はどのような方向に進むのだろうか。

2023年はロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化で、燃料や資源価格が高騰しモノの値段が上昇。民間の調査機関によると、食品・飲料関係だけで約3万2,000品目が値上がりした。
歴史的な物価高騰に見舞われた2023年が終わり、2024年の物価はどのように推移するのだろうか。

静岡経済研究所・垣友仁 専務理事
静岡経済研究所・垣友仁 専務理事

静岡経済研究所の垣友 仁 専務理事は、現在の物価高の要因を「燃料や資源価格による高騰」と「人手不足を背景とした賃金の上昇と、それに伴うサービス価格の上昇」との混在と分析したうえで、「これまではコストが上昇して起こったコストプッシュ・インフレという“悪いインフレ”で、これからは需要が喚起されてインフレが起こるディマンドプル・インフレという“良いインフレ”に移行しつつある。2024年の物価は徐々に下がってくると思うが、基調としてまだ高止まりが続く。肌感覚としては『まだ物価が高い』と感じる1年になる」と予測する。

輸入品に影響する為替相場は?

2023年10月には1ドル150円を突破
2023年10月には1ドル150円を突破

エネルギーや食材など多くのものを輸入に頼る日本は、為替相場が物価に大きく影響する。
新型コロナの流行前には1ドル105円~115円で推移していた円相場は、アメリカの金融引き締めに伴う金利の引き上げによって、「円売りドル買い」が進み2023年10月には150円を突破した。日銀の金融緩和政策の継続で、年が明けても円安傾向は続いたままだ。

静岡経済研究所の垣友 仁 専務理事は「2024年半ば以降は1ドル130円~140円が落ち着きどころと見ている」と話す。円安が落ち着くと予想する理由は、円安の大きな要因となる日本とアメリカの金利差の縮小だ。2023年はアメリカが日本に比べ5%以上高かったが、徐々に縮小してくるとみている。ただ縮小しても4%程度の金利差は残るとみられ、「完全に円高になるということではない」と推測する。

観光客増加にどう対応?

新型コロナによる行動制限がなくなり、2024年は2023年にも増して国内外からの観光客の増加が期待される。
静岡市によると、2023年4月以降 清水港に入港した豪華客船は海外船籍が47隻、国内船籍は3隻で、特に外国船籍の入港は年度ベースでは新型コロナ拡大前と比べて大幅に増加している。
しかし、宿泊業や飲食業などでは人手不足が続き、供給が追いついていないと指摘されている。静岡県内のホテルや旅館では、空き部屋があるにもかかわらずスタッフ不足で稼働できず、予約を断るケースも出てきている。

清水港に入港した豪華客船
清水港に入港した豪華客船

静岡経済研究所の垣友 仁 専務理事は「生産年齢人口が減っていく中で、各企業がこれまでのやり方を踏襲しているだけではダメ。例えばDX(デジタル技術による変革)を活用し自動化・省力化を図る、あるいはリスキリング(再学習)をして社員のスキルを上げていくなど、様々なことで生産性を上げていくことが重要」とアドバイスする。

「経済の新た流れをつかんで」

スズキ(本社・浜松市)の工場
スズキ(本社・浜松市)の工場

日本銀行静岡支店が2023年12月に発表した静岡県内の「企業短期経済観測調査」によると、景況感はすべての産業で改善し、多くの企業が景気の回復を実感している。
政府も物価高騰対策などを含む一般会計の総額で13兆円規模の補正予算を組んで経済の押し上げを図る。

2024年にビジネスで成功するためのカギは、「新潮流の中での成長=経済の新たな流れをつかむこと」と、静岡経済研究所・垣友 仁 専務理事は指摘する。
垣友 仁 専務理事は「2024年は2023年までとは違った風が吹いてくる。円安は変わるだろうし、金利も上がってくる、物価も違った方向に動くかもしれない。国際情勢もアメリカや中国の経済が減速するかもしれない。日本を取り巻く経済環境は新たな流れが出てくると思う」と予測し、「そうした中で風や潮の流れをうまくキャッチできるかどうかが、今後の成長にかかわってくる」と話す。

「辰年は景気が良くなる」というが…
「辰年は景気が良くなる」というが…

他の専門家の予測でも「2024年の経済は緩やかな回復」という見方が多い。ただ中国をはじめとした海外の経済や資源エネルギー価格の動向、それに企業の人手不足や賃上げの状況など、2024年は経済にとって不確実な要素が多く、しばらく注意深く見ていく必要がありそうだ。
日銀がマイナス金利政策を解除し「超低金利の時代」から「金利のある世界へ」と移っていくかも注目だ。日銀の金融政策や世界情勢などが景気の押し上げを左右しそうだ。
賃金の上昇で消費が回復し、企業の業績も上向くプラスの循環に期待したい。“辰年の好景気”はくるか。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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