鳥取・江府町にIターンした男性が、廃校になった小学校の校舎で、コーヒー店を営んでいる。
古い校舎の設備を活用しながら、この町ならではの方法で、こだわりのコーヒーを提供する男性の思いを、JALふるさと応援隊・徳田あゆみさんが取材した。

廃校の理科室を“コーヒーの焙煎所”に

雪化粧した大山山麓に位置する鳥取・江府町。

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男性が店を構えるのは、14年前に閉校した旧米沢小学校の校舎だ。JALふるさと応援隊の徳田あゆみさんが訪ねると、店主の遠藤明宏さん(67)が「いらっしゃいませ。遠路はるばる、ありがとうございます」と笑顔で迎えてくれた。店に入った徳田さん、独特の良い香りに気付いた。

奥大山の水洗い珈琲・遠藤明宏さん:
そう、ここはコーヒーの焙煎(ばいせん)所です。毎日の焙煎作業によって、コーヒーの香りが漂っていると思います

遠藤さんは、この古い学び舎(や)で「奥大山の水洗い珈琲」という会社を立ち上げている。もともとは教室だったスペースをうまく活用しているということだが…。

JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
この部屋は、以前、何の教室でしたか?

奥大山の水洗い珈琲・遠藤明宏さん:
ここは理科室でした。焙煎機の熱源にガスを使用しているので、(ガス・水道などの)インフラが整っている理科室は「水洗い珈琲」を作るのに最適な場所だったんです

Iターンが人生の転機に

千葉県出身の遠藤さんは、63歳のとき、江府町に移住し、このコーヒー店を始めた。

「自分で商品を開発し、新しい分野にチャレンジしたい」と55歳で会社を早期退職。起業を夢見ながら、アルバイトをする日々の中で、楽しさを見いだしていたのが、趣味のコーヒーの焙煎だった。そして、妻の故郷である鳥取・倉吉市にIターンしたことが、人生の大きな転機になったそうだ。

実は遠藤さん、“理想の焙煎“を実現するため、質の良い水を探していた。移住したあとも、鳥取県内で探し続け、ここ江府町にたどり着いたという。

奥大山の水洗い珈琲・遠藤明宏さん:
江府町の水がすばらしく、これが「奥大山の水洗い珈琲」を立ち上げる決断になりました

大山にふもとに位置する江府町は豊かな森に恵まれ、良質の地下水が湧出。大手飲料メーカーのミネラルウォーターの工場も進出している。

遠藤さんは、そんな江府町の豊かな自然に育まれた水に着目、コーヒー豆の焙煎に必要なインフラが整った廃校の小学校校舎を借り受け、コーヒー豆の会社を立ち上げた。かつての理科室に置かれた焙煎機で、“理想のコーヒー”を作っている。

こだわりは“コーヒー豆を水洗い”

遠藤さんのコーヒーづくりは、まず豆の選別から始まる。割れたり、カビが生えたりした豆を取り除いたあと、選び抜かれた豆に、ある“ひと手間”を加える。

奥大山の水洗い珈琲・遠藤明宏さん:
奥大山の水できれいに生豆を洗って、それから焙煎する。まずは水洗いします

焙煎前のコーヒー豆を水洗い。遠藤さんの一番のこだわりだ。実際にどのように洗うのか、遠藤さんに見せてもらった。生豆をもむように、ていねいに洗って、汚れを落としていく。徳田さんも水の冷たさを感じながら、「水洗い」に挑戦した。丁寧に豆をもむと、水はみるみる茶色く濁っていった。

色がどんどん茶色に…
色がどんどん茶色に…

JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
水の色がどんどん色が濃くなってきていますね

こうして、水洗いすると、雑味がなくすっきりした味わいになるという。このひと手間のあと、ようやく焙煎だ。

温度をこまめに管理し、少しずつ変化していく豆の色や音を確かめながら、「中煎(い)り」にするのが、遠藤さんのこだわりだ。そして、焙煎すること約20分。

JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
豊かな香りがします。豆の選別、そして、水洗い、焙煎と、本当に手間ひまかかっていますね

奥大山の水洗い珈琲・遠藤明宏さん:
このひと手間をかけることが大切。そうすることで、世界に通用するコーヒーになるので、手を抜かない、これが大切なことだと私は思っている

そんな遠藤さんのこだわりのコーヒーをいただいた。

JALふるさと応援隊・徳田あゆみさん:
雑味もなくて、本当に奥深い。おいしいです

奥大山の水洗い珈琲・遠藤明宏さん:
奥大山の水は軟水なので、抽出するときも余計なものが入っていない。豆に入っているいろいろな成分をそのままストレートに抽出できる

奥大山の水にほれ込んで、起業してから3年。2023年の売り上げは約1,500万円と、右肩上がりだそうだ。

奥大山の水洗い珈琲・遠藤明宏さん:
私は残りの人生を“人生の主人公”として、このまま、さらに充実させていきたい。そして、このコーヒーを江府町から日本の津々浦々まで、コーヒー好きの人たちに送り届けたい

第二の人生でようやくたどり着いた“理想のコーヒー”。
自然豊かな江府町の風土が育んだ遠藤さんのコーヒーは、町内の道の駅やインターネット通販で購入できる。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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