政治資金パーティーに関わる“裏金”疑惑に揺れる自民党の最大派閥・安倍派。臨時国会の閉会を受け、東京地検特捜部が本格捜査に乗り出すと言われる中、静岡県内の安倍派議員の発言に衝撃が広がっている。

激動の2週間…始まりはオスプレイ墜落

わずか半月ほど前までは、よもやこんな形で年末を迎えようとは思ってもいなかったのではないだろうか?

12月14日に防衛副大臣の職を辞する意思を示した自民党・安倍派の宮澤博行 衆議院議員のことだ。

苦難の始まりは11月29日。鹿児島県の屋久島沖でアメリカ軍の輸送機・オスプレイが墜落し、乗員8人全員が死亡した事故で、防衛副大臣として政府見解を発表した宮澤議員は当初、「最後の最後までパイロットが頑張っていらっしゃったということでございますから『不時着水』という言葉でございます」と述べ、世間を困惑させた。

関係者によると、宮澤議員はアメリカ軍からの説明を受けた防衛官僚からのレクチャー通りに見解を示しただけなのだが、X(旧Twitter)では一時、「不時着水」という言葉がトレンド入りするなど“悪い意味”で注目を浴びた。

秘書逮捕 そして国会閉会日に…

それから、わずか10日後。今度は地盤とする静岡県磐田市で、私設秘書が軽自動車を運転中に横断歩道上の歩行者をはね、ケガをさせたとして現行犯逮捕された。この秘書は12月に入って採用したばかりだった。

秘書の逮捕を受け謝罪する宮澤議員(12月10日)
秘書の逮捕を受け謝罪する宮澤議員(12月10日)
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そして、12月13日。臨時国会が閉じられると宮澤議員はこれまでに経験がないほど多くの報道陣に囲まれていた。

一部の報道機関に対して、安倍派の政治資金パーティーをめぐりキックバックを受領していたことや政治資金収支報告書に収入として記載していなかったことを認めたと報じられていたからだ。

大激白…きっかけは副大臣更迭報道

開口一番、宮澤議員は「派閥の方から『収支報告書に記載しなくてよい』という指示がございました」と述べた。

本人の話によれば、受領した金額は2020年~2022年の3年間で140万円。ただ、具体的に“誰”からどのような“指示”があったのかについては「私はまったくわかりません」としている。

最初は当時のことについて「『そういうものなのかな』という風にしか思わなかった」と答えていたが、その後、意を決したように「こうなった以上、正直に申し上げます。『大丈夫かな?』とは思いましたけれども『これで長年やってきているんだったら適法なのかな』と、そういう風に推測せざるを得ませんでしたので、その指示に従ったわけです」と、不安があったことを明らかにした。

多数の報道陣に囲まれる宮澤議員(12月13日)
多数の報道陣に囲まれる宮澤議員(12月13日)

なお、収支報告書に記載しなかった金は「政治的な活動として使わせていただきました。様々な団体の年会費、自分の政治活動としての交際費、そういうところに使っております」と説明した上で、「国民の皆さんからいただいた大事な大事なお金でございますので、厳正に管理し政治的活動として使わせていただきました。そして領収書もしっかり留めてございます」と釈明。

また、今回の裏金疑惑については「『しゃべるな!しゃべるな!』これですよ」と語気を強めながら派閥内でかん口令が敷かれていたことを認め、今後も派閥に残るのか問われると「仲間の信頼を裏切ってしまったわけですので、これについては慎重に考えたいと思っております」と口にした。

なぜこのタイミングで宮澤議員が激白に至ったのか?そこにはわけがある。

それは副大臣の更迭が決定的になっていたことだ。

この点には本人も言及していて、「“一時の感情”といえばそうかもしれませんが『その(更迭の)判断はないだろう』」と悔しさをあらわにし、「不記載ということはお詫びしなければなりませんけれども、厳正に管理をしてきて『この結果ですか?』ということは正直、大変残念」と肩を落とした。

そして、最後にこう言った。

「国民の皆さんに開示するときが来たと私は判断致しました」と。

激白は本心?打算?有権者の判断は…

剣道六段、居合道五段と武道家としての顔を持つ宮澤議員。それゆえに、“武士道”の精神のごとく曲がったこと、卑怯なことは許せないとの思いがあったのだろうか?取材に応じ、すべてを洗いざらいさらけ出したことは公設秘書すら“寝耳に水”だったという。

一方で、政治家ゆえに何らかの打算があったことも想像される。

特に宮澤議員の場合、2021年の衆議院議員選挙で4回目の選挙にして初めて小選挙区で敗れ比例復活に回るなど、厳しい状況に置かれている。

疑念を深めるきっかけを作った塩谷座長(12月10日)
疑念を深めるきっかけを作った塩谷座長(12月10日)

思えば安倍派をめぐる裏金疑惑は、同じ静岡県の浜松市を地盤とする塩谷立 座長がキックバックについて「そういう話はあったと思います」と話したことで疑念が深まった。後に撤回したものの時すでに遅しで、さらに今回、宮澤議員が“疑惑”ではなく“事実”と認めた格好になる。

県内の有権者はこの問題について両議員を、安倍派を、ひいては自民党をどう評価するのか。その審判は次の衆院選で下されることになる。

(テレビ静岡)

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