自民党の最大派閥・安倍派で、政治資金パーティーの収入の一部が、所属議員にキックバックされ裏金になっていたとされる疑惑について、 かつて二階派に所属、京都選出・自民党の元衆議院議員、宮崎謙介さんに聞いた。

古巣・二階派でも裏金疑惑…どう見ている?

この“パーティー券収入”の問題をめぐっては、5日も国会で野党からの激しい追及があったが、安倍派の幹部たちは、具体的な回答を避け続けている。 安倍派だけでなく、二階派でも裏金疑惑が浮上しているが、古巣でこのような大きな問題が起きていることは、どう受け止めているのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
当選1回、2回生議員というのは、パーティー券を販売して行くという役割があって、一生懸命それをさばくわけですが、会計自体のことについてはノータッチだったわけです。当然、派閥のことを信用してやっていたので、もし意図的に不記載や裏金と言われるようなことにつながっていることがあったのだとするなら、多くの真面目にやってきた議員にとっては裏切り行為に遭ったという感じです

では早速、パーティー券のノルマや二階派の内情について、詳しく聞いていく。

参加した政治資金パーティーの様子

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以前、宮崎さんが参加した政治資金パーティーの写真を提供していただいた。 おいしそうな揚げものが並んでいる。宮崎さんもお食事をしながら歓談したのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
乾杯があってすぐに、食事のところには長蛇の列ができますので、そこに私が並ぶのも気がひけてしまうので、遠慮しているうちに、全てなくなってしまいました。このパーティーは(食事の量が)少し大目だったんですが、それでも最後の方になってくると、やっぱりなくなってしまいました。

このパーティーの内容は、首相や派閥会長などのあいさつがあった後に歓談。参加者は企業や団体、地元支援者などで、目的は政治資金を集めるためだ。 1枚2万円というパーティー券のノルマがあると言われている。ノルマは当選回数で違うそうで、1期目は20~30枚で2期目からは100枚に及ぶ例もあるということだ。

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
期数を重ねていくにつれて、いろんな仕事をして関係者も増えていくということで、そういった関係者の方々に売りなさいよということだと思います。一昔前は大臣経験者になると1,000枚さばかなきゃならなかったという話を聞いたことがあります。

パーティー券販売のノルマについて…宮崎さんの体験

宮崎さんはノルマの達成はできたのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
私はだいたい3、4回ぐらいやりましたけれども、2勝2敗という感じです。2回はギリギリ達成できて、2回はなかなかちょっと難しかったという。例えば世襲の議員さんとかで、親御さんの地盤を引き継いだとかならやりやすいかもしれませんけど、ゼロスタートの私にとっては結構厳しかったなという印象です。達成できない場合は、自分で自腹を切ると言うか、身銭を切って、補填をするということをしていました。

妻の金子恵美さんも同じ二階派に所属されていて、ノルマについて、苦しいとか、悩みを共有されたことはあったのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
それはありましたね。なかなかどうやって販売していいんだろうかと。やっぱり当選したばかりの頃というのは、地元の支援者に対して票のお願いをするのに、お金のお願いもするってなかなか難しいんです。東京の企業といっても、なかなかつながりがないので、困ったな、どうしたもんかなと、それぞれが企業の紹介をし合ったりとかはやってましたね。

京都府知事を4期16年間にわたって務めた山田啓二さんは、4年に一度、選挙の前のタイミングでパーティを行い、選挙資金に充てていたということだが、元衆議院議員だった宮崎さんは何度もやらないといけないという状況だったそうだ。

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
私たちの場合は大きく3つありました。1つは派閥のパーティー、2つ目は自民党京都府連、いわゆる県連のパーティー、3つ目が個人のパーティーと3つあり、1年で3回やらないといけないという状況でした。個人のパーティーの場合は、もちろん自分たちのための資金を得るためにやっているんですけど、自民党のためにやったり、派閥のためにやったりっていうのはなかなかハードではありました。

宮崎さんが所属していた二階派でも、派閥の政治資金パーティーのノルマをめぐる裏金疑惑が浮上している。

収支報告書の不記載を主導できるのは「ほんの一握り」

二階派は、政治資金規正法の違反の疑いがある。二階派の所属議員が売り上げたパーティー券のノルマ超過分を収支報告書に記載していなかったということだ。ただ、議員にキックバックした際には「支出」として収支報告書に記載し、議員も収入として記載している。この不記載分は、5年で1億円を超えるとみられている。

一方、安倍派はノルマ超過分について、派閥の支出、議員の収入など、すべて不記載だった。 二階派がノルマ超過分を記載しなかった理由は何だと思うのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
私もこの話を受けて、秘書さんへも聞いたんですけど、みんな一様に首をかしげています。そもそも記載しなかった支出も記載しないで隠すということなら、まだ分かるんだけれども、支出を書いてるというのはちょっとアンバランスだし、意図がまったく読めてこない。幹部の方の秘書さんからも話を聞きましたけど、議員さえも、ちょっとよくわからないと言っているレベルだそうです。

もし、このような経緯で裏金を作っていたとしたら、この裏金は、何に使われていたと思うのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
これは記載をすればいいだけの話だったので、記載をして政治資金として運用すれば良いものなんです。だけど記載しなかったということは、例えば私的、自主的なものに使うか、またはなかなか表に載せにくいお金の使い方ということなんでしょうね。

表に載せにくいというのは具体的には何だろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
さー?選挙資金だって言われたんですけれども…それも載せればいいと思うんですよ、私は。裏で渡すとかじゃなくて、表で堂々と寄付行為で処理できたりするので、選挙と言わずに、日々の政治活動としてやる方法はいくらでもありますので。

この不記載は、主導する人がいるとすれば誰が主導していたと考えるのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
できるのはほんの一握りです。会長レベルが関わっている場合もありますが、事務総長いわゆる金庫番の人が、色々動かしたりするんですけど、事務方の局長という議員じゃない人がいたりするので、ほぼその数人で全てを回しているという感覚なので、その辺りの人たちがいろんな意図で回してるんです。

二階元幹事長はこのことを把握していた?

この問題について、派閥の長である二階元幹事長は、「事実関係をよく調査して、適切に対応する」とコメントした。このコメントを聞いて、どう思ったのか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
もう二階先生ぐらいになってくると、細かい数字というか金庫番の1個1個のやり方も含めて、あまり口出しをしていなかったんじゃないかなって個人的には思います。その代わり『こうこういうところにこんなことをするぞ』みたいな方向性だけをばんっと出されて、その帳尻を合わせるのは、もうちょっと下の人たちがやっていたので、そういう構造なのかなとも思ったりします。
当時は幹事長とかもやられていたので、幹事長になったときに一派閥の会計の細かい、5年で1億なので年間2,000万円分ぐらいの金額のところまで見ていたのかなというのは、なんとも言えないところがあります。

安倍派では、二階派よりも不記載の箇所が多いということだが、取材を通して、関西テレビ・加藤さゆりデスクはこの問題をどのように感じたのか?

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:
今回の件で、ある国会議員の秘書に取材をしたところ、「領収書なしでキックバックを求めるなら発言力がないとできない。若手ではできない。事務職が目をつぶってやらされている可能性はある」という発言がありました。
裏金をどうしたのかという可能性について、私は2つあると思っています。まず1つは選挙の資金に使われている可能性。その場合は有権者の買収なんかに使われると、これは公職選挙法違反になります。もう1つは個人の収入にしてしまう可能性。それは所得税を隠すことになるので、脱税行為になる。どちらにしても、これは悪質な行為になるということが考えられます。

特捜部は本気!自民党がひっくり返る可能性も

今後、この「裏金」疑惑の捜査はどうなるのだろうか。専門家に話を聞いた。

元大阪地検検事・亀井弁護士によると、「証拠隠滅の恐れがあるので年内の関係先への捜索もあり得る。政治資金規正法違反で、派閥の会計責任者や幹部の逮捕もあり得るのではないか。特捜部は本気だ!」ということだ。 派閥の長や幹部にまで捜査の手が及ぶとなると、派閥が崩れるということにもつながるのではないだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
これは派閥が崩れるどころか、政権ましては自民党も大きくひっくり返ることになりますので、永田町が相当ピリピリした空気でしたね。

いま、もうそういう空気感が漂っているのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
漂いまくってますね。

何度もこのような問題が起きるのはなぜだと思うのか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
追求が甘いのと罰則がゆるいことだと思います。額が非常に大きい場合なんかは、特捜部が動いて、公民権停止になりましたけれども、数十万円だったら、すみませんミスでしたで、ちょこちょこっと直すだけで終わりになってしまうじゃないですか。一般企業だと、それなりに罰則はあるので、そのあたりが政界にはゆるいような気はします。

パーティー券なくすことは可能だが…

ノルマ未達成の場合は”ペナルティ”はあるのだろうか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
ペナルティというか、自分でかぶらなければならないと言うことが前提なので、なるべく自腹を切りたくないので協力をお願いすると。私の場合は結構頑張ったので、10万円とかは自分でかぶったような感じでした。あとは、発言が結構なくなってくるというかたちです。派閥幹部から「まあ、あいつあんまり売れないやつだしな」と思われてしまいます。

パーティー券という制度をなくすことはできないのか?

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
国会議員がなくそうと思ったら、もちろんなくすことができると思います。今その制度があるので、制度に則ってパーティーを運用してるところです。国民の皆さんからパーティー全部やめろと言う声が高まってくると、もちろんその方向性はあると思います。一方で、実際に真面目に政治活動している人たちからすると、例えば秘書の人数が少ないとか、日頃の自分たちの成果を国民のみなさんに知ってもらうためにチラシを配るとか、いろんなコストがかかってくるわけですけど、それも全部公費負担にするということができれば、パーティー券がなくなっていくという議論になっていくと思います。

公費負担が増えると、それは税金が投入される可能性も考えられるのでこの辺りも含めた問題になる。

「ご恩と奉公」のような関係

なぜ、同じ政党に派閥が生まれるのだろうか。

元衆議院議員 宮崎謙介さん:
もともとは自民党総裁が総理になるという流れから、誰を推すのかという所から始まったように聞いていますが、一方で、部署というか、学生でいうと部活とかサークルなどにちょっと近い部分があるのかなと思っています。自分のことを最初に目を付けて国会議員に引き上げてくださった先輩がいらっしゃる。そうするとそのグループに入って、新人議員が永田町でどう振る舞っていくのかということを一から教わっていく、研修の機会の場になります。
派閥に所属してない人もいますが、そういう方々は最初の立ち上がりが難しかったりするし、政策的なことで困ったときに、相談する先輩がいないということで、永田町で孤立するなんていうのもあります。派閥があるとそういうふうに守ってもらえる。パーティー券を販売しないといけないという、ご恩と奉公のような関係にもなります。

政治不信が高まる中で、またも明るみになった政治とカネの問題。 不透明なお金を生まないためにも、徹底した捜査と対策が望まれるのではないだろうか。

(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月5日放送)

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