後を絶たないニセ電話詐欺。実在する会社の担当者をかたる男と男性の5分にわたるやりとりの音声を入手した。詐欺グループの巧妙な手口に迫る。

「あの対応ならほとんどの人が気づかない」

「NTTファイナンスより重要なお知らせです。現在ご利用中の電話回線にて未納料金が発生しているため法的処置へ移行いたします。オペレーターへおつなぎする場合は1を押してください」

スマートフォンから流れてきたNTTファイナンスをかたる自動音声。「未納料金がある」と錯覚してしまいそうになるが、これはニセ電話詐欺の入り口だ。

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警察などによると、実際に「1」を押してオペレーターにつなぐと、電話口の人物から支払いを要求されるという。

ニセ電話を受けた飯岡直樹さん:
一般的にコールセンターに電話した時の対応にほど近く、あの対応ならほとんどの方が気づかないと思う

埼玉県に住む飯岡直樹さんは2023年11月6日、NTTファイナンスをかたる電話がかかってきた。飯岡さんは実際に1を押して、そのやりとりを約5分間に渡って録音した。

「1」を押したあとの実際のやりとり

「お待たせしました。NTTファイナンス総合料金センター、イケダがおうかがいします」

電話口に出たのは「総合料金センター」のイケダと名乗る男。口調がそれほど滑らかでないのが特徴的だ。

飯岡さん「いま、何か携帯にかかってきたんで、オペレーターにつないでもらったが」
イケダを名乗る男「はい!」
飯岡さん「何の分の支払いの未納でしょうか?」

イケダを名乗る男「かしこまりました。はい、え~、いまから私の方でお調べいたしますが、本日は音声ガイダンスに1番のご案内でお間違いないでしょうか」
飯岡さん「はい」

イケダを名乗る男は台本でも見ながら話しているのか、言葉に詰まることはない。そして男は飯岡さんの個人情報を尋ねてきた。

イケダを名乗る男「それでは内容照会をいたしますので、恐れ入りますが、お客様のお名前と生年月日をですね、まずはお名前から教えていただけますでしょうか?」
飯岡さん「はい、飯岡直樹です」

イケダを名乗る男「はい、イイオカナオキ様でお間違いないでしょうか?」
飯岡さん「はい」
イケダを名乗る男「はい、続きまして生年月日をお願いします」

電話口の向こうからは時折、別の人物の声も聞こえてきた。

「月額料金が長期未納になっている」

イケダを名乗る男「現在、ご利用の携帯電話、こちらはご本人様のご名義でお間違いないでしょうか?」
飯岡さん「はい」

イケダを名乗る男「はい、かしこまりました。それでは内容照会をいたしますので、恐れ入りますがこのままにてお待ちいただけますでしょうか」
飯岡さん「はい」

電話口から離れるイケダと名乗る男。そして約30秒後―。

イケダを名乗る男「イイオカ様、お待たせしました」
飯岡さん「は~い」

イケダを名乗る男「はい、こちらでイイオカナオキ様の登録情報の確認がとれまして」
飯岡さん「はい」

イケダを名乗る男「今回、弊社より自動音声による通知が届かれた内容についてですが、昨年の10月15日にイイオカ様がご利用の携帯電話より総合情報サービス『スマート』のご登録をいただいておりまして」
飯岡さん「はい」

イケダを名乗る男「こちらの月額料金が1年間の長期未納ということで、本日最終での通知というのが届いた状態になっています」

イケダを名乗る男は飯岡さんに対して、総合情報サービス「スマート」が1年の間、料金未納になっていると伝えてきた。

後ろから指示送る声も

飯岡さん「えっと、10月15日の何というサービスですか?」
イケダを名乗る男「はい、総合情報サービス『スマート』という、こちらのインターネットのWEBサイトの話でございます」

何やら電話口の後ろから声が聞こえた。

飯岡さん「スマート???」
イケダを名乗る男「はい」

イケダを名乗る男に対して不信感を募らせていく飯岡さんは、イケダとの会話の途中で、パソコンのメール履歴に総合情報サービス「スマート」という文字がないか検索した。すると、やはりそのサービス名は見つからなかった。

飯岡さん「インターネット上のサービスってことであれば―」
イケダを名乗る男「はい」

飯岡さん「メールの履歴があると思うんですけど」
イケダを名乗る男「メールの履歴ですか?」

台本にないのか、イケダを名乗る男が電話の向こうで焦っている様子がわかった。

イケダを名乗る男「そういう…」
飯岡さん「何か、登録の際にされるセキュリティの一種なんでしょうか、認証コードや」

背後から微(かす)かに「分からなければ、私どもも繰り返してしまう恐れがある」という言葉が聞こえてきた。

番号は「+1」から始まる国際電話

飯岡さん「大体、NTTはネットで申し込んだものはメールが届くんですけど、そういう履歴が見つからない」
イケダを名乗る男「こちらもメールで何かを認証しているわけではございませんが」

飯岡さん「じゃ、どうやって申し込むんですか?最近ですね、いろいろ疑っているわけではないですけど、最近、いろいろ、そういった類の…」
イケダを名乗る男「はい」

飯岡さん「何か、そういう電話がかかってくる。ほとんどが詐欺的なものだったりするので、ちょっと確認させていただいている」
イケダを名乗る男「はい」
飯岡さん「で、えっとそちらに関して何か督促状の郵便物とかじゃ…」

飯岡さんの言葉が終わらないうちに、イケダを名乗る男は一方的に、そして唐突に電話を切った。飯岡さんのもとにかかってきた番号を見ると「+1」から始まる番号。北米からの国際電話だった。

警察によると、こうした国際電話番号からのニセ電話詐欺が福岡県内でも、ここ最近急増していて、2023年は9月末までで258件の被害相談が寄せられている。

そのほとんどが北米からの「+1」とイギリスからの「+44」だという。

アプリ悪用し国際電話の番号使用か

なぜ、ここまで国際電話を使った詐欺が急増しているのか。その背景にあるのが「スマホアプリの悪用」だ。国際電話の番号に変えられるスマホのアプリがあり、これを使って日本国内などから詐欺電話をかけているとみられる。

また、こうしたアプリを利用するときには、本人に確認がほとんどないうえに、同じ端末からかけても毎回番号を変えることもできるということで、犯人として特定されにくく足がつきにくい。

ニセ電話を受けた飯岡直樹さん:
お金を得るには一生懸命働いて、お客さんを喜ばせて、その対価としてお金をもらう。相手の知らないことにつけ込むのは「人間としてどうかな」と思う。相手から奪うことで生き延びようとしている方が増えていると思う

手をかえ品をかえ、忍び寄るニセ電話詐欺。福岡県内では2023年9月末までで、前年を2億5,000万円ほど上回る8億7,000万円の被害が発生していて、警察が警戒を呼びかけている。

(テレビ西日本)

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