鹿児島県本土の西、東シナ海に浮かぶ島「獅子島」。この島では、1億年以上前の生物の化石がたびたび発掘されている。なぜこの島で化石が発掘されるのか。太古のロマン眠る島にはどんな秘密があるのだろうか。

化石ハンターも高く評価する獅子島

鹿児島市から車で約2時間。鹿児島県長島町の北東にある諸浦港では、船に乗る前に“あるもの”が貸し出されている。それは化石を発掘するためのハンマーだ。

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ここからフェリーで20分、見えてきたのは獅子島だ。人口約630人、化石の島と呼ばれている。

人間が生まれるよりはるか昔、約1億年以上前を生きた太古の生物たちの化石。国内では、フクイサウルスやフクイラプトルといった恐竜の化石が見つかった福井県が発掘場所としては有名だが、鹿児島でも2008年、獅子島同様、東シナ海に浮かぶ薩摩川内市・甑島(こしきしま)で初めて恐竜の化石が発見された。

甑島や獅子島は、約1億年以上前の恐竜がいた時代、中国側の大陸と陸続きだった。その後、島となり、当時の白亜紀をメインとした地層があちこちで露出しているため、化石が見つかるのだ。
獅子島に到着しフェリーを降りると、巨大なブロンズ像が出迎えてくれた。2004年にこの島で化石が発見された、サツマウツノミヤリュウだ。
見つけたのは大阪の会社員・宇都宮聡さん。サツマウツノミヤリュウのウツノミヤは、宇都宮さんの名前。仕事の傍ら化石の発掘、研究を行う化石ハンターだ。

今回改めて宇都宮さんに当時の状況を聞いてみた。「最初はアンモナイトの化石を掘りに獅子島に行った。そこで首長竜の化石が埋まっているという大発見をした」と振り返った宇都宮さん。獅子島のポテンシャルを高く評価している。

化石ハンター・宇都宮聡さん:
獅子島自体は中生代、白亜紀の堆積物で海と陸で堆積した場所なのでその当時の生き物の化石が残っている。日本でもまれな場所。その辺に化石が転がっていると思いますね(笑)

“発掘体験”で見つけた化石は…

どれほどの化石が見つかるのか? 鹿児島テレビの記者が化石の発掘に挑戦した。
島の東部にある「獅子島化石パーク」では、無料で化石の発掘体験ができる。出航前に港で借りたハンマーで石を割り発掘を進めた。

石割りに苦戦しつつ、作業をすすめること約20分。

鹿児島テレビ・郡嶌漱介記者:
お、これとかは? 柄があります

さらに、貝殻のような模様がびっしりついた岩など、化石らしきものが次々に見つかった。

ここでは通常、自分で発掘した石を1つだけ持ち帰ることができるが、今回は特別に許可を得て2つの石を持ち帰り、化石ハンター・宇都宮さんにリモートで分析してもらった。

まずは白い模様の入った石だ。

化石ハンター・宇都宮聡さん:
非常に面白い化石。気になるのはその白い管みたいなもの、チューブみたいな。おそらくゴカイの化石かな?と。巣穴がまるまる化石になっている

宇都宮さんは、「1億年ほど前のゴカイと二枚貝の化石とみられる」と分析した。

もうひとつの石を見てもらうと…。

化石ハンター・宇都宮聡さん:
葉っぱの化石、植物。しかも、おそらく葉の種類までわかりそうなくらい保存状態がよい。これはいいものですね! おそらく海の中に落ちた葉っぱが堆積し、うまい具合に残ったという(ことではないか)

残念ながら恐竜ではなかったが、化石を発掘することができた。獅子島ではこの場所以外にも、海沿いや山など至る所で化石のようなものが見られる。

「宝探し」のような化石発掘の魅力

島民に聞いても「貝の化石とか『あら出てきた』と言う感じ」「最初は珍しかったが、毎日見ているとなかなか…」と、化石がごく普通に身近に存在していることを感じさせた。

化石ハンター・宇都宮さんは、化石を発掘する魅力を「楽しいというか、わくわくするというか、一回味わうと次もまた見つけたいなと思う『宝探し』ですね」と語った。

その宇都宮さん、2023年9月にも獅子島で「ボーンベッド」と呼ばれる骨の化石の密集層を発見した。何の生物の骨かは今も分析が続いているが、何とも気になる情報を教えてくれた。

化石ハンター・宇都宮聡さん:
恐竜と思われる骨片が出ている。恐竜かもしれないという歯の化石も出ていて、今はシークレットですが、なかなかすごいものが出ているということだけは、鹿児島の皆さんにお伝えしたいですね!

今は存在しない生物の手がかりを示す化石。太古のロマンが眠る獅子島から、新たな「宝物」発見の情報が発信される日も近いかもしれない。

(鹿児島テレビ)

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