10月20日~22日に行われた全日本ノービス選手権(東京・ダイドードリンコアイスアリーナ)。

ノービスA男子は岡崎隼士が、女子は金沢純禾が優勝した。

今後の日本フィギュアスケート界を担う若き新星が出場する今大会。

去年優勝した2人も今、大活躍している。

去年のノービスAで優勝した上薗恋奈はジュニア1年目の今季、初めて派遣された国際大会JGPグダニスク大会で初優勝を飾った。

高橋星名は、トリプルアクセルを引っ提げて主戦場のジュニアへ。その大技を武器に9月の近畿選手権では堂々の3位入賞を果たした。

先輩スケーターに続けと、今大会のノービスAの男子、女子、アイスダンスの結果を振り返る。

【男子】唯一100点超で岡崎隼士が優勝

ノービスA男子は、上位3人が11月17日からの全日本ジュニア選手権に推薦出場が決定した。

優勝したのは、今大会で唯一100点超えを果たした岡崎隼士(中四国九州ブロック)。

ノービスB時代にも優勝経験を持つ岡崎は力強い表現力、荒ぶる気迫、そして目力を持つ。

その自信に満ち溢れる滑りで、観客を魅了するスケーターだ。

ノービスAで優勝した岡崎隼士
ノービスAで優勝した岡崎隼士
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「全部いい演技ができれば100点超えはいける」と岡崎は自信をみせていた。

10月頭の中四国九州選手権で出した自己ベスト97.27点を大きく更新し、全日本ノービス歴代2番目の106.73点を叩き出した。

自己ベストが出てガッツポーズする岡崎隼士
自己ベストが出てガッツポーズする岡崎隼士

ブロック大会でも大きなガッツポーズをしていたが、今大会でも演技後のキスクラでもガッツポーズが飛び出した。

試合後には「ジャンプの回転やステップの正確さをもっと伸ばしたい」と全日本ジュニア選手権をにらむ。

岡崎は岡山を拠点にしているため、今回は人生2回目の東京だったという。優勝したご褒美で焼肉を食べに向かったそうだ。

今季ノービスAにあがり2位表彰台の吉野咲太朗
今季ノービスAにあがり2位表彰台の吉野咲太朗

2位は、このリンクをホームリンクとしている吉野咲太朗(東京ブロック)。

昨季、全日本ノービスBで優勝している吉野は、今季からノービスAにあがった。

「上手な選手がたくさんいる。もっと練習しないといけない」と、レベルの高さを痛感したというブロック大会から“ノーミス”を目標に練習に励んだ。

その言葉通り、全てのエレメンツで出来栄え点(GOE)+を獲得し、ノービスA1年目で表彰台に輝いた。

全日本ジュニアでは「たくさんの刺激と経験をしたい」と前を向いた。

自己ベストを更新した3位の松本悠輝
自己ベストを更新した3位の松本悠輝

3位の松本悠輝(はるき・中部ブロック)は自己ベスト更新した。

北海道出身の松本は去年、スケートの強豪が揃う中部地区に拠点を移した。

その松本は、ブロック大会からジャンプの確率をあげる練習をしていただけに、冒頭のルッツとアクセルにミスが出てしまった。

自己ベストや表彰台の喜びよりも悔しさが勝ったようだ。

この悔しさをバネに、さらに「新しいジャンプや確率を上げていく」と松本は前を向く。

去年27位から4位と順位を上げた大林理人
去年27位から4位と順位を上げた大林理人

4位は大林理人(関東ブロック)。

冒頭のダブルアクセルからのコンビネーションに手ごたえを見せるも、練習でうまくいっていたセカンドの3回転フリップにミスが出てしまい悔しさをにじませた。

それでも自己ベストを更新し、順位も去年の27位から大幅に向上した。

今後に向けて、「3回転ジャンプをさらに増やしたい」と話した。

ノービスA男子表彰台(全日本ノービス選手権)
ノービスA男子表彰台(全日本ノービス選手権)

1位 岡崎 隼士(蒼明学院中等部)106.73点
2位 吉野 咲太朗(西武東伏見FSC)95.33点
3位 松本 悠輝(LYS)90.11点
4位 大林 理人(KOSE新横浜プリンスFSC)83.04点
5位 山本 航成(西武東伏見FSC)80.49点
6位 佐野 海音(滋賀ドリームFSC)80.18点

【女子】100点超の金沢純禾が優勝

ノービスA女子は、上位4名が全日本ジュニアに推薦出場が決定した。

優勝は金沢純禾(近畿ブロック)が、唯一の100点超をマークした。

ノービスA1年目の金沢は「優勝できてうれしい」と笑顔で噛みしめた。

夢を現実にした金沢純禾がノービスAで優勝
夢を現実にした金沢純禾がノービスAで優勝

冒頭の3回転ルッツ―3回転トゥループのコンビネーションを決めると、5種類の3回転ジャンプを成功させ、ガッツポーズが飛び出した。

試合前日の夜、100点を超える夢を見たという金沢。

「これいけるんじゃないかな!」と100点超が“正夢”になったと振り返った。

次戦の全日本ジュニアに向けては、更なる加点が付くジャンプを練習するという。

試合翌日には家族とサンリオピューロランドへ遊びに行く予定があったようで「ご褒美になってよかった」と笑った。

2位の河野莉々愛は全日本ジュニアで去年よりも上を目指す
2位の河野莉々愛は全日本ジュニアで去年よりも上を目指す

2位は、ノービス2年目の河野莉々愛(近畿ブロック)。

演技の中で普段失敗が少ないところでミスがあったが、「表彰台にのぼれてよかった」と振り返った。

10月頭の近畿選手権から、ステップの体の動かし方やスピンを重点的に練習してきたという。

次戦の全日本ジュニアに向けては、納得のいく演技をして12位に終わった昨季よりも上の順位を目指す。

3位は大竹沙歩
3位は大竹沙歩

3位に大竹沙歩(東京ブロック)。

9月下旬の東京選手権からジャンプの確率をあげてきたという大竹。

後半にミスが出てしまったが、「最後まで楽しく滑れた」と笑顔で語った。

大竹は選手宣誓という大役を務めた
大竹は選手宣誓という大役を務めた

この大会の選手宣誓の大役を務めあげた大竹は、「緊張しました」と語った。

全日本ジュニアに向けては3回転のコンビネーションジャンプの成功を掲げる。

4位は松浪ひかり
4位は松浪ひかり

4位はスピード感があり、伸びのスケーティングスキルを持つ松浪ひかり。

演技後半に3連続ジャンプを組み込み、ノーミスで演じきった。

今大会の91.85点は、近畿選手権の72.89点から点数が大幅にアップした。

ノービスA女子表彰台(全日本ノービス選手権)
ノービスA女子表彰台(全日本ノービス選手権)

1位 金沢 純禾(木下アカデミー)100.45点
2位 河野 莉々愛(木下アカデミー)96.74点
3位 大竹 沙歩(MFアカデミー)91.94点
4位 松浪 ひかり(関空スケート)91.85点
5位 川勝 玲奈(木下アカデミー)91.37点
6位 吉田 菫(蒼明学院中等部)88.22点

超過密スケジュールをこなした二刀流

中四国九州選手権を1位で勝ち抜いた吉田菫は、この大会を女子シングルとアイスダンスの“二刀流”で挑んだ。

吉田は、試合前日の開会式で祈るように抽選を待っていた。

その理由は2つの競技に出場する吉田にとって「滑走順」が重要になるからだ。

吉田が出場するこの2競技は大会1日目の16時10分からアイスダンス、16時45分から女子シングルノービスAが行われるスケジュールだった。

アイスダンスは3組が出場している。その中で吉田は最終滑走で滑り、そのままシングルに流れ込むため、体力的なことを考えても後半が望ましかった。

滑走順抽選後、落ち込む吉田菫
滑走順抽選後、落ち込む吉田菫

しかし、吉田がひいた順番はまさかの第1グループの7番滑走。

吉田も思わず「終わった…」とこぼし、がく然としていた。

吉田菫・小河原泉颯組は3連覇を果たす
吉田菫・小河原泉颯組は3連覇を果たす

そんな中で迎えた試合当日。小河原泉颯とのアイスダンスで2位に10点以上の差をつけてトップとなり、目標としていた50点も超え、3連覇を達成した。

しかし、このときキスクラに吉田の姿はなかった。

キスクラで優勝を喜ぶ小河原
キスクラで優勝を喜ぶ小河原

シングル競技の滑走のため、急いで着替えをして靴を履き替えていた。

アイスダンスで優勝を手にしてから約50分後には、シングルスケーターの吉田菫としてリンクに立っていた。

シングルでは6位入賞の吉田
シングルでは6位入賞の吉田

体力的にも厳しいシングルでも、目標の80点を大幅に超え、堂々の6位入賞を果たす。

さらに吉田の戦いは続き、アイスダンスの表彰式が女子シングルの第2グループ終わりで行われたこともあり、表彰式のためにシングルからアイスダンスへの衣装へ。

そしてまたシングルの衣装へと戻ったため、この日の吉田は4回も衣装チェンジをした。

そんな慌ただしい1日を過ごした吉田は「足はヨレヨレだった。それでもジャンプは跳べたので良かった」と振り返った。

2競技で自己ベストを叩き出した今大会の収穫は大きい。来年からジュニアへ行く吉田の成長が楽しみだ。

【アイスダンス】“すみいぶ”が3連覇

ノービスアイスダンスは、結成6シーズン目の“すみいぶ”こと、吉田菫・小河原泉颯組が優勝し3連覇を果たした。

ノービスアイスダンス表彰台(全日本ノービス選手権)
ノービスアイスダンス表彰台(全日本ノービス選手権)

1位 吉田 菫・小河原 泉颯(蒼明学院中等部/倉敷FSC)54.10点
2位 八幡 奈乃花・武正 侑駕(明治神宮外苑FSC)43.89点
3位 竹内 心優・土屋 悠希(明治神宮外苑FSC)42.60点

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
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フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班