10月20日~22日にフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第1戦、スケートアメリカが行われ、日本男子では佐藤駿は3位、吉岡希6位、壷井達也8位となった。

女子は吉田陽菜が4位、千葉百音6位、河辺愛菜8位で終えた。

3位表彰台の佐藤は、今大会SP自己ベストを叩き出す。

そのSPでは4回転フリップで着氷が乱れるも、スピンとステップでレベル4を獲得。初の90点台をマークし、SP3位でスタートした。

FSでは冒頭の4回転ルッツで両手がついてしまった。その後、普段失敗が少ないジャンプでミスをしてしまい、動揺もあったのかうまくリカバリーできなかった。

その原因として、FSに向けての調整がうまくいかず、万全な状態で臨めない部分があったという。

優勝したイリア・マリニン(アメリカ)や2位のケビン・エイモズ(フランス)との得点差はフリーでさらに広がり、3位でも悔しさが残った大会となった。

そんな佐藤は今シーズン、さらなる進化をするために、初めての海外振付に挑んだ。

初めての海外振付で起きた変化

佐藤は練習で5種類の4回転を成功させたことのあり、“ジャンプの天才”と呼ばれている。

史上4人目となるノービス4連覇を果たし、ジュニア時代にもジュニアGPファイナル優勝など、華々しいスケート人生を送ってきた。

しかし2020年のシニアデビュー以降、ケガとの戦いが続く。

2022年の全日本選手権は総合4位で終えた佐藤駿
2022年の全日本選手権は総合4位で終えた佐藤駿
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2022年2月に左肩の手術を終え、復帰明けとなった昨シーズン、万全なコンディションではない中、全日本選手権SP5位からFS3位で追い上げ、総合4位で終えた。

その後、派遣された四大陸選手権3位という結果を残している。

そして今季、佐藤は更なる進化を遂げようとしていた。

その進化の一つが初めての海外での振付だ。

今年5月にカナダ・モントリオールへ渡った佐藤。

2022年の世界選手権で金メダルを獲得したアイスダンスのギヨーム・シゼロン
2022年の世界選手権で金メダルを獲得したアイスダンスのギヨーム・シゼロン

FSの振付を北京五輪アイスダンス金メダリストのギヨーム・シゼロンに師事。

多彩なバリエーションを持ち、情感たっぷりのスケーティングに定評があるシゼロンから表現力を学び、磨いたという。

海外で振付をしてもらった経緯について「今までの自分のイメージを変えたいというのは一つありますし、海外に1人で行ったりするのも、それもとても良い経験になるのかなと。成長する部分になると思った」と語る。

練習に励む佐藤
練習に励む佐藤

その経験を経て変わったことは2つあるという。

「まず、気持ちの面が変わったと思っていて。スケートとの向き合い方とか、そういった部分が大きく変わった。今まではずっとジャンプ一筋でジャンプばっかりという感じだったんですけど、カナダでアイスダンスの選手しかいなくて、ずっとスケーティングの練習をしていた。

そこでスケーティングの楽しさや良さに改めて気づいて、“もっと頑張らないといけない”と思って。そこからスケーティングやスピンをすごく練習に入れるようになりました」

「昔からジャンプが好きで、スケーティングやスピンはやらなかった」と話す佐藤に訪れた変化。

周囲の人からの反響もあったようで「『去年よりもスケーティングが良くなったね』とか『大きく滑るようになったね』と言われることが増えた印象なので、そこはすごくうれしい」と本人も変化を実感。

しかし「僕としてはまだまだ今回の東京ブロックもですけど、やりきれていない部分があったのかなと思っているので、そこをもっと伸ばしていければ、もっと点数が伸ばしていけるのではないかと思っている」と意気込んだ。

9月に出場した東京選手権は2位表彰台にのぼった
9月に出場した東京選手権は2位表彰台にのぼった

9月下旬に今季2戦目、全日本選手権へと繋がる東京選手権に出場した佐藤は、SPで4回転フリップを着氷させ、FSでも大技4回転ルッツを投入するなど、合計251.28点の2位で終え、幸先のいいスタートを切った。

4回転アクセルは「いつかトライ」

その東京選手権から2日後、拠点の埼玉アイスアリーナで朝8時から滑る佐藤の姿があった。

自転車で埼玉アイスアリーナへ向かう佐藤
自転車で埼玉アイスアリーナへ向かう佐藤

この日、試合でうまくいかなったというFSのステップ部分を何度も繰り返し曲をかけながら滑り、その後はジャンプの練習へ。

軽いアップの後には4回転フリップ、さらには4回転ループまで軽々と着氷してみせた。

大会から2日後のジャンプ練習は4回転を軽々と着氷
大会から2日後のジャンプ練習は4回転を軽々と着氷

この日の練習後、佐藤にジャンプの調子や今後の展望について話を聞いた。

「日によって調子とかもあるので、やらないときもある」としつつ、5種類の4回転ジャンプの練習に取り組んでいるという佐藤。

アクセル以外のジャンプを跳べる佐藤に、4回転アクセルへの挑戦について聞くと「いあ、そうですね。今のところはまだ考えていないんですけど、いつかはやります。まだそのときではないと思っている」といつかトライする日が来るかもしれないと話した。

その4回転アクセルは世界でアメリカのイリア・マリニンのみが成功させている大技だ。

佐藤が歴史を作るのは、時間の問題なのかもしれない。

埼玉アイスアリーナで練習に励む佐藤
埼玉アイスアリーナで練習に励む佐藤

さらに9月からフードサービスを展開する「エームサービス」が、佐藤を全面サポートすることになった。

「一番変わったところは、自分がこれが足りていないからってサラダや野菜、牛乳をとるようになったことがすごく変わったこと。

バイキングに行ったら全部茶色みたいな。茶色いものしか食べていない感じだったので。本当にバランス良く食べるようになりました」

全日本で表彰台にのぼる

さまざまな変化に対応し、進化を続ける佐藤。

そんな佐藤には、鍵山優真と三浦佳生の存在が欠かせない。

幼少期から大の仲良しでライバルでもあり、“関東卍(まんじ)ボーイズ”とも呼ばれた3人の関係性や2人の活躍について聞くと、佐藤はこう話した。

仲良しでライバルの2人について語る佐藤
仲良しでライバルの2人について語る佐藤

「(三浦)佳生と(鍵山)優真に限らずではあるんですけど、本当にみんな活躍していて、みんなのおかげでここまで来られていると思っています。

日本の男子はすごく強くて、全日本もすごく熾烈な争いになると思っているんですけど、それでもみんなで頑張って世界で戦っていければ」

佐藤の夢は「オリンピックで優勝」することだ
佐藤の夢は「オリンピックで優勝」することだ

「自分の好きなスケートをやっていって、目先の試合を全力で気持ちを込めて滑るだけ」と大きなタイトルをつかむことへ焦りや悔しさは「あまり考えていない」と話す佐藤だが、そんな彼の夢は「オリンピックに出場して優勝すること」だ。

鍵山や三浦とはそういった話をすることはあまりないようだが、佐藤は「3人で行けたら良いなと思います」と語る。

今シーズンの目標は一言で「大きく!!」
今シーズンの目標は一言で「大きく!!」

現在19歳の佐藤は、来年2月に20歳を迎える。

20歳に向けては「あまり考えていないんですけど、できる限りなんでも1人でできるようにならないといけないと思うので、まず20歳になったら車の免許を取りたい」と話した。

最後に、今シーズンの目標を「全日本選手権で表彰台にのぼること、4回転の種類を増やしていければ。あとは去年よりもファイブコンポーネンツの部分を伸ばしていけるように、スケーティングを今まで以上に伸ばしていきたい」と意気込んだ。

初めて海外での振付、“シゼロン効果”で色っぽく、バリエーションが増える“ジャンプの天才“佐藤駿の今後の仕上がりに注目したい。

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
FODで全選手・全演技LIVE配信

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班