10月18日から北京で2日間にわたって開かれた、中国主導の経済圏構想「一帯一路」の国際フォーラムで、習近平国家主席は「より多くの成果を得た」と強調し、実績をアピールした。

22日のフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)では、今回の国際フォーラムをテーマに議論。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は「一帯一路計画は基本的に失敗したというふうに見ていい」と断言した。

理由について、櫻井氏は、米国のエイドデータ研究所の調査を引用し、一帯一路の参加国のうち42カ国がGDPの10%以上の債務を抱えていわゆる「債務の罠」に陥っていることに言及。それらの国は債務を返せないため、それが中国に跳ね返ってくる、と指摘した。

習氏はフォーラムで「質の高い一帯一路を目指す」と強調し、そのために「8項目の行動」を明らかにした。番組では、この8項目に含まれた「カスピ海を横断する国際輸送路のインフラ建設への投資」に注目。この国際輸送路は、ロシアを通過しないことなどから欧州諸国からも注目されているという。ただ、元外交官で内閣官房参与の宮家邦彦氏は「これも量を増やしてるだけだ」との認識を示し、「こんな人のいないところにこれだけの投資をして果たしてペイするのか。実現可能性は高いとは思わない」と切り捨てた。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
米国のヒラリー・クリントン元国務長官は(番組単独インタビューの中で)「中国がロシアを従属国にしようとしている」と述べた。今回、習近平国家主席が提唱した「一帯一路」の国際フォーラムにロシアのプーチン大統領が参加した。プーチン氏がウクライナ侵攻後に国外に出るのは、旧ソ連構成国を除いては初めてということで注目された。実際は、一帯一路国際フォーラムに参加した各国首脳の人数は前回の37カ国から22カ国へと減少している。特にヨーロッパはハンガリーだけで、G7(主要7カ国)で唯一参加していたイタリアはすでに(構想からの)離脱を中国側に伝えたという報道がある。一帯一路はすでに行き詰まっているのか。どう見るべきか。

櫻井よしこ氏(ジャーナリスト・国家基本問題研究所理事長):
かなり行き詰まっていると思う。習近平氏が総書記になったのが2012年、翌年13年にこの一帯一路を提唱してちょうど10年になる。この10年間で彼らは(日本円で)だいたい36兆円分の投資をしていると聞いている。アジアインフラ投資銀行(AIID)などを通して6兆円とか、その他かなりの金を投資して中国のためのこの経済活動を世界中に広げようとしたわけだが、中国のための経済活動で、援助を受ける国のことは考えていない。そのため債務の罠のようなことが起きる。
米国のエイドデータ研究所によると、中国の一帯一路に参加した国々の中のだいたい42カ国が国民総生産(GDP)の10%以上の債務を抱えて、いわゆる「債務の罠」に陥っているという見通しというか、推測がある。債務の罠に陥った国は債務を返せないから、中国に跳ね返ってくる。この一帯一路計画は基本的に失敗したと見ていいと思う。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
習主席は一帯一路フォーラムで新たなルート、すなわちカスピ海を横断するルートに積極投資を行うと発表した。カザフスタンとアゼルバイジャンなどが欧州への輸出を念頭に開発を進めてきたルートだという。カザフスタンはユーラシア大陸でロシアに次ぐ天然ガスと石油の宝庫、アゼルバイジャンは輸出の9割を天然ガスと石油が占める資源大国だ。ロシアによるウクライナ侵攻後、こうしたロシアを回避する物流ルートに世界が注目をしているという。物流ルートには当然モノが集まり、人が集まり、金が集まってくる。ロシアを回避する形となるこのルートについて習氏は、プーチン氏がいる前で、一帯一路の今後の取り組みの第一項目にあげた。

松山キャスター:
習氏は一帯一路計画についてはこれから「量から質」に転換していくのだと、もっと質のいい投資を行っていくのだという考えも示した。今回新たなルートを発表した思惑について。

宮家邦彦氏(元外交官・内閣官房参与):
これも量を増やしてるだけだ。質が本当にいいのだったら、もうとっくに投資が行われ、動いているはず。こんな人のいないところにこれだけの投資をして果たしてペイするのか。何か一つ新しいものを打ち上げたいという気持ちはわかるが、実現可能性は高いとは思わない。

松山キャスター:
日本政府も中央アジア地域には非常に強い関心を持っている。中国による中央アジア地域への投資拡大は、日本にはどのような影響があるか。

櫻井氏:
日本政府は中央アジアをものすごく大事なところだと見ている。中央アジアは、ロシアからも中国からも取り合いの対象になっていて、どっちが影響力を強めるかということ。今回の中東情勢とイランのことにも結びついていく。ロシアと中国の間にあって、人口がかなりあって、資源がものすごくあって、地政学的にも大事なところということで、このユーラシア大陸を中国が自分のものとして支配することがないようにするためにも日本は中央アジアとの関係を積極的に作っていかなければいけない。日本政府はそのことをいいと思っていると思う。ただ、あまり進んでいないという印象はあるけれど。

日曜報道THE PRIME
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