俳優の吉永小百合さんが、映画館のない島、長崎・五島市で主演作品「こんにちは、母さん」の特別上映会に参加し、舞台挨拶に立った。吉永さんが語った五島、そして長崎に寄せる思いとは。
吉永さんの希望で上映会が実現
五島市は、長崎の西方100kmに浮かぶ美しい海と豊かな自然に恵まれた島だ。2023年9月17日、五島・福江文化会館には雨の中、長い行列ができた。
約20年前に、島唯一の映画館がなくなり、「島の人に作品を見てもらいたい」という吉永さんたっての願いから、2年連続で主演映画の上映会が実現した。今回は午前と午後の2回行われ、吉永さんの最新作「こんにちは、母さん」を見るために計約2,000人が来場した。
ーー何を楽しみに来た？
来場者：
吉永さんに会うため。好きだから
来場者：
やっぱり吉永小百合さん。きれいな方でうらやましい
席はほとんど埋まり、映画と舞台挨拶が始まる前の来場者の期待感と高まりを感じた。
来場者が映画とともに楽しみにしていたのは、吉永さんの舞台挨拶だ。
吉永小百合さん(78)：
五島のみなさんに映画を見てもらえるということは、大変私にとって幸せなこと。ゆっくりとご覧いただきたい
2011年に旅行で初めて訪れて以来、五島への訪問は8回目とのこと。吉永さんは、3年前の2022年から「五島の椿プロジェクト」のサポーターを務めている縁で、五島で上映会を開いている。
「五島の椿プロジェクト」は、五島列島に自生する椿を軸に産業と雇用を創出し、高齢化が進む島の持続的な発展を目的に2018年に設立された。吉永さんは「五島の椿」の魅力を伝えるプロモーション活動などを担うサポーターを務めている。
皿うどんにやみつき！「細麺が好き」
吉永さんへの単独インタビューで五島、長崎への思いを聞いた。
テレビ長崎・吉井誠アナウンサー：
久しぶりの五島の空気はどうですか？
吉永小百合さん：
ちょっときょうは空が湿っているが、でもやっぱりおいしい
映画「こんにちは、母さん」の舞台は、東京の下町だ。吉永さんが演じる一人でいきいき生活し、密かに恋心を抱く母親と、大泉洋さんが演じる大企業の人事部長で公私共に悩みがつきない息子。
山田洋次監督が吉永さんと組んだ「母3部作」の集大成となる作品で、令和の親子関係を描いている。
テレビ長崎・吉井誠アナウンサー：
吉永さん、今回の役名が（五島市がある「福江島」と同じ）「福江さん」なんですね
吉永小百合さん：
本当にうれしいことに。上映会でも「私の名は福江です」と言ったら、みなさんとても喜んでくれた
テレビ長崎・吉井誠アナウンサー：
長崎県にはどんな印象を持っていますか？
吉永小百合さん：
私が長崎に来たのは17歳になった時で、「若い人」という石原裕次郎さんと共演した映画だが、その時から「皿うどん」にやみつきになった。もう大好きで、東京にいるとなかなかおいしい皿うどんを食べられないけど、長崎に来たら必ずいただくことにしている
テレビ長崎・吉井誠アナウンサー：
ちなみに、パリパリの細麺とちゃんぽん麺の太麺はどちらがお好みですか？
吉永小百合さん：
細麺です！圧倒的に！五島うどんもそうだけど、麺は細いのが好き。酢をいっぱいかけていただく
映画では、吉永さん演じる「福江さん」の恋愛模様もストーリーの柱になっている。牧師役の寺尾聰さん(76)とのやりとりに吉永さんは「恋愛シーンは楽しかった。『連れて行って』というセリフを言うが、そのセリフは快感だった」と話す。
テレビ長崎・吉井誠アナウンサー：
ときめきましたか？
吉永小百合さん：
ときめいた。私の場合は連れ合いがいるので、（日頃）他の人にときめくことはないが、でもいろんないいものを見て、ときめく心というのはずっと大事にしないといけないことだと思う
テレビ長崎・吉井誠アナウンサー：
一方で（映画で大泉洋さん演じる）息子の立場として見ていると、母の恋愛は許せない…という感じでしたよね
吉永小百合さん：
映画の中で、自分の息子に対して「おまえ」と言うのは初めてのことだった思う。最初は「えっ!?」と思ったけど、その内に自然に言えるようになった
きっかけはフェリーでの別れ立ち会い
吉永さんは五島を何度も訪れる中で、島を応援したいと思った印象的な場面に出会ったという。
吉永小百合さん：
最初に五島に来た時、フェリーが着いていて、多くの人に見送られてフェリーが出て行った。紙テープで別れを惜しんで…島から上の学校に行ったり仕事に就いたりするから出て行く。「島には産業がないから…」と。「五島の椿の応援団」になろうと思ってやるようになった
吉永さんにとって長崎県は特別な場所だ。親戚が住み、10代の頃から撮影で訪れ、長崎が舞台となる作品にもいくつも関わってきた。そして、俳優として円熟期を迎えた今、吉永さんは、五島とのつながりをとても大切にしている。
テレビ長崎・吉井誠アナウンサー：
五島のどんなところがお好きですか？
吉永小百合さん：
まず大自然。島の上の方から見た海と島々の連なり、食べ物がおいしいことと、五島に住んでいる人たちのやさしさや温かさ。丸ごと全部ステキ
訪れるたびに五島への愛着が増している吉永さん。映画界の第一線で活躍する俳優と映画館がない島の人たちの交流はこれからも続く。
（テレビ長崎）
