山形・米沢市の栗子山で進む風力発電計画のイヌワシ調査に改ざんの疑いが浮上した問題で、不正を疑われた事業者側が2023年7月から調査をやり直していることが新たにわかった。また、日本イヌワシ研究会は計画の中断を求める意見書を事業者側に提出した。
7月から再調査…県には伝えず
この問題はJR東日本エネルギー開発が行ったイヌワシの調査をめぐり、営巣地と予定地との距離が実際には数kmだったにも関わらず、「10.83km」と記載した準備書を作成した疑いが持たれているものだ。
この記事の画像(11枚)「報告した内容が改ざんされた」との元調査員の告発を受け、日本イヌワシ研究会が2023年春に調査した結果、予定地までは最短で2.1km、平均でも約3kmだったことがわかっている。
やり直しの“再調査”は、事業者側から意見を求められている岩手県立大学の由井正敏名誉教授が要求したもので、7月から月1回のペースで行われている。
10月も10日から3日間行われたが、JR東日本エネルギー開発はこの事実を隠して、9月に県に対し準備書を提出。10月13日、県庁に説明に訪れた時も再調査の事実を伝えず「改ざんや隠ぺいはない」との主張を繰り返していた。
JR東日本エネルギー開発は取材に対し、「調査会社からは改ざんはなかったと報告を受けている。現時点ではこれ以上、何も答えられない」と話している。
イヌワシ研「極めて不十分で不適切」
計画をめぐっては、JR東日本エネルギー開発がまとめた環境影響評価準備書が実際の調査内容とは異なるデータを基に作成されたとして専門家などが中止を求めている。
2023年春に独自の調査を行い、計画地の近くで複数のつがいの生息を確認している日本イヌワシ研究会は「極めて不十分で不適切」として、計画の中断を求める意見書を事業者側に提出した。
意見書では、事業者側が確認した営巣地が1つにとどまっている点について「精度に問題がある」と指摘。さらに「計画地までは10.83km離れていて、イヌワシが風車に衝突する可能性は20年に1羽に満たない」とした点についても「他県では18km離れた場所でも衝突死が確認されている。寿命が長いイヌワシが生涯に一度、衝突しうると認めたようなものだ」と断じた。
その上で「調査は極めて不十分・不適切で論ずるに値しない」として、計画の中断と計画地の見直しを求めている。
また、日本野鳥の会も10月4日に計画の見直しを求める意見書を提出している。JR東日本エネルギー開発は取材に対し「現時点で計画の中止や見直しは考えていない」と話している。
(さくらんぼテレビ)