イヌワシ調査の信ぴょう性が疑われている山形・米沢市の風力発電計画について、事業者のJR東日本エネルギー開発が、「準備書」の次の段階となる「評価書」を2024年秋に提出する考えであることがわかった。11月28日夜には住民説明会が行われ、健康被害の不安・事業見直しを求める声があがった。

2024年秋に「評価書」提出へ

計画をめぐっては、2023年9月に示された準備書が「極めて不十分で不適切」として、日本イヌワシ研究会が10月に中断を求める意見書を提出。

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その上で「イヌワシの行動圏が未だ適切に評価されていない」として、最新の生息状況の確認を進めている。猛きん類の専門家も調査の信ぴょう性を疑い、やり直しを要請した。

11月27日には「計画の中断」を求めたが、JR東日本エネルギー開発は7月から実施している再調査を継続して行い、その結果を早ければ2024年9月、「準備書」の次の段階となる「評価書」に盛り込む考えを明らかにした。

「風況ポール」設置工事に住民から苦情

一方、栗子山では、風の状況を調べる「風況ポール」を建設する工事が進んでいる。JR東日本エネルギー開発によると、この設置工事は11月上旬から始まり、12月上旬まで3基を建設する。

ポールの高さはいずれも約60メートルで「本体工事に向けて風の強さや向きなどについてより精密なデータをとるため」としている。

日本イヌワシ研究会が中断を求める意見書を提出する中、始まった工事。
地元・板谷地区の住民からは「計画に反対の声が上がる中、強行するのか」「取付道路工事の土砂が川に流出している」などの苦情が県に寄せられている。

環境影響評価法では、事業者は自治体の同意がなくても計画を進められるが、日本イヌワシ研究会は「イヌワシにとってこの時期は交尾や産卵に備えて巣作りする求愛造巣期。ポールの設置場所はイヌワシの餌場でもあり、工事の強行は容認できない」としている。

住民説明会で「事業見直し」求める声

28日夜、地元住民を対象にした説明会が開かれ、参加した住民から健康被害への不安や事業見直しを求める声が上がった。事業者側は専門家に求められた再調査を7月から行っていて「今のところ準備書で示した地点より近い場所で営巣地は確認されていない」と説明した。

参加した住民からは「バードストライクで、イヌワシが絶滅に追い込まれては困る。事業見直しをお願いしたい」「『低周波音で健康被害がない』と断定されるのは違う。事業をやめてもらいたい」「作られた電力はどこに行くのか、災害時には地元の電力として使えるのか…など、いろんなことを聞きたかったが時間がなくなった」などの意見が寄せられた。

住民からは再度の説明会を求める声が相次ぎ、JR東日本エネルギー開発は「今後も必要に応じて開いていきたい」としている。

(さくらんぼテレビ)

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