約60年前から福岡市民会館で使われ、世界的音楽家のサインが残る「レガシーピアノ」と呼ばれる1台のピアノがある。老朽化で長く使われなくなっていたが、修復が完了し、お披露目コンサートが開かれた。
「レガシーピアノ」を後世へ
10月6日、福岡市民会館に1台のピアノが慎重に運び込まれた。8月に修復を終えたばかりの「スタインウェイ」社製グランドピアノ(1963年製造)だ。
福岡市民会館がオープンした時から使われていたのだが、老朽化で15年ほど前から演奏されなくなっていた。

このピアノから「再び音色を」と修復されるきっかけとなったのは、ルービンシュタイン(1887年―1982年 ポーランド出身)やケンプ(1895年-1991年 ドイツ出身)など、世界的音楽家40人のサインが残されていたため。
著名音楽家たちが演奏したピアノを後世に残そうとプロジェクトが発足。クラウドファンディングなどを通じて約2,300万円が集まった。
ピアノの音色を確かめるのは、修復を担当した片山康佑さん。

1級ピアノ調律技能士・片山康佑さん:
ネジにもサインされているのが結構あるんですね。それを元通りに戻す、字を合わせるのが一番難しかったですかね。何度も何度も合わせて、計算して、合わせ直しました
乾燥しすぎてひび割れした響板の交換や調律など、修復にかかった期間は丸1年。手塩にかけたピアノのお披露目に思いも深まる。

1級ピアノ調律技能士・片山康佑さん:
愛着はありますよね。1年かけてやってますので。寂しいっていう気持ちもあるんですけど、お披露目されるというところでうれしいところもあります。かわいいというか嫁入りっていう感じですよね
よみがえった音色が会場に響く
そして迎えた10月8日のお披露目コンサート。片山さんも見守る中、静寂に包まれた会場で、本番の“時”を迎えた。

ドビュッシー「月の光」、静寂の中に差し込む淡い光のような音色。
ベートーヴェンの「ピアノソナタNo.14・月光」は、澄んだ音色で観客を包む。

そして、ラヴィニャックの「ギャロップマーチ」。一転してにぎやかな連弾が会場に響く。
柔らかくも力強い音色に、観客から大きな拍手が送られた。

コンサートの観客:
すごい澄んだような音色でびっくりしました
コンサートの観客:
私たちがやるのとは違うくらいに、音がかっこよくてすごかったです

1級ピアノ調律技能士・片山康佑さん:
ドキドキしました。すごい緊張しました。感動と安心と色んな感情がありました
時を経て、再び音色を響かせたレガシーピアノ。これからさらに新たな歴史を刻んでいく。
(テレビ西日本)