海中に沈んだプラスチックごみなどの回収に、外来生物に理解を深めるカフェ。日本海に浮かぶ隠岐諸島、島根・隠岐の島町の高校生が、環境問題への関心を高めてもらおうとユニークな活動に取り組んでいる。自然豊かな島に暮らす高校生たちの思いを取材した。
ウシガエルとアメリカザリガニを食材に…
雄大な日本海に抱かれた島根・隠岐の島町。放課後、隠岐高校を訪ねると、教室には何か料理を作っている生徒たちの姿が。
この記事の画像(15枚)隠岐高校・北野藍さん:
ウシガエルとアメリカザリガニのマレンゴです
特定外来生物のウシガエル、そして、条件付特定外来生物のアメリカザリガニ。国内の生態系を崩す“厄介者”たちをフランス料理に仕立てるという。
「SHIMANEみらい共創CHALLENGE」、通称「みらチャレ」は、島根県内の高校生が気付いた地域課題の解決や、地域活性化の実現を目指すプロジェクト。
2年目の2023年は、約50人の高校生が参加している。
そのプロジェクトの一つが、隠岐高校の北野さんら5人の生徒が企画した「外来種カフェ」だ。先ほど調理していたのは、カフェで出す料理の試作品だった。食材になるウシガエルにアメリカザリガニは、すべて生徒たちが捕まえている。
ーー生きものは得意ではない?
隠岐高校・野津華澄さん:
得意じゃないわけじゃないけど
隠岐高校・中濱速人さん:
ダメですね
「食」を通じ外来種の問題を広めたい…
カエルやザリガニに触るのはちょっと…という生徒たち。では、なぜ、外来生物を料理にするカフェを思いついたのだろうか?
隠岐高校・野津華澄さん:
私も元々、外来種のことを16年間も知らなかったので、(子どもたちに)小さい頃から知ってもらえるようにしたくて。「食べる」って分かりやすい活動ですよね
授業で知った外来種の問題について、身近な「食」を通じて、理解を広げたいと考えた。
この日は、カフェのオープンに向けて、運営のシミュレーション。同級生を客に見立てて、調理から接客、料理の提供まで一連の動きを確認した。
協力してくれた同級生が思わず声を上げたのは、フランスの煮込み料理「マレンゴ」。トマトやニンニクといっしょに、ザリガニが材料として使われることがあるという。今回は、さらにウシガエルも使って、大胆にアレンジした。
初めは「こわい…」と声を漏らした同級生。もちろん「外来生物」料理は初体験だ。一口運ぶと、「おいしい」と納得の表情を浮かべた。
同級生:
カエルは鶏肉の味がする
同級生:
おいし過ぎて“かわず”にはいられない
冗談も飛び出し、まずまずの反応に野津さんもほっとしたようだ。
隠岐高校・野津華澄さん:
町民全員に食べてもらえるような料理を出して、外来種のことも皆さんに知ってもらえるように頑張っていきたい
ふるさとの海を守るため…海中清掃を企画
隠岐高校では、環境について考える別のプロジェクトも活動を始めた。
次々に海に入る生徒たち。海の中で見つけたのはペットボトルなどのごみ。豊かな自然が残る隠岐の海だが、海にはごみが沈んでいた。
隠岐高校・大濱成聖さん:
海岸のごみは拾ってきれいにしているが、海の中にあるごみをなんとかしないと、隠岐の海が壊されていくと思い、企画した
2050年には、海中のプラスチックごみの量が魚の量を上回ると予想する研究もあり、大濱さんは、ふるさとの海を守りたいと、この海中清掃プロジェクトを提案した。
今後は、イベントなどを通じて、海洋ごみの問題について町民の関心を高めていきたいと考えている。
豊かな自然の中で暮らすからこそ気づく、身近な環境の危機。自らの未来のために、高校生たちが動き始めている。
(TSKさんいん中央テレビ)