10月1日から消費税のインボイス制度がスタートする。インボイス制度とは、2019年10月に消費税が10%と8%の複数税率となったことに対応するため、「インボイス」と呼ばれる、税率ごとに区分し消費税額を明記した「適格請求書」を事業者が発注元(納入先)に発行することで、納税額を正確に計算できるようにするものだ。

ただ、インボイスを発行するには事前に税務署に登録する必要があり、登録すれば、これまで消費税を納めなくてよい免税事業者だった零細事業者にも税負担が生じる。また、登録を見送った場合は納入先の事業者の税負担が増えるため、納入先から契約の見直しを迫られたり打ち切られたりするリスクがある。そのため、免税事業者の中小・零細企業やフリーランスなどの個人事業主から反対の声が強い。

では、与野党各党は今回のインボイス制度導入にどんな立場を取っているのか、幹部の発言を取り上げて、その主張を見てみる。

「対応が遅いのでは?」質問に反論

岸田首相は、9月29日のインボイスに関する関係閣僚会議で次のように述べた。

「インボイス発行事業者の登録申請は順調に進んでいる一方、一部中小・小規模事業者の方から、取引上不当な扱いを受けるのではないかといった不安の声も上がっている。中小・小規模事業者は、我が国経済にとって重要な役割を担っており、安心して事業に従事していただくための環境を整備していくことが大事だ。このため事業者の立場に立って、税務執行上、柔軟かつ丁寧に対応していくと共に事業者の悩みを的確に把握し、細かく取り組んでいく」

岸田首相は、影響を受ける事業者の不安を解消していく重要性を強調(29日)
岸田首相は、影響を受ける事業者の不安を解消していく重要性を強調(29日)
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岸田首相はこのように、影響を受ける事業者の不安を解消していく重要性を強調した。政府は具体的には、相談体制の強化、激変緩和のための税制上の措置の周知、各種補助金の拡充、必要なソフトの購入補助に取り組んでいて、新たな経済対策にも支援策を盛り込む方針だ。また、岸田首相はこの日、政府の対応が遅いのではないかと記者団から問われ、次のように述べた。

「インボイスへの対応は、複数税率が決定してから4年間に渡って様々な準備を進め、説明を続け、今日に至っている。対応が遅かったんじゃないかという指摘だが、これまで何もしていなかったのではなく、何年にもわたって対応を考え説明を続け、今日に至った。不安に思っている方がおられるわけだから、引き続き、政府として説明、対応を続けていきたい」

また、河野デジタル相はインボイス制度について「事業者の実務のみならず経済活動そのものをデジタル化する一層の好機になる。税務申告を含め入力の作業を大幅に軽減することができるようになる。経営のリアルタイム把握が可能となる。新たな付加価値を享受することができ、事業全体の生産性の向上、成長にも繋げることができる」と意義を強調した。

公明党は、山口代表が24日のテレビ番組で「岸田首相が先頭に立って、もっと丁寧に説明すべきだ」と語ったほか、党として「免税事業者からは戸惑いや不安の声もある。政府は円滑な導入、定着に向けて万全を期してほしい。支援策を丁寧に説明し、広く活用してもらうことが大切だ」などとしたコメントを発表している。

野党には“温度差”

一方、野党は導入反対から容認までそれぞれで、温度差が垣間見えた。立憲民主党の泉代表は、29日、次のように導入延期を訴えた。

立憲・泉代表「今日(政府の関係閣僚会議が)初会合というのはあまりに遅いし、対策もその分遅くなる」(29日)
立憲・泉代表「今日(政府の関係閣僚会議が)初会合というのはあまりに遅いし、対策もその分遅くなる」(29日)

「去年の国会でインボイスを廃止するべきだということで法案を提出した。今年の通常国会の冒頭で、総理に対してこのままインボイスを進めるとえらいことになりますよと問い質した。政府、特に財務省には、中小事業者、零細、個人事業主などの負担がどれほどのものなのかということを、もっと実感を持ってもらわないといけない。という時に今日(政府の関係閣僚会議が)初会合というのはあまりに遅いし、対策もその分遅くなる。私達とすればやはり導入の延期は訴え続ける」

また、日本維新の会の藤田幹事長は、インボイスの前提となる複数税率に疑問を示しつつ、導入延期論には与しない考えを示している。

維新・藤田幹事長は28日、「インボイスを今この時点ですべてひっくり返してやめようという主張は受け入れられない」と述べた
維新・藤田幹事長は28日、「インボイスを今この時点ですべてひっくり返してやめようという主張は受け入れられない」と述べた

「インボイスの導入を必要とする要請は複数税率が背景。我々は複数税率にはそもそも入口の所から反対で、シンプル化して減税すべきという立場。ただし、付加価値税を導入しているほぼすべての諸外国がインボイス制度を導入・運用している実態を踏まえれば、税の公平性公正性、徴税効率化の観点から、移行期間や軽減措置があるのは承知した上で、導入はすでに決まっていて、施行の際のインパクト少ないような措置を勝ち取れた。インボイスを今この時点ですべてひっくり返してやめようという主張は受け入れられない」(28日の記者会見)

共産党は、「多くの免税事業者が、取引先からインボイス登録をするか、消費税相当分の値引きをするかの悪魔の二者択一を迫られている」などと指摘した上でインボイス制度の導入中止と消費税減税を訴えていて、小池書記局長は25日の会見で「10月からインボイスの導入というのは、小規模事業者・フリーランスを本当に廃業に追い込むようなもの、大増税ですから、撤回することが必要」と訴えた。

国民・玉木代表は「単一減税だとインボイスがいらなくなる」と指摘(26日)
国民・玉木代表は「単一減税だとインボイスがいらなくなる」と指摘(26日)

また、国民民主党の玉木代表は26日の会見で「消費税を少なくとも8%に減税して、すべての財サービスを軽減税率の対象にすれば、綺麗に8%に揃う。単一税率だとインボイスがなくても仕入税額を確認できるので、インボイスがいらなくなる」と指摘している。

今回のインボイス制度の導入が実際に始まって、それを国民はどのように評価するのか。今後の解散総選挙のタイミングにも微妙な影響を与える可能性がある。
(フジテレビ政治部デスク 髙田圭太)

髙田圭太
髙田圭太

フジテレビ報道局  政治部デスク 元「イット!」プロデューサー