「領収書頂けますか」働く人なら一度は使ったことがあるはずのこの言葉が、インボイス制度と大きく関わってくる。インボイスとは、売り手が買い手に対して「正確な消費税の額や適用されている税率が何パーセントなのか」といったことを伝えるもの。2023年10月から、取引においては基本的に「インボイス」の発行と保存が義務付けられる。

インボイス=適格請求書

インボイスとは「適格請求書」のことで、消費税を納税する義務がある事業者であれば、10月から発行と保存が義務付けられる。現在の消費税は食品と新聞が8%、それ以外が10%だが、税率ごとの金額を示す必要がある。

イメージ 税率ごとの金額を示す必要も
イメージ 税率ごとの金額を示す必要も
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そしてもう一つ、重要なのが登録番号。これがない領収書を会社に提出した場合、これまでと対応が変わる可能性がある。

利用者にとって登録番号がポイントに
利用者にとって登録番号がポイントに

廃業を決めた人も

「9月30日で辞めたいって人もいた」…こう話すのは、個人タクシーの運転手・高橋喜則さん。同業者の中で、2023年に入って廃業を決めた人も出ているという。背景の一つにあるのが…「インボイス制度」

インボイス制度の対応負担で廃業した仲間も
インボイス制度の対応負担で廃業した仲間も

免除だった消費税を納付

これまで、高橋さんを含む福島市の個人タクシーは、基準となる期間の課税売上高が1000万円以下で、消費税が免除される「免税事業者」だった。それがインボイス制度に登録したことで「課税事業者」に。10月以降は、これまで免除されていた消費税を国に納付する必要が出てくることになる。

インボイス制度登録で、これまで免除されていた消費税を納付
インボイス制度登録で、これまで免除されていた消費税を納付

免税事業者のままでも…

売り上げが多い人で、年間の納税額は約20万円に上るが、負担が増えてでも課税事業者となるのには理由がある。高橋喜則さんは「乗った方の会社で、消費税分が経費でおりなくなる可能性があります」と話す。免税事業者のままでいることもできたが、経費でタクシーを利用した会社が免税事業者が納付していない消費税を肩代わりしなければいけなくなる。

経費でタクシーを利用した会社が消費税を肩代わり
経費でタクシーを利用した会社が消費税を肩代わり

負担は大きくても 利用控えを懸念

「経費で落とせない個人タクシーは乗らない」という会社が出てくる可能性があることから、福島市の個人タクシー組合は全員が登録した。
高橋喜則さんは「かなり燃料費も上がっているので、だいぶ負担は大きくなる。これは国が決めたことなので、頑張っていくしかない」と話した。

個人タクシー・高橋喜則さん 燃料費とインボイス制度のWパンチ
個人タクシー・高橋喜則さん 燃料費とインボイス制度のWパンチ

取り引きしないという企業も

東京商工リサーチによると、福島県内企業98社のうち「免税事業者とは取り引きしない」と答えたのは8社。1社が「取引価格を引き下げる」と回答した。

「免税事業者とは取り引きしない」と答えたのは8社

独占禁止法に違反するおそれ

福島大学経済経営学類の稲村健太郎教授は「基本的に取り引きは、どの事業者とするのかは自由だが、インボイスを発行していないことを理由として、一方的に取り引きを停止したり、著しく低い取引価格を押し付けるといったことは問題になる」と指摘する。一方的に免税事業者との取り引きを打ち切ると、独占禁止法などに違反する恐れがある。

福島大学経済経営学類・稲村健太郎教授
福島大学経済経営学類・稲村健太郎教授

事業者は特例や補助金の活用を

また、稲村健太郎教授は「小規模事業者は、様々な特例や補助金制度を利用することができれば、それほど影響は大きくないのではないか」とも話した。

小規模事業者は特例や補助金を活用すると負担が少なく
小規模事業者は特例や補助金を活用すると負担が少なく

影響受ける事業者に支援策

インボイス制度を巡っては、イラストレーターなどの免税事業者が「課税事業者にならないと仕事が減ってしまうのでは」と訴え反対していて、反対の署名は50万人以上に上っている。
政府は、影響を受ける事業者への支援策を経済対策に盛り込む方針で、週内にも関係閣僚会議の初会合を開く。

(福島テレビ)

福島テレビ
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