2023年度の熊本市の教員採用試験・志願者の平均倍率1.9倍と、過去最低だった。熊本市が政令市に移行して独自採用を始めてからの最高は2015年度の6.4倍で、教員のなり手不足が深刻化している。熊本市教育委員会が、この状況を打開すべく始めた新たな取り組みを伝える。

熊本市の学校教育アシスタント事業

熊本市立白山小学校1年生のクラスでは、担任の先生が授業を手伝ってもらう学生を紹介した。

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熊本大学大学院 教育学研究科1年・陣内栞さん:
この1時間は皆さんと一緒にお勉強します。よろしくお願いします

陣内栞さんは熊本大学大学院の1年生だが、これは教育実習ではない。「学校教育アシスタント事業」という熊本市教育委員会が2023年7月に始めた新しい取り組みだ。

熊本大学大学院 教育学研究科1年・陣内栞さん:
大学に応募のチラシが掲示してあり、興味を持ち、自分から応募しました

最終的には「志望動機を高めてほしい」

熊本市内の小中学校、合わせて10校をモデル校として、教職に関心を持つ大学生を派遣して学習の補助などを行ってもらうものだ。現在25人が学生アシスタントとして活動中で、学生には謝礼金として1時間あたり1,600円が支払われる。

熊本市教育委員会 教職員課・上村清敬課長:
学校にとって(大学生に)スタッフとして働いていただくことも助かるし、最終的には熊本市の教員になっていただくという志望動機を高めてもらえれば、それが最大の狙いでもあります

熊本市教委は、2023年7月に初めて「ペーパーティーチャー講習会」を行っていて、教員免許を持ちながら教壇に立っていない人、即戦力の掘り起こしを目的としている。

熊本市教育委員会 教職員課・上村清敬課長:
あらゆる手段を講じて、教員のなり手を確保したいのが本音です

人手が足りない学校と興味がある学生

熊本市では、9月1日現在で市立の小・中・高校で計28人の教員が不足していて、モデル校に指定された白山小学校でも1人足りない状況だ。

熊本市立白山小学校・藤本敏広校長:
うちは(教員が)足りない、向こう(学生)もやってみたい、それが重なったということで、うちとしては本当にありがたい。感謝しています

この日の1年生の算数の授業は「おおきさくらべ」だ。子どもたちはグループに分かれて、教室の中の色々なものの高さを測った。

陣内さんが「好きなところを測ってごらん」と生徒を誘導。

1年生の担任・浦津沙紀教諭は「子どもたちにとっても、人手があるのは勉強しやすい環境だと感じる」と話す。

陣内さんのこの日2つ目のクラスは、3年生の図工・版画の授業だ。

3年生の担任・伊佐太一教諭:
これを持って押して、和紙をすってインクをつけていきます

学生アシスタントは、子どもたちが個別に作業する授業を中心に配置されているようだ。白山小学校には、陣内さんの他にも2人の学生アシスタントが活動している。

熊本市立白山小学校・藤本敏広校長:
(担任)1人で30人、なかなか目が届きませんし、教師の目が2倍になって手も2倍になるので、今引っ張りだこ。「うち(のクラス)にも来てほしい」と言われ調整に頭を抱えています

熊本大学大学院 教育学研究科1年・陣内栞さん:
動くときのサポートと座学のサポートでは、色々変わってくるので、きょうはたくさんいろんな子が動く中で動向を注意して見て、でも楽しかったです

もともと教員志望という陣内さんに、アシスタントの活動はどんな影響を与えているのだろうか。

熊本大学大学院 教育学研究科1年・陣内栞さん:
私は、このアシスタント事業を通して、やっぱり教員になりたいなっていう思いがすごく強くなりました。今、教壇に立っていらっしゃる先生方を見て、自分もそうなりたいなと思うし、子どもたちとたくさん関わりたいなと思います

教員のなり手不足と現有勢力不足、そのいずれをも改善できる手だてとなるか。学校教育アシスタント事業は、まずは2024年3月まで実施される。

(テレビ熊本)

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