9月12日、式典や時の大統領と外国首脳との共同記者会見など数々の歴史的舞台にもなってきたホワイトハウスの「イーストルーム」で多くのメディアがカメラを構えた。

”現・元”ファーストレディの同席は珍しい
”現・元”ファーストレディの同席は珍しい
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日本美術協会が主催する「高松宮殿下記念世界文化賞」の受賞者祝賀式に大きな歓声を受け笑顔で会場に姿を見せたヒラリー・クリントン元国務長官は、世界の優れた芸術家に贈られる世界文化賞の国際顧問として、再びスポットライトを浴びることになった。ホワイトハウスに“カムバック“し、祝賀式の主催者として同席したジル・バイデン大統領夫人とともに“現・元”ファーストレディがホワイトハウスで肩を並べるのは珍しい光景だった。

米メディアが熱視線 “現・元”ファーストレディの同席

ヒラリー氏は、1993年から2001年までファーストレディを8年間勤め、2008年と2016年には女性初の大統領になるべくホワイトハウスを目指した。そんなヒラリー氏の久々のホワイトハウス入りは、祝賀式に大きな花を添えた。米メディアによると、ホワイトハウス内の公の場にヒラリー氏が姿を見せるのは、オバマ政権時代に国務長官を務めて以来(2009年―2013年)という。

ホワイトハウスに”カムバック”したヒラリー氏
ホワイトハウスに”カムバック”したヒラリー氏

「ウエルカムバック」とジル夫人が壇上からヒラリー氏に呼びかけると、この日一番の拍手と大きな声援が送られた。挨拶に立ったヒラリー氏は、「ホワイトハウスを開放してくださったジル夫人とバイデン大統領に感謝したい。この場にいること、そしてこの祝賀と発表に参加できることを大変光栄に思う」と述べた。そしてヒラリー氏は、祝賀式に出席したヴィヤ・セルミンスさん(絵画部門)、ウィントン・マルサリスさん(音楽部門)、ロバート・ウィルソンさん(演劇・映像部門)、式に参加できなかったオラファー・エリアソンさん(彫刻部門)、ディエベド・フランシス・ケレさん(建築部門)の業績を紹介し称賛した。

また、式には若手芸術家奨励制度の対象団体に選ばれた、アメリカのルーラル・スタジオとハーレム芸術学校も参加した。

夫人として、国際顧問として…世界文化賞とホワイトハウスの深い関係

2023年で34回を迎えた高松宮殿下記念世界文化賞は、日本美術協会が主催する、絵画や音楽、演劇・映像の部門などで世界の優れた芸術家に贈られる芸術のノーベル賞ともいわれる世界的な芸術賞だ。ホワイトハウスとの関係も深く、1994年(第6回)には、当時、クリントン大統領夫妻が主催し、ホワイトハウスで初めて受賞者が出席するレセプションが開催された。その際、ヒラリー氏は「我々の想像力をかき立て、魂を揺さぶってくださったことに感謝する。皆様の偉業は世界に大きく貢献した」と受賞者を称えた。また、1999年(第11回)には、常陸宮同妃両殿下をお迎えして、ホワイトハウスでヒラリー・クリントン大統領夫人主催の歓迎レセプションが行われた。

ホワイトハウスで大きな声援が送られたヒラリー氏
ホワイトハウスで大きな声援が送られたヒラリー氏

ヒラリー氏は、2022年に世界文化賞の国際顧問に就任した。以来、米推薦委員会を主宰し、賞の候補者を推薦している。デイヴィッド・ロックフェラー氏、息子のデイビット・ロックフェラー・ジュニア氏、元米外交官のウィリアム・ルアーズ氏、キャロライン・ケネディ氏に続く5人目のアメリカの国際顧問となる。

“不仲説“も“不人気”バイデン氏はあやかりたい!?

ホワイトハウス“カムバック”で受賞者祝賀式を盛り上げたヒラリー氏は、終了後のレセプションでもその人気が垣間見えた。多くの出席者がカメラを構え、握手を求め、一人一人と記念撮影に応じた。

祝賀式やレセプションにバイデン大統領が姿を見せることはなかったが、自邸となるホワイトハウスでの“ヒラリー人気”にバイデン氏の心中は、穏やかでなかったかもしれない。

“苦境”のバイデン大統領
“苦境”のバイデン大統領

CNNの直近の世論調査では、バイデン氏の支持率は39%、民主党支持層の49%が82歳で二期目を迎えるバイデン氏の高齢を不安視し、67%がバイデン氏以外の候補を望むと回答している。しかし、来年に迫る大統領選で、82%がバイデン氏の具体的な代替候補を挙げられていない。

こうした状況も踏まえてか出席した民主党幹部からは「2016年の大統領選でヒラリー氏が当選していたらこの国はもっと良くなっていただろうと多くの人が思っている。彼女は実際にトランプ氏よりも多くの票を得た」との声も聞かれた。一方で、「バイデン大統領には、絶対に対抗できないし、トランプ支持者に嫌われすぎている」との否定的な声も挙がった。

ホワイトハウス内に飾られているファーストレディ時代の肖像画
ホワイトハウス内に飾られているファーストレディ時代の肖像画

ヒラリー氏は、2022年10月にFNNの単独インタビューに対し「(大統領選への)出馬はない。私は自分が信じている人々、良い仕事をすると思う人々を応援するつもりだ」と述べた。9月14日の米メディアのインタビューでも「巨額のインフラ投資(に伴う経済効果)や脱炭素化の取り組み、製造業の国内回帰、薬価の引き下げ」などを例に挙げ、「バイデン氏の再選を支持する」と答えている。

ただ、バイデン氏との関係は、決して良好ではないとの指摘もある。

2016年の大統領選にオバマ氏の後継を目指し出馬したヒラリー氏について、当時、副大統領だったバイデン氏は、表向きはヒラリー氏を応援していたものの支援は積極的ではなかったともいわれている。民主党内でバイデン氏は、ヒラリー氏の対抗馬として出馬を争う立場でもあった。

さらに、2021年8月、バイデン氏が、アフガニスタンから米軍を撤退させる決断をした際、政権の意に沿わない形でヒラリー氏が個人的に関与したことが発覚し、バイデン氏の補佐官が苦言を呈したこともあったという。

バイデン氏は、2022年の中間選挙で根強い人気のあるオバマ元大統領の助けを借りた。今も支持を集められないバイデン氏にとっては、背に腹は代えられない状況で、“不仲説”もあるヒラリー氏の人気にもあやかりたい思いもあるのかもしれない。

(FNNワシントン支局長 千田淳一)

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千田淳一
千田淳一

FNNワシントン支局長。
1974年岩手県生まれ。福島テレビ・報道番組キャスター、県政キャップ、編集長を務めた。東日本大震災の発災後には、福島第一原発事故の現地取材・報道を指揮する。
フジテレビ入社後には熊本地震を現地取材したほか、報道局政治部への配属以降は、菅官房長官担当を始め、首相官邸、自民党担当、野党キャップなどを担当する。
記者歴は25年。2022年からワシントン支局長。現在は2024年米国大統領選挙に向けた取材や、中国の影響力が強まる国際社会情勢の分析や、安全保障政策などをフィールドワークにしている。