議事堂西側にスタジアムのような特設会場

ドナルド・トランプ氏(78)の大統領就任式が1月20日に迫った。2度の暗殺未遂事件などを踏まえ、開催地の首都ワシントンの連邦議会議事堂周辺は、厳重な警備態勢が敷かれ緊張感が高まっている。

大統領就任式の会場となる連邦議会西側(1月16日撮影)
大統領就任式の会場となる連邦議会西側(1月16日撮影)
この記事の画像(9枚)

20日正午(日本時間21日午前2時)の就任宣誓とともにトランプ氏の2期目がスタートする。演説で何を語るのか、世界中が固唾をのんで見守っている。

連邦議会議事堂では1年以上前から就任式に向けた計画が進められ、議事堂の建築家らによる会場づくりが行われてきた。

コロナ渦で行われたバイデン大統領就任式(2021年1月20日)
コロナ渦で行われたバイデン大統領就任式(2021年1月20日)

大統領が就任宣誓を行う演壇を取り囲むように観覧のテラス席が設けられ、正副大統領やその家族、元大統領や閣僚、連邦議会議員、連邦最高裁長官、州知事など例年、1600人以上が参加する。議事堂からリンカーン記念堂までの約4kmに渡って、立ち見の一般席も設けられる。

トランプ大統領就任式(2017年1月20日)
トランプ大統領就任式(2017年1月20日)

現地メディアによると、トランプ氏が最初に就任式に臨んだ2017年には、一般聴衆も含め60万人から70万人が集まったという。

ロナルド・レーガン大統領2期目の就任式(1985年1月21日)
ロナルド・レーガン大統領2期目の就任式(1985年1月21日)

しかし、今回の就任式は厳しい寒さが予想され、トランプ次期大統領は、17日、SNSで連邦議会議事堂内で就任式を開催すると明らかにした。屋内での開催は、1985年のロナルド・レーガン大統領以来40年ぶりとなる。

厳しい寒さで延期された初代ワシントン大統領就任式

大統領就任式は、憲法で1月20日と定められ、1937年のフランクリン・ルーズベルト大統領(1933年―1945年)の2期目の就任式から現在まで続いている。

過去をさかのぼると、初代ジョージ・ワシントン大統領(1789年―1797年)の就任式は3月4日だったが、厳しい寒さの影響で、参加者が開催地に到着できないことから4月30日に延期されたこともあった。

ジョージ・ワシントン大統領の就任式(国立公文書館提供)
ジョージ・ワシントン大統領の就任式(国立公文書館提供)

就任式当日は、20日正午(日本時間21日午前2時)に新大統領が就任を宣誓し、演説を行う。その後は閣僚を正式に指名するための署名や議会での昼食会、就任パレード、大統領執務室での大統領令への署名、舞踏会とイベントが目白押しとなる。

専用機エアフォースワン内で宣誓した大統領も

大統領就任式が現在の議会議事堂西側に定着したのは、1981年のロナルド・レーガン氏(~1989年)からとなるが、それまでは就任式や宣誓式は、様々な場所で行われてきた。

初代ジョージ・ワシントン大統領は1789年4月30日、当時の首都だったニューヨーク市で就任宣誓を行った。その後、式典は1801年に首都ワシントンに移され、トーマス・ジェファーソン大統領(1801年~1809年)は連邦議会議事堂内で行ったほか、フランクリン・ルーズベルト大統領の4期目の就任式は、第二次大戦中の緊縮財政を踏まえホワイトハウス内で行われた。

エアフォースワン内で宣誓したジョンソン大統領
エアフォースワン内で宣誓したジョンソン大統領

また、1963年、ジョン・F・ケネディ大統領がテキサス州ダラスで暗殺された直後に大統領になったリンドン・ジョンソン副大統領は、ワシントンに戻る大統領専用機エアフォースワンの中で宣誓を行った。

就任式のインターネット配信は1997年が最初

大統領就任式は様々な形で伝えられてきた。

1857年のジェームズ・ブキャナン大統領の就任式は、写真に記録された最初の就任式だった。1925年のカルビン・クーリッジ大統領の就任式は初めてはラジオで伝えられた。

インターネットで世界に生配信されたクリントン大統領の就任式(1997年)
インターネットで世界に生配信されたクリントン大統領の就任式(1997年)

1949年のハリー・トルーマン大統領は初めてテレビで放送され、1997年のビル・クリントン大統領はインターネットで世界に生配信された初めての式典となった。

初代から200年以上受け継がれる慣例儀式

聖書に左手を置いて就任宣誓する儀式は、初代のジョージ・ワシントン大統領の時代から続いている。さらに「私は、合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、合衆国憲法を全力を尽くして維持し、守り、擁護することを厳粛に誓います」という憲法に刻まれた言葉を繰り返すことも慣例となっている。

就任式後のパレードも同様だ。トーマス・ジェファーソン大統領の2期目の就任式では、宣誓を終えた後に連邦議会議事堂から現在のホワイトハウスまで馬に乗って移動した。その際、近くの海軍工廠から音楽隊などが自然発生的に集まり、その行列は現在のパレードへと発展した。

トランプ大統領就任式 (2017年1月20日)
トランプ大統領就任式 (2017年1月20日)

また、ジェファーソン大統領の2度目の就任式以降、就任式を終えた大統領がホワイトハウスに入る様子が一般に公開されるようになった。しかし、アンドリュー・ジャクソン大統領(1829年~1837年)の時代には、ホワイトハウスに群衆が押し寄せたため、展示品などが破損する騒ぎとなり、大統領が窓から逃げ出す事態に発展した。

現在は、ホワイトハウスに入る大統領を見られるようホワイトハウス前に観覧席が設けられている。

就任初日サプライズに世界が戦々恐々

就任式当日は宣誓式や就任昼食会、パレード、舞踏会など様々なスケジュールが予定されている。

前回2017年の就任初日にトランプ氏は、TPP=環太平洋経済連携協定からの離脱やNAFTA=北米自由協定の再交渉を明らかにし、医療保険制度改革(通称オバマケア)の廃止に向けた規制の緩和の大統領令を発表し、世界を驚かせた。

現地メディアによると、トランプ氏は、就任に向けて100に上る大統領令を用意しているともいわれている。1月20日は様々なトランプサプライズで幕を開けることになりそうだ。

(FNNワシントン支局 千田淳一)

千田淳一
千田淳一

FNNワシントン支局長。
1974年岩手県生まれ。福島テレビ・報道番組キャスター、県政キャップ、編集長を務めた。東日本大震災の発災後には、福島第一原発事故の現地取材・報道を指揮する。
フジテレビ入社後には熊本地震を現地取材したほか、報道局政治部への配属以降は、菅官房長官担当を始め、首相官邸、自民党担当、野党キャップなどを担当する。
記者歴は25年。2022年からワシントン支局長。現在は2024年米国大統領選挙に向けた取材や、中国の影響力が強まる国際社会情勢の分析や、安全保障政策などをフィールドワークにしている。