地域の自然や文化を体験し、環境保全への理解を深めてもらうことを目的とした「エコツーリズム」。小学生を対象としたツアーを取材した。
ひのき風呂は学生作 地元木材で箸づくり体験も
緑と清流の町、埼玉県飯能市で行われたのは、夏休みの小学生7人が参加した1泊2日のツアー。「エコツーリズム」を学ぶ地元の大学生が運営している。
この記事の画像(12枚)こうした取り組みを推進するため、日本では2008年、「エコツーリズム推進法」が施行され、飯能市は全国に先駆けて国のモデル事業に認定された。エコツーリズム推進課を新たに作り、年間約200件のツアーを行うなど、今では“エコツーリズムのまち”として知られている。
取材したツアーは、学生たちが空き家となっていた古民家を活用して何かできないかと考え、2015年から始まった。小学生が楽しみながら自然と文化について学べる様々な工夫がなされている。
例えば、箸づくり体験。使われていたのは「西川材」と呼ばれる地元木材の余った部分だ。地域資源を余すことなく生かしている。
ツアーの拠点として使われている古民家も学生たちが改修したもので、いすやテーブル、お風呂も「西川材」などを使って作ったという。
大学生ガイド:
こういう環境って少なくなってきていると思うので、そういうものの良さをちょっとでも子どもたちに伝えられたり、遊び方を後世に残せていけたりするのは、とても意義があることだと私は思っています。
参加した小学6年生:
ここではセミの声とかも聞こえるけど、(普段は)身近に感じることはなく、自然ってすごいなと思った。
飯能市では、エコツーリズムに力を入れている一方で、課題もある。ガイドの高齢化や人手不足だ。養成講座を開くなどしてガイドを増やしたいとしている。
【取材後記】
ツアーの主催者である一般社団法人 里山こらぼの平井純子代表理事は、自然を最大限に活用して楽しむ心、そして、ささいなことから自然に配慮する心を大切にしている。
私自身、はっとさせられる場面がいくつもあった。古民家で使っている石けんやシャンプーはすべて自然に優しいものだ。「優しくないものを使うと、遊びに行った川が汚れてしまうから」と子どもたちに説明していた。
また、うちわが折れた時は、それを捨てず、好きなように直してみることを提案していた。うちわには粘着テープが貼られ、子どもたちの自由な発想で個性的なものに生まれ変わった。
環境保全が大事だということはわかっているが、実際に何ができるのか、具体的に学べる機会は少ない。ツアーを取材して感じたのは、自然を大切にするためには、まず自然に触れる必要があるということだ。それが自然を楽しむことにつながり、また、自然の魅力を知ることにもつながる。
エコツーリズムが一つの観光の形としてさらに広がることを願っている。
取材・執筆:杉山仁実
(「Live News days」8月16日放送より 一部情報を追加しています)