4つの市民襲撃事件で殺人の罪などに問われ、一審で死刑判決などを受けた特定危険指定暴力団「五代目工藤会」トップ2人の控訴審。初公判が9月13日、福岡高裁で開かれた。

傍聴希望者の抽選倍率は6.6倍

2023年9月13日午前9時頃―。

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山田裕希記者(福岡拘置所前):
野村被告を乗せたとみられる車が、いま拘置所を後にします

福岡拘置所から続々と出て来る車。この車に乗っているとみられるのが、殺人や組織犯罪処罰法違反などの罪に問われている特定危険指定暴力団「五代目工藤会」のトップで総裁の野村悟被告(76)とナンバー2の田上不美夫被告(67)だ。控訴審に出廷するため裁判所に向かった。

一方、その頃福岡高裁前では、控訴審を前に傍聴券を求める人が多く集まっていた。工藤会トップが、公の場に出るのは2年ぶりとあって、裁判所には傍聴希望者が殺到。一般傍聴席58席に対し、集まった希望者は385人。抽選の倍率は、6.6倍に上った。

城谷陽一郎記者(福岡高裁車両入り口):
午前9時18分です。続々と警察車両、護送車が入っていきます

裁判所は、厳戒態勢が敷かれた。

そして午前10時、開廷―。

黒のスーツを身にまとい、落ち着いた様子で法廷へと姿を現した野村被告と田上被告。野村被告は2年前と同じく補聴器を着用して臨んだ。

福岡高裁(取材メモより)
市川太志裁判長「あなたの名前を教えてください」
野村被告「野村悟です」
田上被告「田上不美夫です」

まず弁護側は、一審と同じく野村被告の“完全無罪”を主張した。

弁護側(取材メモより)
「原判決は、直接、証拠が全くないにも関わらず、『推認』に『推認』を重ねた有罪判決。証拠裁判主義を大きく逸脱していて、極めて異例にして不当なものです」

2019年から一貫して無罪を主張

その際立った凶悪性から全国に25ある指定暴力団の中で、唯一の「特定危険指定暴力団」に指定されている工藤会。

野村被告と田上被告が起訴されたのは1998年、大型港湾工事などへの影響力を持っていたといわれた元漁協組合長を射殺した事件など4つの市民襲撃事件。2人の関与を裏付ける直接的な証拠がないまま2019年10月から始まった裁判。法廷で野村被告と田上被告は無罪を主張し続けた。しかし―。

水谷翔記者・中継リポート:
死刑判決。死刑判決です

2021年8月、一審の福岡地裁は、「推認」という言葉を39回も使った上で野村被告を4つの事件の「首謀者」と認定。野村被告に死刑、田上被告に無期懲役を言い渡した。

「推認、推認…こんな裁判があるか!」

2人は法廷から去る際、裁判長に対し、不満をあらわにした。

野村悟被告:
公正な裁判をお願いしたのに全然公正やないね。全部、推認、推認、推認、こんな裁判があるか!生涯このこと後悔するよ!

田上不美夫被告:
なんや、この裁判は。裁判官やなく、検察官やね。ひどいね、あんた

一審判決の翌日、弁護側は判決を不服として控訴。しかし、野村被告は2022年、弁護方針を巡って対立した弁護人全員を解任した。

野村被告らは「オウム真理教」元教祖の「麻原彰晃」こと松本智津夫元死刑囚など、凶悪事件の被告弁護を幾度となく担当した“死刑弁護人”の異名で知られる安田好弘弁護士などに弁護を依頼。控訴審に臨んだ。

田上被告は一審から一転関与認める さらに工藤会のトップたちが関与を否定した“元漁協組合長射殺事件”に新証言 真相は? に続く…

(テレビ西日本)

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