2023年9月13日。工藤会トップ2人の控訴審初公判が行われた。そこで、田上被告は一審の全面無罪主張から一転。2つの事件につい「独断で指示した」と関与を認めた。
そして唯一の殺人事件である「元漁協組合長射殺事件」については改めて関与を否定。

発言が“野村を侮辱するもの”だった

2023年9月13日。工藤会トップ2人の控訴審初公判。田上被告は一審の全面無罪主張から一転。4つの市民襲撃事件の内、野村被告の下腹部の施術などを担当した女性看護師が襲われた事件と16年前に射殺された元漁協組合長の孫である歯科医師の男性が襲われた2つの事件につい「独断で指示した」と関与を認めた。

襲撃事件の動機について。

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控訴趣意書・「看護師刺傷事件(2013年1月・福岡市):
看護師が野村に投げかけた言葉が、自分が限りなく尊敬する野村を侮辱するものであった。その看護師に少し痛い思いをさせる必要があるとして、菊地に対して「頬をはつって(切って)、尻を刺せ、大きなけがをさせるなよ」と指示して、犯行を実行させた。傷害の故意はあっても殺人の故意はなく、これを殺人未遂とするのは事実誤認である。野村においては、田上との間に意思連絡もなく、無罪にして無実である

田上被告が看護師襲撃を命じたとされる「菊地」とは、数々の市民襲撃事件で実行部隊を務めたとされる工藤会田中組の五代目組長で当時組織ナンバー3の菊地敬吾被告(51)。

菊地被告は、看護師事件のほか工藤会捜査に携わった福岡県警の元警部が銃撃された事件など6つの事件で罪に問われ、2023年1月、一審で無期懲役が言い渡されている。

さらに田上被告は、歯科医師の襲撃事件について、自らが推していた人物が漁協の代表理事に選ばれなかったことから、亡くなった梶原さんの息子に恨みを抱き、犯行を指示したと述べた。

控訴趣意書・歯科医師刺傷事件(2014年5月・北九州市):
田上は、せめてもの意趣返しとして本件犯行を決意し、菊地に実行を指示した。「尻をちょこっと刺してやれ。決して大事にはするなよ」と指示するにとどめた。何の面識もない被害者を殺害することまで決して考えていたわけではない

看護師事件と歯科医師事件への関与を一転して認めた田上被告。

その一方で、元警部が銃撃された事件については改めて関与を否定し、かつて元警部に逮捕されたことがある菊地被告の方が強い動機があるとした。

控訴趣意書・元警部銃撃事件(2012年4月・北九州市):
野村と田上と比べれば、菊地の方が「強い動機」とも言いうる。菊地は田中組の組長として、独自に指揮命令ができる立場にあったことも考えれば、菊地が元警部に対する個人的怨恨から本件を敢行した合理的な疑いを排除できない

さらに弁護側の資料によれば菊地被告は、看護師刺傷事件、歯科医師刺傷事件への関与を告白。また菊池被告は元警部銃撃事件についても、自らの独断で行ったと認めているという。

殺人事件は「藤井が全部仕切っていた」

そして、野村被告、田上被告は4つの市民襲撃事件中、唯一の殺人事件で、一審で野村被告に対する死刑判決を決定づけた「元漁協組合長射殺事件(1998年2月・北九州市)」についても改めて関与を否定。

当時、野村被告の配下だった、故・藤井進一氏らが元組合長の梶原国弘氏(当時70)に恨みを抱き実行したとしている。

控訴趣意書・元漁協組合長事件(1998年2月・北九州市):
本件は、若松の盟主を自負する藤井進一が、国弘に対する怒りを募らせて、国弘を殺害させたものである

一審とは打って変わり主張を変えた弁護側。対する検察側は「いずれの事件も合理的で常識にかなっており、一審判決が誤認していると到底言えない」と主張した。

法廷で続く検察側の弁論。すると弁護側で少しざわつきが起きた。

福岡高裁(取材メモより)
市川太志裁判長「静かにして下さい」
野村被告「聞こえません」
市川太志裁判長「どこから聞こえていませんでしたか?」
野村被告「最初から聞こえんです」

検察側の主張が聞こえないと訴えた野村被告。検察側は改めて弁論をやり直した。

午後からは、弁護側の証人として元漁協組合長射殺事件の実行犯で無期懲役が確定している中村数年受刑者(77)が出廷。中村受刑者は、判決確定後も「実行犯は別にいる」と一貫して無罪を主張していたが。

証人尋問
安田弁護士「組合長事件について覚えてる?」
中村受刑者「覚えてます。実行犯です。拳銃を撃ちました」
安田弁護士「アドバイスは誰?」
中村受刑者「藤井進一。事件は藤井が全部仕切っていた」
安田弁護士「20年以上、自分が犯人じゃないと言ってたのに、これは野村さんや田上さんのためじゃないのか?」
中村受刑者「いいえ、違います。関係のない総裁と会長が自分のために事件の主犯だと思われているから。申し訳ないと思っている」

大荒れとなった工藤会トップの控訴審。控訴審の第二回公判は、9月27日が予定されている。

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(テレビ西日本)

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