「エイリアン・ハンター」の異名を持つ、アメリカ・ハーバード大学のローブ物理学教授に大きな動きがあった。彼は6月にパプアニューギニア沖で回収した隕石の破片について「宇宙船の可能性がある物質」と発言し注目を集めていたが、初期調査の結果をまとめた論文で「物質は太陽系外から飛来した」と結論づけたからだ。太陽系外から来た恒星間天体ならば、ローブ氏が仮説を立てた「地球外の文明によって作られた宇宙船の可能性」の解明にも一歩近づいた形だ。今後、さらに調査を継続するとしていて、いよいよUFOの真相が解明されるかもしれないと期待が高まっている。

「歴史上で初めて、太陽系外から飛来した物質を分析」

ローブ氏は8月29日に発表した論文の冒頭で、「素晴らしいニュースだ!歴史上で初めて、科学者たちが太陽系外から飛来した1メートル級の天体の物質を分析した」として、回収した物体が、太陽系外から来た恒星間天体だったと結論付けた。

太平洋で回収した物質の分析結果を発表したハーバード大のローブ教授
太平洋で回収した物質の分析結果を発表したハーバード大のローブ教授
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彼は、6月に約2週間かけ2014年にパプアニューギニアから約100キロ離れた太平洋上で落下した「IM1(アイ・エム・ワン)」という隕石の破片の回収を行った。今回発表された論文では、回収した物質のうち57個の分析が完了し、そのうちの5つが「IM1」の表面から溶け出た物質であるとした。さらに、この物質に含まれている元素などを検証したところ、「ウランが標準的な太陽系の物質よりも1000倍近く多い」など異常な値を出しているという。

物質の分析はハーバード大やカリフォルニア大学バークレー校でも行われた
物質の分析はハーバード大やカリフォルニア大学バークレー校でも行われた

論文では、この物質を構成する元素の組み合わせを「BeLaU(ベラウ:※ベリリウム(Be)、ランタン(La)、ウラン(U)の頭文字からの造語」と呼んでいて、「地球にも、月や火星、太陽系の他の自然天体にも見られない形」としている。ローブ氏はこのことから、「地球外の技術的な起源を反映しているのかもしれない」と、地球外文明によるUFOの可能性にも再び言及した。

ローブ氏「今後さらに太陽系外の物体は見つかる」

ローブ氏はこれまでFNNの取材に対して、IM1が「太陽の近くにある全ての星よりも速く移動した」として、IM1がエンジンなど、人工的な推進力を持っていた可能性を強く指摘している。今回の分析では、「異常な速度」に加えて「太陽系外から来た」という点が判明した形だ。

バーバード大で測定された「BeLaU」の組成テンプレート
バーバード大で測定された「BeLaU」の組成テンプレート

ただ、ローブ氏自身も太陽系外から来たと言っても、必ずしも地球外文明の宇宙船というだけでなく、惑星から出てきた自然な物体や、爆発した惑星の残骸の可能性も認めている。この点をローブ氏に直接聞いてみたところ、以下の返事が返ってきた。

「この物質が、人工物か自然物かはわからない。それを見分けるには、もっと大きな破片が必要だ。今のところ、さまざまな元素の濃度が、太陽系ではかつて見られなかったものであることだけがわかっている」

太平洋の海底から貝殻などに混じったIM1の破片を回収する様子
太平洋の海底から貝殻などに混じったIM1の破片を回収する様子

ローブ氏は今回の調査について、他の学者から「宇宙船」や「UFO」を結びつけることを批判されていることについては「データを否定するのではなく、自分たちのモデルを修正した方がよいだろう」と一蹴している。また、IM1の様な太陽系外から来た物質はさらに発見されるとの見通しを示した上で、「地球の軌道上に常時数百万個存在することを意味する。その中には、他の文明の技術的な宇宙ゴミもあるかもしれない」と強調した。今後さらに追加で物質の回収を行い、詳細なデータを採取するとしている。

国防総省は「UFOサイト」を立ち上げ

一方で、アメリカ政府にも大きな動きがあった。国防総省が8月31日に、いわゆるUFOなどの未確認空中現象を調査する専門組織AARO(全領域異常対策室)の公式ウェブサイトを立ち上げたのだ。ライダー報道官は記者会見で「異常現象の理解・解決に向けた取り組みに関する情報を国民に提供するため」と目的を強調した。

全領域異常対策室のサイトにはUFOの可能性がある動画などが公開されている
全領域異常対策室のサイトにはUFOの可能性がある動画などが公開されている

サイトを見てみると、これまで議会などに報告された資料や、UFOの可能性がある動画などが公開されている。

未確認航空現象の傾向をまとめ資料では日本周辺にも「ホットスポット」が確認された
未確認航空現象の傾向をまとめ資料では日本周辺にも「ホットスポット」が確認された

1996年から2023年までの未確認航空現象がまとめられた資料では、日本の近辺では朝鮮半島をすっぽり覆うような形で目撃情報が多発しているのが分かる。このホットスポットの地域は、他にアメリカの東・西海岸地域と、中東のペルシャ湾地域が集中しているので、単純にアメリカ軍が多くいて警戒レベルも高いため、目撃が増えやすいだけの可能性もある。細かい内訳も記載されておらず、詳細の発表が待たれるところだ。

アメリカでは議会を中心に、政府が機密情報などに指定して情報公開を行っていないことが、逆に国民の不安を招いていると批判の声が強まっている。また、もしUFOがいないとしても、政府が全く判別もつかない飛行物体が自国の空を飛んでいるとすれば、「安全保障上も大問題」ということだ。

国防総省によるウェブサイトの立ち上げも、こうした声に配慮した形とみられるが、今後どのような情報を一般に公開していくのかも注目される。ローブ氏など民間の学者や科学者たちからは、政府情報の公開の少なさによって、UFOや宇宙人の解明が遅れていることを批判する声もある。

ローブ氏は物質の回収作業に2億円以上の研究費を捻出した
ローブ氏は物質の回収作業に2億円以上の研究費を捻出した

様々な動きを見せてきた、UFO、宇宙人、未確認航空現象などの動きが今後どんな展開を見せるのか。引き続き注視していく。

(FNNワシントン支局 中西孝介)

中西孝介
中西孝介

FNNワシントン特派員
1984年静岡県生まれ。2010年から政治部で首相官邸、自民党、公明党などを担当。
清和政策研究会(安倍派)の担当を長く務め、FNN選挙本部事務局も担当。2016年~19年に与党担当キャップ。
政治取材は10年以上。東日本大震災の現地取材も行う。
2019年から「Live News days」「イット!」プログラムディレクター。「Live選挙サンデー2022」のプログラムディレクター。
2021年から現職。2024年米国大統領選挙、日米外交、米中対立、移民・治安問題を取材。安全保障問題として未確認飛行物体(UFO)に関連した取材も行っている。