アメリカの名門ハーバード大学で物理学教授を務めるアヴィ・ローブ氏は、宇宙人や地球外文明の可能性を探す「エイリアン・ハンター」として知られている。

ローブ教授は、2021年にハーバード大学で、太陽系外からやってきた隕石の検証や、上空での未確認の異常現象を調査する「ガリレオ・プロジェト」を設立した。最近では2017年10月ハワイの天文台が天体観測史上初めて太陽系外から飛来した恒星間天体と呼ばれる「オウムアムア」を発見し、宇宙船の可能性を示したことでも知られている。

「エイリアン・ハンター」の異名を持つハーバード大学のアビ・ローブ教授
「エイリアン・ハンター」の異名を持つハーバード大学のアビ・ローブ教授
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そのローブ教授が今回、地球外の文明によって作られた宇宙船の可能性がある物質を発見したことで、全米の注目を集めている。

約2週間にわたった調査は何を目的に行われ、一体どんなものが発見されたのか。ローブ教授に単独インタビューを行った。

太平洋で行われた調査には全米のメディアも注目した
太平洋で行われた調査には全米のメディアも注目した

“人工物”の可能性も?謎の隕石「IM1」

ローブ教授が注目したのは、2014年にパプアニューギニアから約100キロ離れた太平洋上に落下した「IM1(アイ・エム・ワン)」という隕石だ。

この隕石がなぜ注目に値するのかと言えば、一つ目は、信じられないスピードで太平洋に落下したことだ。二つ目は、この隕石の物質が非常に強靱であったことからだ。

ローブ教授の仮説では、太陽に引っ張られて減速するはずのこの隕石が、他の星よりも高速で移動していたことを挙げており、太陽系外から来た恒星間天体だとすれば、エンジンなどを積んだ「人工物」である可能性があるというのだ。また、物質が特定されれば、それが何かしらの文明によって作られたものかが判断できるという。

この事をガリレオ・プロジェクトの研究で発見したローブ教授たちは、18人のスタッフとともに、自身の研究費150万ドル(日本円で約2億1000万円)を投じて調査に乗り出した。

ローブ教授とスタッフは太平洋上で「IM1」の破片の回収作業を行った
ローブ教授とスタッフは太平洋上で「IM1」の破片の回収作業を行った

ローブ教授「他の文明による宇宙船かもしれない」

ローブ氏は2020年に科学技術に関する大統領諮問委員会の一員にも指名され、2011年から2020年までは、ハーバード大学天文学科の学科長を務めた。直前まで太平洋上で調査にあたっていたが、今回インタビュー取材の機会を得た。

単独インタビューに答えるアビ・ローブ教授
単独インタビューに答えるアビ・ローブ教授

――今回、太平洋に向かった目的を教えてください。

2014年にアメリカ政府のセンサーが、太平洋上空20キロで爆発した隕石を検出しました。この隕石は、太陽の近くにある全ての星のよりも速く移動していたのです。さらに、この隕石は鉄よりも強靭な物質強度を持っており、過去10年間にNASA(米航空宇宙局)が発表している272個の隕石よりも強靭でした。

可能性としては、我々がボイジャー計画で新しい地平線(領域)を開拓したように、他の文明が打ち上げた宇宙船かもしれないこの隕石は何らかの推進力(エンジン)を持っている可能性があります。また、もし放射性同位元素(※自発的に放射線を出す物質の能力)が見つかれば、それが何年前に飛来したものかを知ることができ、どの距離から飛来したかを知ることができます。そのため、私たちはこの隕石の遺物を見つけるために太平洋で探査を行うことにしました。そしてそれは成功し、50個ほどの小さな球体を見つけることができました。

ローブ教授たちが太平洋で回収に成功した“球体”
ローブ教授たちが太平洋で回収に成功した“球体”

ローブ氏は、重さ200キロの磁気を使用した“そり”を使用し、海底の表面を引きずって隕石の破片の回収を行ったという。その結果、水深2キロのあたりから、約50個の重さ1ミリグラムほどの球状の物体を発見したという。

海底から物質の回収作業を行う様子
海底から物質の回収作業を行う様子

――出発前には、この物体が「地球以外の文明によるもの」と言っていましたね?

太陽系の外から飛来したことは間違いありません。唯一の問題は、それが自然起源なのか人工起源なのかということです。私たちはそれを突き止めようとしているのです。私たちはすでに、ハーバード大学に天文台を建設して常時観測し、天体の特定も行っていた。そして、そのデータを人工知能ソフトウェアで分析し、自然物や、ドローン、気球、飛行機のような人間が作った物とは何か違うものがあるのかどうかを分類しようとしています。

「IM1」の破片を回収する作業は困難を極めた
「IM1」の破片を回収する作業は困難を極めた

――宇宙人によって作れたものなのか?

科学は証拠によって導かれるものです。この隕石が自然のものであることが、物質を分析することで判明する可能性もあります。その可能性を解明するためには、実際に見てみなければならない。もし地球外生命体の技術的な仕掛けが見つからなかったとしても、私たちの知識は進歩したことになります。だから、調査することが重要なのです。そして、これはエキサイティングなテーマであり、一般の人々も大いに関心を寄せています。

今回の調査は「宇宙の見方が変わる可能性」

また、ローブ教授には自身が立ち上げたハーバード大学の「ガリレオ・プロジェクト」との関係や、今後の調査の見通しも聞いた。

ローブ教授が立ち上げたハーバード大学の「ガリレオ・プロジェクト」
ローブ教授が立ち上げたハーバード大学の「ガリレオ・プロジェクト」

――ハーバード大学で「ガリレオ・プロジェクト」も立ち上げているが、この調査もその一環なのか?

そうです。ガリレオ・プロジェクトには3つの部門があります。1つは太陽系外からやってきた隕石を見て、その中に宇宙船があった可能性があるかどうかを調べます。もう1つは、地球に衝突しない物体を探すことで、2017年に報告された「オウムアムア」と呼ばれる天体は非常に奇妙で、平らで、彗星の尾を引くことなく、不思議な力によって太陽から押し出されました。3つ目の側面は、未確認の異常現象を探すことです。これらの天体はアメリカ政府も解明できていないもので、私たちはその性質を解明しようとしています。

ローブ教授も回収した物体を分類する作業を連日を行った
ローブ教授も回収した物体を分類する作業を連日を行った

――この発見が次のステップにつながる可能性は?

宇宙における私たちの見方が変わるでしょう。というのも、私たちの宇宙の中には、知的文明のクラスで、さらに賢い子供たち(生命体)がいるかもしれないことに気づくからです。もし彼らが我々よりはるかに優れた技術を持っていれば、我々は彼らから学ぶことができます。

天の川銀河だけでも、太陽と同じような星が何百億個もあるのですから。もし私たちの目の前に到着した宇宙船が見つかれば、その文明は私たちよりもはるかに進んでいた可能性が高いです。

――あなたは地球外の文明(宇宙人)がすでに地球に来ていると思うか?

確かなことはわかりません。可能性はあります。例えば、オウムアムアのような、太陽系の隕石とは異なる性質を持っていた最初の恒星間天体についても十分な興味をそそられます。これらは証拠にはならないですがが、より良いデータを集めるには重要です。このデータが何を示すかによって、その証拠が何を示すかがわかります。調べる価値はあります。

50個ほど回収された「謎の物体」。分析結果は7月中にも発表される予定
50個ほど回収された「謎の物体」。分析結果は7月中にも発表される予定

ローブ教授は7月末までには論文をまとめ、回収した球体状の物体について最終報告を発表する予定だ。インタビューでも息荒く、今回の調査についての全容を話してくれていた。

アメリカメディアもこぞって、この調査結果を報じているが、一体どのような最終報告がなされるのか。引き続きローブ教授とガリレオ・プロジェクトの動きを追いかけたいと思う。

(FNNワシントン支局 中西孝介)

中西孝介
中西孝介

FNNワシントン特派員
1984年静岡県生まれ。2010年から政治部で首相官邸、自民党、公明党などを担当。
清和政策研究会(安倍派)の担当を長く務め、FNN選挙本部事務局も担当。2016年~19年に与党担当キャップ。
政治取材は10年以上。東日本大震災の現地取材も行う。
2019年から「Live News days」「イット!」プログラムディレクター。「Live選挙サンデー2022」のプログラムディレクター。
2021年から現職。2024年米国大統領選挙、日米外交、米中対立、移民・治安問題を取材。安全保障問題として未確認飛行物体(UFO)に関連した取材も行っている。