民間軍事会社「ワグネル」のトップ、プリゴジン氏が自家用ジェット機の墜落により死亡してから、まもなく1週間。

生前に撮影されたインタビュー動画のプリゴジン氏(ワグネル関連のSNSより)
生前に撮影されたインタビュー動画のプリゴジン氏(ワグネル関連のSNSより)
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生前に出版した絵本が異例の高値を付けた他、遠く離れたアフリカで追悼の声が上がるなど、死してなお世界各地に影響力を及ぼしている。

プリゴジン氏の絵本が異例の高値に

プリゴジン氏は、民間軍事会社「ワグネル」を立ち上げる前、レストランなどを経営する実業家だった。プーチン大統領と近い関係だった事から「プーチン大統領の料理人」との異名を持つほどだった。

かつては「プーチンの料理人」と呼ばれ近しい関係だった
かつては「プーチンの料理人」と呼ばれ近しい関係だった

プリゴジン氏が率いるワグネルは、ロシアによるウクライナ侵攻の最前線にいたが、2023年6月にはプーチン大統領に反旗を翻し、モスクワに進軍を開始した。

プーチン大統領は「裏切りだ」と反発したが、ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲裁により、モスクワへの進軍は停止。こうした経緯から、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、「飛行機の撃墜はプーチン氏の命令でほぼ間違いない」と分析している。

プリゴジン氏が家族とともに出版した児童書 Avitoより
プリゴジン氏が家族とともに出版した児童書 Avitoより

そんなプリゴジン氏は、自分の子供2人とともに、20年以上前に1冊の児童書を出版していた。タイトルは「インドラグジク」。巨大な劇場のシャンデリアの中で家族と暮らすこびとが、人間の世界を冒険するおとぎ話で、2002年に出版されたという。

絵本は1000部発行され、ロシアの美術館や博物館の館長や有力政治家らに配られたが、一般販売は、ごく一部に限られた。

児童書に掲載されている若き日のプリゴジン氏 Avitoより
児童書に掲載されている若き日のプリゴジン氏 Avitoより

絵本の中には、若き日のプリゴジン氏の写真も掲載されている。

プリゴジン氏が死亡したことで、この絵本への注目が一気に高まり、フリーマーケットサイトでは、一時450万ルーブル、約680万円もの高値を付けたのだ。

ただ現在は、販売者がより高く絵本を売ろうとしているためか価格がつかず、「要交渉」となっている。

モスクワではプリゴジン氏へ献花する人の姿も 
モスクワではプリゴジン氏へ献花する人の姿も 

一方ロシアの首都・モスクワ中心部では25日、自然発生的に集まった市民たちが、プリゴジン氏を追悼した。プリゴジン氏の写真の近くには多くの花が手向けられた。

プーチン大統領から見れば「裏切り者」だが、支持する市民はいるのだ。

アフリカで「私はワグネル」Tシャツも

プリゴジン氏の影響力は、遠くアフリカにも及んでいるようだ。

27日公開されたプリゴジン氏がアフリカで撮影したとされる写真 ワグネル関連のSNS
27日公開されたプリゴジン氏がアフリカで撮影したとされる写真 ワグネル関連のSNS

ワグネルに近いSNSは27日、柔らかな表情でアフリカの人たちと写真に収まるプリゴジン氏の写真を掲載し、「アフリカの住民はプリゴジンに感謝している」と主張した。

プリゴジン氏は生前、アフリカでも活動していた。

8月21日に公開された動画 ワグネル関連のSNS
8月21日に公開された動画 ワグネル関連のSNS

死の直前に当たる21日に公開された動画では、プリゴジン氏はアフリカにいることを明らかにしたうえで、「アフリカをより自由に。アフリカの人々に正義と幸福をもたらす」と宣言していた。

さらにワグネルに近いSNSは、プリゴジンがアフリカの市民から感謝と尊敬を集めているとして、もう1枚の写真を掲載した。

Tシャツにはフランス語で「私はワグネル」と書かれている ワグネル関連のSNS
Tシャツにはフランス語で「私はワグネル」と書かれている ワグネル関連のSNS

その写真についてワグネル側は、「中央アフリカ共和国の大統領顧問が、フランス語で「私はワグネル」と書かれたTシャツを着て敬礼している」と説明している。アフリカで流行しているデザインだと主張しているが、真偽は定かでは無い。

ワグネル側によると、フィデル氏は「ワグネルが来てくれたことで、中央アフリカの民主主義は救われた。プリゴジンは(中央アフリカの)民主主義を救ったのだ。中央アフリカは今、喪に服している」と述べているということだ。

国際取材部
国際取材部



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