ファッション先進国フランス・パリの老舗デパートが、高級ブランドの古着やヴィンテージ品を専門に扱う売り場を設け、注目を集めている。古着マーケットの拡大に伴い、若年層の取り込みを競い合う老舗デパートの最前線を取材した。

ギャラリー・ラファイエットの古着専門売り場『Le(Re)Store』(ル・リストア)
ギャラリー・ラファイエットの古着専門売り場『Le(Re)Store』(ル・リストア)
この記事の画像(11枚)

定番のバーバリーコートもお手頃価格で

パリ・オペラ座近くにある2大老舗デパートの一つ、ギャラリー・ラファイエットの3階婦人服売り場の一角にある「Le(Re)Store」(ル・リストア)。一見ではわからないが、リユース(Reuse)、リセール(Resale)、リサイクル(Recycle)をキーワードに展開する古着専門売り場である。しかも高級ブランドの商品が惜しげもなく並べられている。なかにはバーバリーの定番トレンチコートも。

お値段は455.59ユーロ、日本円で約7万2000円だ。最新モデルが数十万円することを考えるとお得なことは間違いない。タグには「このヴィンテージの宝物はあなた自身と同じようにオンリーワン(unique)です」という言葉が添えられている。

「デパートで古着」画期的な第一歩

古着に特化したこの売り場が開設されたのはコロナ禍の2021年9月。デパートとしては初の試みで、オープニングセレモニーに駆けつけたオリヴィエ・グレゴワール責任ある社会的連帯経済担当副大臣は「この取り組みは、顧客がファッション製品のリユースやリサイクルを通じて、責任ある消費をすることを促す、ファッション界で循環型経済を推進するショーケースになる」と大いに評価した。

通路の上にも「リスタート」、「リモデル」、「リサイクル」、「リフレッシュ」、「リシンク」と“再び”を意味する「RE」を使ったワードが並べられ、さりげなく顧客に「環境を意識した消費行動を考えましょう」と呼びかけている。

イブサンローランのワンピースは299ユーロ。約4万7500円
イブサンローランのワンピースは299ユーロ。約4万7500円

この売り場にはギャラリー・ラファイエットがパートナーシップを結んだ10を超えるヴィンテージ販売で既に実績のあるショップが出店していて、顧客は不要になったアイテムの販売を委託することもできる。

ライバルのプランタンはフロア丸ごとで対抗

一方、お隣の「プランタン」は1960年代から公開されていなかった最上階のフロアを丸ごとヴィンテージフロアとして改装した。その名も「7階の空(Le 7ème Ciel)」。

「プランタン」のヴィンテージ&古着専門フロア「7階の空(Le 7ème Ciel)」
「プランタン」のヴィンテージ&古着専門フロア「7階の空(Le 7ème Ciel)」

屋根から太陽の光が差し込むキラキラした空間はゴージャスそのもの。とはいえ、ブランドごとに仕切られているでもなし、ショップの店員さんが近寄ってくることもないので、ゆっくり見ることが出来る。

アクセサリーも100ユーロから200ユーロ前後とお手頃な価格設定。写真のガラス棚の後ろに見えているテーブルは買い取りを希望する人たちが不要品を持ち込むカウンター。持ち込まれた品物は24時間以内に査定され、売り手はプランタンで使えるギフトカードとして引き取り金額を受け取る仕組み。デパート側は手持ちの商品が充実し、その対価で買い物はしてもらえ、といわば“二度美味しい”ビジネスになっている。

エルメスのスカーフもバッグも

こちらにもラファイエットと同じく、気鋭のヴィンテージショップが出店していて、品揃えも豊富だ。こちらのエルメスのスカーフは295ユーロ(約4万6900円)。

 
 

ギャラリー・ラファイエットがヤングファッションまで幅広く取り扱っているのに対して、プランタンの方はバッグなどのファッションアクセサリーも含めて、高級志向が強い印象だ。

こちらのオープンはギャラリー・ラファイエットに遅れることわずか1週間。競うようにこの2大老舗デパートが、こうした古着専門売り場開設に相次いで舵を切ったのは、若い顧客を取り込みたいという思惑と、拡大する古着マーケットを無視できなくなったという背景がある。

“百貨店は定価”が当たり前の日本に住んでいる私たちにとっては、信頼性の高いデパートで、手の届く価格の高級ブランド商品を探せる絶好のチャンス。

普段は敬遠してしまいそうなパーティードレスなども、パリから持ち帰れば楽しい思い出になりそうだ。

勝川英子
勝川英子

フジテレビ国際局海外広報担当。
報道時代にパリ支局長を経験。
2016年にフランスの国家功労勲章を受章。
2003年からフランス国際観光アドバイザー。
幼少期を過ごしたフランスをこよなく愛し、”日本とフランスの懸け橋になる”が夢。