「ルイ・ヴィトン」のトランクライブラリーに、「ディオール」の壁一面のホワイトドレス。大阪万博のフランスパビリオンはうっとりする空間の連続だ。しかもロダンの彫刻があちこちに散りばめられ、まさにアートの国フランスへの旅に誘われる。
フランスパビリオンは東口ゲートから入り、万博のシンボルである大屋根リングの下をくぐり抜けると目の前、という好立地だ。

その外観はまるで大きな劇場のようで、ピンクゴールドの階段が光輝き、そこには木製の大屋根リングが映し出されている。

開会はリボンを「つないで」宣言
その階段周りで13日に行われた開館セレモニーには、パビリオンのアンバサダーを務める女優のソフィー・マルソーさんと柔道家のテディ・リネールさんが本国から駆けつけた。

フランスパビリオンのテーマは“愛の賛歌”。そこで、開会も、テープをカットするのではなく、「赤い糸」の運命的な結びつきを日仏の絆に見立て、「赤いリボンの手渡し」という粋な演出で宣言された。

ソフィー・マルソーさんは「色々と困難なことが起きているこの世の中において、フランス館の愛というテーマは理想主義的かもしれませんが、未来に向けてとても必要なことだと思います。愛は他の人を気遣う、ということですから」と語った。

パビリオンはメインパートナーのLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのブランド力を全面に押し出した展開になっている。
ヴィトンのトランクライブラリー
パリのロダン美術館所蔵の彫刻家オーギュスト・ロダンのブロンズ像「合わさる手」のバックには、光るルイ・ヴィトンのトランクがうずたかく積まれていた。

トランクの開いた部分にはベージュのライトにハンガーが浮き上がっていたり、卓越した職人技をたたえる映像が流れている。天井も床もガラス張りという効果もあって、光るトランクのライブラリーに包まれたかのような感覚に陥る。このインスタレーションの設計を手がけたのは日本人建築家の重松象平さん。

もう一つのヴィトンワールドでは、トランクが組み合わさった巨大な球体がくるくると回転し、そこに富士山や宇宙などの映像が投影されている。旅行かばんの専門店としてスタートしたメゾンの原点である“旅”を強く意識した空間だ。

こちらのビデオ映像はアーティスト真鍋大度さんの作品。実はどのコーナーも日本人アーティストたちとコラボレーションしている。日本とフランスの絆を示したい、という背景からだ。
ディオールは壁一面の白いトワル
ディオールのコーナーはトリコロールのジャケットから始まる。赤、白、青の3色はフランスの誇りを感じされるカラーだ。

一転して、その先には真っ白な世界が広がる。シルエットのスケッチを立体的に表現した約400点のホワイトのトワルが実寸大から小さなものまで、壁一面に飾られている。こちらもヴィトンと同じく、職人技へのオマージュの意味が込められている。

中央部には、ディオールのドレスを纏ったモデルたちの生き生きとしたカラー映像が流されており、ファッションショーに参加したような気分にも浸れる。

白いバッグの展示のところに建築家の妹島和世さんの名前を発見。妹島さんは日本人建築ユニットSANAAとして、東京・表参道にあるディオールの旗艦店の設計し、その縁もあって、2024年にレディ・ディオールのコレクションに関わったのだ。

セリーヌは日本の漆塗りとコラボ
セリーヌは、石川県輪島市に拠点を置き、漆芸の技術をアートに進化させている日本のアーティスト集団の彦十蒔絵とタッグを組んだ。

メゾンのエンブレム「トリオンフ」が、松竹梅の模様の漆塗りアートになった。セリーヌの展示は5月12日までで、9月1日からは同じグループのジェリーブランド「ショーメ」が登場する。

フランス政府を代表して、このセレモニーに出席したローラン・サンマルタン貿易担当大臣は「このパビリオンには、卓越した職人技の伝統と革新性、アール・ド・ヴィーヴル(=自分らしく、美しく豊かに生きる)など、フランスのすべてが散りばめられています」と胸を張った。

ちなみにトリコロールカラーに彩られるフランス館とウッディな大屋根リングのライトアップのマッチした夜景は実に素晴らしいので、夜までいらっしゃる方にはおすすめです。