秋田・羽後町の「西馬音内の盆踊」は、2022年11月にユネスコ無形文化遺産に認定されてから初めての夏を迎えようとしている。4年ぶりの通常開催となる今回、祭りを支える町の人々も準備に奮闘している。

ベテラン踊り手が作る“盆踊りグッズ”

盆踊り愛好家グループ「北の盆」に所属する阿部恭子さんはベテランの踊り手だ。

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国内外の公演に参加したり、踊り手の指導をしたりと精力的に活動を続けている。その傍ら、祭りを盛り上げようと盆踊りグッズの制作・販売も手がけている。

成人女性が身に着ける「端縫(はぬ)い」と呼ばれる衣装をモチーフにしたブローチや…。

未成年の女性が身に着ける彦三頭巾(ひこさずきん)や藍染めの浴衣をイメージした巾着は、衣装になじむデザインで、貴重品を収納できるアイテムだ。

“体の動き”と“模様の見え方”を両立

阿部さんは端縫い衣装の生地なども仕入れていて、衣装作りの相談を受けることもある。この日の午後、阿部さんは端縫いの生地を持って、いそいそと出かけていった。

打合せの相手は、20年以上「西馬音内の盆踊」の衣装を製作している佐藤ミサ子さん。佐藤さんが最初に作った衣装を阿部さんに見せに行った時から、2人の交流が始まった。

今では、客から依頼を受けた阿部さんが、生地やデザイン案などをまとめて佐藤さんに注文し、佐藤さんが衣装を作るといった連携プレーがおなじみとなっている。

端縫い衣装は、何種類かの絹の生地を左右対称に縫い合わせ、配色にこだわり、洗練された魅力を放つ。

今回のポイントは、袖の後ろに花の模様を入れること。
滑らかで妖艶な手の動きが特徴の「西馬音内の盆踊」は、体の動きによって模様がどのように見えるかを意識して衣装を作る。腕が動くたびに花の模様が見え隠れすることで、踊りに華やかさと彩りが添えられるのだ。

すべてが手縫いで、高度な技術が必要な端縫いの衣装作りだが、70年近い和服裁縫の経験を持つ佐藤さんの技術に、阿部さんは全幅の信頼を寄せている。

うつわ花押・阿部恭子さん:
完成した衣装を客に渡したら、見た瞬間、怒られた。「どうしてですか?」と聞くと「これミシンで縫いましたね」と言われた。それほどに佐藤さんは上手なんです

「西馬音内の盆踊」は長時間踊り続けるため、衣装の脇の部分が切れてしまうことがあるそうだ。佐藤さんはそのことも考えて、脇の部分に布をあてて、しっかりと補強してくれる。

うつわ花押・阿部恭子さん:
へりを付けてくれるんですよ

西馬音内の盆踊 衣装製作・佐藤ミサ子さん:
そうすれば切れないの、長年使っても

西馬音内の盆踊 衣装製作・佐藤ミサ子さん:
阿部さんの指導がなければ、ここまではできなかった。別の素材を使ったこともあるが、それは駄目だ!とはっきり言ってくれる

ユネスコ登録で「もっと盆踊りが盛んになる」

西馬音内の盆踊を通じて絆を深めている2人にとって、ユネスコ無形文化遺産への登録はどう映ったのだろうか。

うつわ花押・阿部恭子さん:
私たちの生きているうちにユネスコ登録という経験ができて、すごく感動した

西馬音内の盆踊 衣装製作・佐藤ミサ子さん:
これからもっと盆踊りが盛んになるなと面白い気持ちになった

佐藤さんにとって、端縫い衣装を作り続ける原動力とは…?

西馬音内の盆踊 衣装製作・佐藤ミサ子さん:
完成品を見ればホッとする。30代の時は少し踊っていたので、それを思い出して手を動かしたくなる!

(秋田テレビ)

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