ラーメン業界の一大勢力となっている「ラーメン二郎」。
その直系店で10年も修行しながら、いわゆる「インスパイア系」として開業した東京・世田谷区の「らーめん玄」。

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その店主に、なぜ直系の支店として開業しなかったのか、聞いてみた。

「ラーメン二郎」直系で独立するための“掟”

Q.修業先の店主・Bさんとも、独立については話されたんですか?
自分はX支店での修行がすごく長かったし、それまでそんなに長く働いた人もいなかったんです。だから、お店にとっては、私がいるほうが回りやすい状況だったかもしれません。それもあって、なかなか具体的にそういう話はしにくかったですね

Q.独立を考えられてから、実際の独立までは3年ほどありますね?
準備に結構時間がかかりましたね

Q.それから、これが一番お伺いしたかったことなんですが、「二郎」直系の支店で長く修行されましたが、独立はいわゆる「インスパイア系」として開業されました。それはなぜだったんでしょうか?
「ラーメン二郎」の支店を出させてもらうためには、支店での修行の後に、三田本店で麺を茹でたり、麺上げしたりといった仕事をして、総裁のAさんに見て頂き、OKをもらわないとなりません。弁護士の先生を入れて、きちんとした契約も結ぶようです

「ラーメン二郎」直系の支店を出させてもらうためのキャリアパス、“掟”があり、それをクリアすることが絶対条件だという。

Q.鈴出さんは、三田本店で働かれたんですか?
自分は、その時点で45歳を越えていました。家族もいました。
本来は三田本店で働くべきだったと思いますが、自分は独立までこれ以上の時間はかけられないと感じていました。
それで、三田本店で働くことはせず、すぐに独立の道を選びました。
不義理をした面もあるかもしれません。ただ、支店での修行から直接、独立開業するためには、そうするしかなかった。
それが、私が「ラーメン二郎」の支店ではなく、インスパイア系の店で開業した理由です

自らもいずれ直系の支店での独立を考え、10年という長い年月を修行。
しかし、その長い時間の中で、自分を取り巻く状況も変化した。
数年間考えた末に、彼は「二郎系」「インスパイア系」として独立する“生き方”を選択した。

「ラーメン二郎」の“のれん”が持つ無敵の集客力

Q.本来は、「ラーメン二郎」の直系支店としての独立を考えられていた?
それは、もちろん「ラーメン二郎」の“のれん”を頂けるのが一番です。
もう無敵の集客力ですから、「ラーメン二郎」って書いてあれば

「ラーメン二郎」三田本店

Q.直系店に修行に入っても、途中で挫折する人も多いんでしょうか?
それはあると思います。支店を出したいからって、全部が全部通るわけではない。総裁Aさんのジャッジもある

私自身、まだ「ラーメン二郎」が港区三田にしかなかった学生時代から何度も足を運んでおり、その味はしっかりと記憶している。

Q.個人的には、「ラーメン玄」は「二郎」直系の味に近い、再現度がかなり高いと感じます。ただ、修行されたX支店では、麺を茹でたり盛り付けは、店主がされるということでした。
鈴出さんのラーメンを作る技量は、どうやって身につけられたんでしょうか?

Bさんは、言葉でああだよ、こうだよって言うスタイルではなかったですね。やっぱり素材を見たり、味見をしたりしながら、少しずつ覚えていきました。

Q.4年前に、このお店を開業されて、当初はお客さんの入りはどうでしたか?
「X支店にいた人がやってるらしいよ」的な情報で来て頂いたり、そういう人たちがネットにいろいろ発信してくれたり、そういうことには助けられました。

一年間の格闘の末、完成した“味”

Q.ラーメンは、最初から高い完成度で作れましたか?
いや、やっぱり時間がかかりました。一年ぐらい格闘しました。
お客さんが来て、最初やっぱり感想を聞いたり、いろいろ言ってもらったりする中で、少しずつ変えていったという感じですね、

Q.一番苦労されたのは、どういった点でしょうか?
油の下から、こうグッと醤油の風味というか、パンチを感じるのが、「ラーメン二郎」の特徴だと思うんですが、そこが弱いと良くない。そういったあたりですね

麺は店内で自家製麺
麺は店内で自家製麺

Q.麺は歯ごたえがすごくあると感じるんですが、自家製麺されてるんですよね
そうです。店の中で製麺作業もしてます。1日100食分くらいは製麺しますね。うちの店で一番味わってほしいのは、麺なんです。
X支店でも自家製麺していて、麺を切る作業は私がしてたんですが、麺の切り方については、店主のBさんから褒められてました

Q.「二郎」「二郎系」のトッピングとしては、野菜・にんにく・脂というのが一般的で、もちろんこちらでも対応されてますが、「ラー油」も提供されてますよね
実は修行していたX支店で、店主のBさんとラー油をかけて食べたことがあって、「うまいですね」となったのがきっかけです

Q.でも、X支店ではラー油は提供してないですよね?
そうですね。結構味変するし…自分は辛いものが好きなので出してます

Q.今、いろいろなものが値上がりしていて、ラーメンも「並1杯1000円」時代になりつつありますよね。価格については、どのようにお考えですか
まあ、もうちょっと値上げしないとしんどいかなって言う感じではあるんですけど…しばらくは今のまま頑張ろうかなと

Q.お客さんの特徴はありますか?やはり男性の比率がかなり高いですか?
いや、うちは女性のお客さんも結構来ますね。
それからみんなマナーがいいというか、並び方の決まりなんかも、割とみんな素直に真面目に守っていただいてます

行列ができることも多く、近隣の店に迷惑をかけないため、「並び方」にはかなり注意を払ってきたのが、店頭で見て取れる。

Q.今、「ラーメン二郎」直系、インスパイア系含めて、どんどん店が増えている印象があります。「商売敵」が増えてる感じがされてますか?
いろいろ店が増えていくのは、いいことだと思ってます。「二郎系」というジャンルの認知度が上がっていくので

Q.今後なんですけど、メニューにこれまでとは違うラーメンを加えてみようとか、餃子などのサイドメニューを出してみようとか、そういったお考えはありますか?
僕はこれしかできないので、考えてません。それに、それって、そんな簡単なことじゃないと思うんですよね、たぶん。
だから、僕はこれしかできなので、これを続けていこうと思ってます

「ラーメン二郎」インスパイア系 調理法を全て公開!(後編)

「らーめん玄」店主・鈴出さんに見せてもらった、調理のすべて。いよいよ完成までを見ていこう。

野菜(もやしとキャベツ)は専用の寸胴で煮る。
野菜(もやしとキャベツ)は専用の寸胴で煮る。

トッピングとして、「マシ(増し)」や「マシマシ」にも応じている野菜、もやしとキャベツ。
こちらも寸胴で茹でていく。

丼に、味の「決め手」の1つになる醤油を。「辛め」希望の客には、盛り付け後に醤油を足す。

そこにスープを加えていく。

いよいよ「麺上げ」。スープと醤油が注がれている丼へ。

温めておいたチャーシューと野菜を盛り付ける。

150円を足せば、チューシューは「ダブル」の量に。
野菜の「マシ」のオーダーは無料。

こちらも無料のトッピング、「にんにく」。

甘みも感じる「アブラ」。人気のトッピングだ
甘みも感じる「アブラ」。人気のトッピングだ

「ラーメン二郎」「二郎系」ではおなじみのトッピング、「アブラ」。

もともとかなりのボリュームだが、「アブラ」を加えると、さらに食べ応えを感じられる。

「ラーメン玄」オリジナルのトッピング、「ラー油」は別皿で提供される。
これで、「小ダブル・野菜・にんにく・アブラ・ラー油」の完成!

やはり、「ラーメン二郎」で10年以上も修行したというバックボーンを感じる完成度だった。

「らーめん玄」 東京都世田谷区北沢2-28-7(水曜定休)

小林剛浩
小林剛浩

慶應義塾大学経済学部卒業後、フジテレビジョン入社
情報番組、報道番組制作等を経て、FNNプライムオンラインを担当