安倍元首相の妻、昭恵さんが7月17日から20日まで、3泊4日の日程で台湾を訪問した。滞在中には蔡英文総統や頼清徳副総統と面会したほか、台湾の民主化を進めた李登輝元総統の墓参りも行った。また、2022年9月に台湾有志の寄付によって建てられた安倍元首相の銅像とも初対面した。
昭恵さんは今回の訪台について「台湾の人々にお礼を伝えるのが目的のひとつ」と話し「日台の関係をより一層良好なものにするために、台湾に伺いたいと思っていた」と述べた。
新しい素晴らしい世の中を作って頂きたい
7月17日、多くの台湾メディアが待ち構える中、昭恵さんは台北松山空港に到着した。昭恵さんは報道陣に会釈をしたあと出迎えた車に乗り込み、最初のイベントである歓迎会に出席し「台湾安倍晋三友の会」の奨学金を受けている日本人留学生と面会した。
昭恵さんは日本人留学生に対して、幕末の時代に活躍した吉田松陰の話を引き合いに出しながら「吉田松陰が亡くなったあとも弟子たちが吉田松陰の死に怯むことなく奮起したように、主人が亡くなったあと、若い方たちに奮起をして頂いて、明治維新を起こしたように新しい素晴らしい世の中を作ってほしい」と語り掛けた。
主人の魂はここに来て感謝している
訪台2日目、昭恵さんは台湾南部の高雄市にある安倍元首相の銅像へと向かった。安倍元首相と等身大のこの銅像は、台湾の有志による寄付によって2022年9月に建てられたものだ。
この日は猛暑にも関わらず、会場には200人を超える人々が昭恵さんの到着を待っていた。銅像と初めて対面した昭恵さんは、目を潤ませハンカチでしきりに涙を拭っていた。
昭恵さんは大きな白い花束を銅像に供えたあと、会場を訪れた人たちに向けて「主人は本当に台湾のことを愛していて、コロナが落ち着いたら台湾を訪問することを楽しみにしていました。今回、残念ながら私1人で来ることになりましたが、きっと主人の魂は一緒にここに来て皆さんに感謝していると思います。国葬の前に、亡くなってすぐに銅像を建てて頂いたことが驚きとともに大変嬉しく、台湾の皆さんに感謝しております」と感謝の言葉を述べた。
訪台3日目の午前、昭恵さんは台湾の民主化を進め、2020年に亡くなった李登輝元総統の墓参りを行った。
昭恵さんは安倍元首相と李氏が生前に交流があったことに触れた上で「主人は大変、李登輝先生のことを尊敬しておりました。日本人以上に本当に日本のことを良くご理解頂き、日本のことを愛して頂き、日本の精神をしっかりと受け継いでいって頂いている李登輝先生から、数々のご薫陶を受けてきました。今、先生と共にどこか上の方から心配しながらこの地上を見下ろし、そしてこの日台の関係、また世界の平和のために、これから一緒に仕事をして頂けるのではないかなと思っています。これからの日台関係、地域の安定が図られますようお守り頂ければと思っています」と述べた。
主人の遺志をついで日台関係に寄与していく
訪台3日目の午後には、台湾総統府で蔡英文総統と面会した。蔡総統は昭恵さんの台湾訪問を歓迎し「これまで安倍元首相が台日関係に払った努力は、昭恵さんや台湾と日本の関係者、市民の努力によって、さらに実りある成果を生み出せることを信じている」と述べた。また安倍元首相が「台湾有事は日本有事」と発言したことにも触れ、感謝を伝えた。
一方、昭恵さんからは「今回の台湾訪問を通して、日本と台湾の深い絆が長い間続いてきたということを改めて実感させて頂きました。私自身も主人の遺志を継いで、日本と台湾のために何かしらできることを尽力していきたいと思っています」と安倍元首相が亡くなったあとも、日台関係に寄与していくことが伝えられた。
3泊4日の日程で台湾訪問を終えた昭恵さんは帰国後「今回、台湾に来て本当によかった。今の日本が学ばなければいけないこと、色々と台湾の方から教わることもあった。主人が台湾に寄せいていた強い思いを台湾の方々がしっかりと受け止めて下さっていると感じた」と話した。
安倍元首相が亡くなってから初の海外訪問となった今回の訪台は、昭恵さんにとって台湾の人々の日本に対する友好的な姿勢や、大きな期待を感じさせることになった。
「主人の遺志を継ぐ」と語る昭恵さんは、今後、安倍元首相が生前に重視していた日台関係の更なる発展を目指していくことになるだろう。
（FNN北京支局 河村忠徳）
