甚大な被害をもたらす豪雨災害。この夏も全国で災害級の大雨が相次いでいる。実際に大雨に遭遇した場合、どのタイミングでどこへ避難すればよいのか。決断に必要な情報を得る手段について伝える。

「これまでにない恐怖の体験だった」

2022年8月3日、山形県内で降り続いた大雨。

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記者:
危ない、お父さん危ないから家にいた方がいいですよ

この時、置賜の上空で、同じ場所に長時間雨が降り続く「線状降水帯」が発生。この日1日で降った雨の量は、飯豊町高峰で292mm、小国で287mm、米沢で239mmなど、いずれも観測史上最大の記録的な大雨となった。

日が暮れた午後7時15分に山形地方気象台は、県内で初めてとなる「大雨特別警報」を発令。道路は各地で冠水し、自宅に帰れなくなる人が続出した。

リポート:
今コンビニの駐車場に避難している方々に話を聞こうと思って向こうに向かおうとしていますが、道路が私の膝ぐらいまで冠水していて、流れも強く道路を渡るのは危険だと思いここで止まっています。向こうに渡るのはできない状態です

県内では、長井市や川西町など17の市と町の5万世帯・計15万人に「避難指示」が出された。

避難した人:
初めてだったので、身の危険を感じた。これまでにない恐怖の体験だった

避難した人:
大雨の予報はあったが、まさかこんな大雨…120mmにもなると思っていなかった

この大雨で、県内では現在も1人が行方不明のまま。

床上浸水など被害を受けた建物は1,671棟に上り、道路や橋・農作物などの被害総額「480億円」は、県内の水害としては過去最大の被害となった。

自分でできる身近な対策とは

そして2023年も、7月に入って九州や北陸・秋田でも大雨が相次ぎ、全国で計8人が死亡・3人が行方不明となっている。頻発する豪雨災害から命を守るため、「私たちが自分でできる身近な対策」は何だろうか。

山形地方気象台・小林亮太水害対策気象官:
そこで活躍してくれるのが、「キキクル」というサービスになる。命を守るには遅くても警報が出たタイミングでキキクルで、「うちは大丈夫か」と見てもらう必要がある

「キキクル」とは、気象庁が提供している防災ホームページの愛称。インターネットの検索ページで「キキクル」と打ち込むと、一番最初に表示され見ることができる。

「キキクル」では、大雨にともなう「洪水」や「土砂崩れ」など、数時間先までの雨量や水の流れを予測して、常に“最新の危険な場所がどこか”地図上でひと目でわかる。

「キキクル」の強みは、私たちの自宅周辺の「災害の起こりやすさを個別に考慮」して、常に的確な危険度を示してくれる点だ。

山形地方気象台・小林亮太水害対策気象官:
災害の起こりやすさは、その場所・その場所で違う。例えば洪水の可能性を考えた場合、家の近くに堤防が高さ10メートルあると、なかなか洪水は起きにくい。一方で川が細くて堤防が全然ないような川では、少しの雨でもすぐにあふれそう。地域ごとの防災設備・地形の差で、災害の起こりやすさが異なることに留意してほしい

気象庁提供「キキクル」の使用方法

では実際に大雨の場合、「キキクル」をどのように活用すればよいのか。2022年8月3日の大雨のデータを使いながら教えてもらった。

山形地方気象台・小林亮太水害対策気象官:
例えば白鷹町の大鮎貝川の周辺にいた場合、キキクルを見たらこういう状況になっていたとします

「キキクル」を使って避難する際に一番大事なことは、「地図上の色の暗い場所は危険なので、色の明るい安全な場所に逃げること」。河川の色分けは、大雨洪水警戒レベルに準じている。

平常時は「水色」で、「黄色」「赤」の順に危険度が増し、「紫」は避難指示が出されるレベル。最も危険な「黒」は、河川の氾濫などすでに災害が発生したことを意味する。白鷹町周辺の地図を見ると、南や西の方面は、赤や紫など色が暗く、危険であることがわかる。

山形地方気象台・小林亮太水害対策気象官:
自宅の下流は赤、上流に至っては紫(避難指示レベル)。まだ洪水が治まっておらずこれから危険度が上がるおそれがある。そういう場合、「まず川から離れる」が大前提。地図を広く見ると、北の方は降水の中心から離れていて危険度は少し低い。できる限り北へ避難を

「キキクル」の情報は10分ごとに更新される。避難ルートが安全かどうか、常に最新の情報を見ながら避難することで、被害に遭う可能性を低くできるという。

では、もし避難しようとした時に近所の川がすでに最も危険度が高い「黒」になっていた場合、どうすればよいのか。

山形地方気象台・小林亮太水害対策気象官:
その場合はそこから逃げられない状態。万が一、本当に黒表示の川の近くに住んでいるなら、「垂直避難」しか避難行動はできない。垂直避難しても命が助かる保証は100%はないが、確率論でいえば1階にいるよりは2階の方がまだマシなので、速やかに比較的安全な場所に逃げてほしい

命を守るためには、安全な場所への早めの避難が最も重要。「キキクル」はそれを後押しする有効な道具の一つだ。

「キキクル」は、数時間先の雨の状況まで予測したうえで、自分の身に迫る危険を教えてくれるので頼もしい。ただし気象台によると、大雨の状況は刻一刻と変わるため、ほんの数十分で川がはんらんするケースもある。一度「キキクル」の情報を見て「安全だ」と思っても満足せず、自分の地域の「警報」が消えるまでは、常にチェックし続けることが重要だ。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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