7月15日、民間シンクタンク主催の台湾有事を想定したシミュレーションが東京都内で行われた。国会議員や元自衛官らのほか、アメリカ、台湾からも有識者らが参加。シミュレーションは、中国が台湾に侵攻するとのシナリオで行われ、首相や閣僚役を現職の議員が務めた。首相役の自民党・小野寺五典元防衛相は、中国によるサイバー攻撃に対し、サイバー攻撃で反撃をする決断をするが、防衛省は、サイバー攻撃は武力攻撃開始の兆候であるとして、「武力攻撃予測事態」を認定するよう要求。事態認定をすることにより、自衛隊の展開に向けた準備を速やかに進められるとメリットを強調したが、首相役の小野寺氏は、事態認定をしないとの判断を下した。その大きな理由とは。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
昨日の「台湾有事シミュレーション」について、小野寺氏は首相役として“事態認定”の難しさを話したが、こんなやり取りも昨日行われた。このシナリオでは、中国のサイバー攻撃が台湾だけでなく、日本でも発生するという想定。政府や省庁のサーバーがダウンし、鉄道や航空のサイトが使用できなくなる。そして、沖縄電力や九州電力も被害が出てくる。さらには、九州の病院で停電が起きて、集中治療室が稼働できない状況に。さらには先島諸島周辺で海底ケーブルが切断されるなど、社会インフラの混乱が深刻化。この時点で首相役の小野寺氏は、中国によるサイバー攻撃と断定し、「アクティブ・サイバーディフェンス(積極的サイバー防御)」を試みる。小野寺氏は、サイバー攻撃にはサイバー攻撃で反撃をするということを決断する。一方、防衛省は、これらのサイバー攻撃を「武力攻撃開始の兆候」とみて、中国からの武力攻撃に備えて、全国の自衛隊をいち早く南西諸島へ展開するため、首相に対し「武力攻撃予測事態」を認定するよう要求するが、首相役の小野寺氏は、「現行法制の中でできる対応を」として、“事態認定はしない”判断を下した。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
このサイバー攻撃のシナリオの中では、防衛当局の方は武力攻撃開始の兆候だということで、早めに事態認定してほしいと要請したというシナリオだが、それに対して小野寺氏は総理役として事態認定には慎重であると。(事態認定は)なかなかできないという判断をしているが、これはなぜなのか。

小野寺五典氏(自民党安全保障調査会長・元防衛相):
首相役として、日本は「アクティブ・サイバーディフェンス」でまず対応しろ、という指示をした。この想定が可能になるのは2027年なので、実際は今の日本では出来ないが、これから法改正をして、日本がサイバー攻撃を受けたら、日本からも逆にサイバーで反撃をできる、攻撃して無力化する。こういう「アクティブ・サイバーディフェンス」ができるということを前提に、まずは、サイバーにはサイバーで攻撃しようという、ことにした。実際、そのサイバー攻撃を受けたことが、武力攻撃となるかどうかを、実は世界が見ている。実は、一番私どもにとって大事なのは、どちらが先に手を出したか、ということ。どちらが先にエスカレーションフラグをあげたか、ということで、その後の国際社会の見方、あるいは日米の同盟、これもアメリカが共同防衛で、日本を守るといっても、アメリカ国内で日本が先に手出した戦いだろうとなる可能性もある。なぜアメリカがそれに入らなきゃいけないのだ?という世論が出てくることもある。なので、日本が初めに手を出したのではないということを、しっかりさせる必要がある。その中で今回の想定は、あくまでもサイバーで攻撃された。それから、海底ケーブルを一部切られているということだけで、これは武力攻撃とすぐに判断するには早いと思う。ただ、例えば、サイバー攻撃で日本の原子力施設がメルトダウンをさせられる。このようなことは、これはもう完全に日本を攻撃する意図があるということで、「武力攻撃事態」を認定できるが、今回のシミュレーションのように、海底ケーブルが切られたということだけで、武力攻撃というふうに予測するというのは、ちょっと早いなと私は判断した。

河野克俊氏(元統合幕僚長):
小野寺氏の判断も、それは合理的、妥当だと思う。ただ、さっきのシナリオだが、このシナリオどおりに行けば、やっぱりこの先島諸島で「海底ケーブルの切断」という物理的行為が起きている。海底ケーブルの切断という、このシナリオ通り行けば、物理的な段階に移ったので、防衛省から、やはりこれは武力攻撃、少なくとも「武力攻撃予測事態」までは出してもらいたいという要求が出るのも私は分かる気がする。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
サイバーの話は最近出てきた話でまだきちんと議論されていない。「アクティブ・サイバーディフェンス」。これすら、まだやるかどうかということの議論中だが、あの先ほどあのサイバーでの反撃ができる反撃ができると言われたが、相手方からのサイバー攻撃に対して、サイバー攻撃自体を抑えるところまでがディフェンスだと思うが、反撃ということになれば、こちらが積極的にサイバーを使って、相手のインフラとかを、ある意味破壊しに行くというようなことも、これは「アクティブ・サイバーディフェンス」の中に入ってくるのか?それは「アクティブ・サイバーオフェンス」になると思うが、これあの今、「アクティブ・サイバーディフェンス」の話ばっかりでやられてきて、相手にサイバー攻撃をやられてこっちがまあ危ない状況になってくると、食い止める話でこうなっているが、積極的にサイバーで相手方のインフラなど、そういうところを“やられたらやり返す”というような形で、サイバーで攻撃して行くことも考えていかなきゃいけないのでは。

小野寺五典氏(自民党安全保障調査会長、元防衛相):
例えば、今回、防衛三文書変えさせてもらったが、その中に反撃能力という言葉を持った。
反撃能力は向こうから飛んでくるミサイルを食い止めるけど、またやられたら大変だから、こちらからやって相手を壊しちゃう。これが反撃能力ですね。これから国会で議論しますが、私どもこの防衛文書の中で示した「アクティブ・サイバーディフェンス」というのは、「同じように反撃する能力」ということなので、二度とサイバー攻撃ができないように、相手のサーバーをダウンさせるとか。なので、例えばインフラを攻撃してダムを破壊するとか、そういうところまではおそらく日本の反撃能力の考え方としては持たないと思う。ただ、少なくとも二度とサイバー攻撃ができないように、相手のサーバーをダウンさせる。相手の中のいわばサイバーの通信網を遮断するとかはやっていいのだと思う。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
かつて安倍元首相の(国会での)発言であったかと思うが、物理的な武力攻撃がなくても、サイバー攻撃だけでも、こちらの被害状況によっては武力で反撃できる、という意味合いの答弁があったが、サイバーに対しての武力攻撃というのは、やっていいのか。

河野克俊氏(元統合幕僚長):
「均衡性の議論(原則)」というものがある。例えば、向こうが通常兵器できて、こちらがいきなり核で対抗なんてことはできない。やはりサイバー攻撃であれば、基本的にはサイバー攻撃での反撃ということが基本だと思う。まだ、「アクティブ・サイバーディフェンス」の議論の中で、インフラにまで攻撃が及んでもいいという議論までは行っていないと思う。そういう必要性があるかどうかについては議論してもいいと思うが、今の段階では、サイバー攻撃に対しては、向こうのサ-バーを壊すという議論までだと。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
でも、安倍元首相の国会答弁だと、サイバーに対しても場合によっては武力攻撃が可能という考えもあって、ここら辺は実際まだ整理できていないと思うがどうなのか。

小野寺五典氏(自民党安全保障調査会長・元防衛相):
実は、例えばアメリカでも、NATOのサイバーの研究所でも、どういう場合に武力攻撃が可能か考える場合、例えば、原子力発電所をメルトダウンさせるためのサイバー攻撃であれば、これは明らかにサイバー空間であるものの、そこから出る波及的な意義、つまり、多くの国民に対して被害をもたらすような酷いものと認めることができる。こういう状況に関しては「武力攻撃事態」と認定し、認定すればあらゆる形で対抗できるので、その場合は、例えば、ミサイルで対抗するということも法律上は可能だと、そのことを安倍元首相は言ったのだと思う。

日曜報道THE PRIME
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