東京都内の内科クリニックにできた、親子連れの長い行列。

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診察の様子を取材すると、聞こえてきたのは、ある病名でした。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤 博道院長:
喉の所見は結構赤みが強くて、感染状況も考えると、“ヘルパンギーナ”の可能性があります。

子どもがかかりやすい夏風邪の一種である「ヘルパンギーナ」
発熱や口の中に水泡ができ、重症化の可能性もある感染症ですが、今、大流行の兆しを見せているのです。

22日には東京全域に4年ぶりとなる「ヘルパンギーナ警報」が発令
都の会議によると、都内1週間のヘルパンギーナ患者は、1医療機関あたり6.09。基準値の6人を上回りました。

また、全国的にも、全域や一部地域で、警報の基準値を超えたのは26都府県に上ります。
幼稚園などが、休園を余儀なくされたというケースも。

都内にある保育園「キャンディパーク保育園2号」を取材すると、6月に入り感染が拡大。各クラス5人から10人が夏風邪で休んでいたといいます。

ヘルパンギーナには有効なワクチンや予防法がなく、しかも原因となるウイルスはアルコール消毒では防ぎづらいため、園側は、手洗いやうがいなどの対策をさらに強化。

全ての部屋に空気清浄機を設置し、換気も入念に行います。

ヘルパンギーナだけではない?他の感染症も同時多発

感染が広がっているのは、ヘルパンギーナだけでは、ありません。
東京・大田区の「六郷こどもクリニック」では、発熱外来に絶え間なくやってくる子どもの姿が。

六郷こどもクリニック 伊藤葉子院長:
例年は(暑くなる)6月ぐらいになったら患者さんが減るはずだったのですけれども、5月に比べて、3割~4割ぐらいの患者さんが増えていると思います。

子どもたちは熱や、喉の痛み、鼻水などを訴え、コロナやインフルエンザなどの検査が行われていました。

その中で確認されたのは、高熱や喉の痛みなどを発症する「溶連菌感染症」
他にも、主に呼吸器に感染し、症状が軽い風邪のような場合もあれば、重い肺炎にまで重篤化することもある「RSウイルス」なども確認されました。

六郷こどもクリニック 伊藤葉子院長:
インフルエンザの陽性の人もいるし、コロナの方もいますし、溶連菌とかアデノとか、RSとか検査して見つかる人もいます。子供の熱の9割以上はみんな風邪、感染症だと思いますので。

大人も決して油断できません。
東京・北区にある「いとう王子神谷内科外科クリニック」では、大人にも「RSウイルス」の波が押し寄せているといいます。さらに、家族でヘルパンギーナに感染したという人も。

なぜ、年代問わず様々な感染症が広がっているのでしょうか?伊藤博道院長は、背景にあるのは、“3年を超えたコロナ禍”だといいます。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤 博道院長:
(今まで)コロナ対策含めてですね、感染に対する意識が高かったと、本来、少しずつウイルスに接したりすることによって、免疫を鍛える機会があったはずなのに非常に少なかった。そのため免疫がだいぶ弱まって薄れていた。

長いコロナ禍での徹底したマスク習慣や、外出自粛による運動不足で免疫力が低下。
その中で、新型コロナが5類に移行し、社会活動が活発になったことによって、感染症が急拡大しているといいます。

そして今、再び新型コロナの感染も拡大しています。
モデルナ・ジャパンが公表している新規感染者数の推計値を見ると、21日には全国で4万3355人にまで上昇。

感染制御学を専門としている東邦大学の小林寅喆教授は…。

東邦大学 小林寅喆教授
東邦大学 小林寅喆教授

東邦大学 小林寅喆教授:
去年に比べて、ピークほどではないものの、じわじわと増えていっているという状況にはあると思います。その背景にはやはり5類に変わって人の動きがだいぶ解放された。それに伴って、新型コロナも徐々に増えているというのが今の現状だと思います。

Q.今までと比べて症状は?
東邦大学 小林寅喆教授:

今までに比べると重症化する人はかなり少なくなってきていると思います。症状はかつて私たちが経験してきたような風邪の症状に非常に近い状況になっていると。
ただ、重症化する高齢者や基礎疾患を有する方にはまだまだ危険な状況ですので、そういう方たちには「うつさない」ということも、重要な対策になるということです。

Q.新型コロナやインフルエンザで学級閉鎖も起き始めていますが、ヘルパンギーナでも起こる可能性があるのでしょうか?
東邦大学 小林寅喆教授:

ヘルパンギーナにつきましては、学校保健安全法による出席停止期間というのはもうけていません。ただこれも今までの風邪と同じようにクラスの多くが感染して授業が進まないということであれば、学級閉鎖もしていかなくてはならないことも生じると考えていいと思います。

Q.重症化する前に病院に行くことがまず大切になってきますか?
東邦大学 小林寅喆教授:

若い人は症状が軽いので、病院に行きたがらない。診療も公費負担ではなくなっているので避けるかもしれませんが、やはりきちんと調子が悪いときは病院にいく、もしくは自発的に休むと。そのことによって、リスクの高い人たちに感染を広げない、うつしていかないというような形をちゃんと取っておくと。また、基本的な感染対策もこれから取っていくということも大事な点だと思います。

(めざまし8 「わかるまで解説」より 6月23日放送)