2023年6月13日、韓国の人気グループ・BTS(防弾少年団)がデビュー10周年を迎えた。ソウルタワーなど、ソウル市内各地のランドマークはイメージカラーの紫色に彩られ、街全体が彼らの記念すべき日を祝った。

BTSのイメージカラーの紫色にライトアップされたソウルタワー
BTSのイメージカラーの紫色にライトアップされたソウルタワー
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韓国歌手初の米グラミー賞ノミネート(3年連続)をはじめ、ビルボードやイギリスのオフィシャルチャート、日本のオリコンでのランクインなど、今やその人気は世界的なものとなった。さらに、青少年の暴力や人種差別などの社会的な問題にも取り組み、「国連総会での演説(2018年)」や「ホワイトハウス訪問(2022年)」など、アーティストの枠におさまらない活動を通し、彼らのメッセージは全世界に対し影響力を持つようになった。

2018年、国連本部でのユニセフの会合に出席し、若者らに自己愛や自尊心についてのメッセージを発信した
2018年、国連本部でのユニセフの会合に出席し、若者らに自己愛や自尊心についてのメッセージを発信した

この10年間で大きな成長と成功を遂げたBTS。デビュー10周年の節目に、所属事務所「BIGHIT MUSIC」のシン・ヨンジェ代表がFNNの書面インタビューに応じた。

BIGHIT MUSIC シン・ヨンジェ代表 (提供:BIGHIT MUSIC)
BIGHIT MUSIC シン・ヨンジェ代表 (提供:BIGHIT MUSIC)

シン代表は2019年にゲーム会社から「BIGHIT ENTERTAIMENT(現・HYBE)」へ移り、レーベル部門代表などを歴任。現在はBTSの所属事務所「BIGHIT MUSIC」の代表取締役に就任し、彼らの世界進出やファンとの交流といった活動全般を改革、サポートしてきた。

新型コロナのパンデミック、韓国の男性アイドルグループが避けては通れない「兵役義務」など数々の困難に直面しながらも歩み続けた10年間を振り返り、これからのBTSが目指す姿を語った。

SNS発信とコロナ禍がもたらした転機

――BTSがデビュー10周年を迎えました。

シン代表:
感激です。10年でメンバーたちが成し遂げた素晴らしい成果を誇りに思っており、そのような歴史的な成果を共に達成することができて感謝するばかりです。ささやかなことでしたが、6月13日(10周年)当日に私とBTS担当リーダーたちが手書きの手紙でメンバーたちにお祝いと感謝の挨拶を伝えました。

――世界中にファンを持つグループに成長しましたが、それまでの工夫や転機はありましたか。

シン代表:
BTSはデビュー当初からYouTubeなどグローバルなSNSを通じて積極的にファンと交流してきたグループで、当時、他のK-POPグループに比べて、初期から全世界的なファンダム(熱狂的なファン集団)を構築することができました。その後、色々なモメンタム(勢い)がありましたが、グローバルファンダムの観点で最も目覚ましく飛躍したのは、「Dynamite」を発表した時期だったと思います。
もちろん、BTSは2019年に既にスタジアム級ワールドツアーが可能なほどのファンダム規模を持っていたチームでしたが、2020年初めに新型コロナウイルス感染症によってワールドツアーが中止となり、すべての活動計画が白紙となった状況で、「今この瞬間に私たちにできること」を模索し「Dynamite」を発表することになりました。これを契機にBTSはグローバルトップアーティストとして地位を確立し、これを土台に以前よりさらに大きくグローバルファンダムを拡大することができました。

――BTSにとって日本の音楽市場、そして日本のファンはどういう存在でしょうか。

シン代表:
多くのK-POPアーティストと同じように、BTSも日本でアルバム·音源を発表し活動してきました。日本のファンの方々が長い間BTSを応援してくださっていることに対して、メンバーと会社の皆が感謝しています。新型コロナウイルス感染症によってメンバーたちが長い間、日本のファンの方々に直接会えなかったことを残念に思っていましたが、今月初めにSUGAがソロコンサートを開いて、久しぶりに日本のファンの方々に会えたことを嬉しく思います。

 “軍白期”を乗り越え「ファンの愛に応えるために」

――“軍白期”をどのように乗り越えるのでしょうか。
※軍白期…「兵役」によりメンバーやグループの活動が休止する期間

シン代表:
メンバーたちが積極的に個人活動に乗り出し、BTS担当部署はむしろ以前に増して忙しく慌ただしい日々を送っています。現在公開されていることの他にも、メンバーたちの様々なプロジェクトがすでに準備完了、または準備中であるうえに、来年6月には一番先に入隊したJINが除隊するので、ファンの方々はこれから披露されるたくさんのプロジェクトも楽しみにしていてほしいと思います。

――再び7人が集まるタイミングでどんな姿(パフォーマンス)を見せることができると考えていますか。

シン代表:
今メンバーの一人一人が各自のプロジェクトに集中していることが、その「答え」を見つけるための過程だと思います。 会社も、BTSが今後より良い活動ができるように能力と支援体制を補強する時期にしたいと考えています。

――今後BTSが目指す姿、そして活動方針について教えてください。

シン代表:
BTSはすでに前例のない成果を挙げたチームです。したがって今後、何かを「証明」するよりは、本人たちが伝えたいメッセージを良い音楽に込めて伝えるアーティストとしての姿を見せ続けることが、今後の方向性として正しいのではないかと思います。今までと同じように、その根幹にはファンの愛にどう答えるかという悩みと努力があるだろうと思います。

6月17日ソウル・汝矣島漢江公園で開かれた「BTS FESTA」には世界中から大勢のファンが訪れた (提供:BIGHIT MUSIC/HYBE)
6月17日ソウル・汝矣島漢江公園で開かれた「BTS FESTA」には世界中から大勢のファンが訪れた (提供:BIGHIT MUSIC/HYBE)

BTSのデビュー10周年を祝う「BTS FESTA」のメインイベントとなる野外フェスが、6月17日(土)にソウル市内で開かれた。リーダーのRMのステージなどが行われたもののメンバー全員が集合したわけではなく、グループ自体は活動休止中だ。それにも関わらず、この日会場に訪れたアーミー(BTSファンの愛称)は約40万人。世界中から大勢のアーミーが集まっていた。

「BTSのためにここにいる」「ここにいられることに、すごく興奮している」。アーミーたちはこの記念すべき節目に、BTSが誕生した韓国・ソウルで過ごすことができることへの喜びを口にした。ある日本人アーミーは、紫色にライトアップされた建物を前に「(活動休止し)ソロ活動が始まっているのに、ファンのために沢山の準備をしてくれていてありがたい。20年、30年とついていきたい」と声を詰まらせた。

次なるBTSからの“プレゼント”は…?(提供:BIGHIT MUSIC/HYBE)
次なるBTSからの“プレゼント”は…?(提供:BIGHIT MUSIC/HYBE)

一方、アーミーたちの気持ちに応えるようにBTSがデビュー10周年に発表したスローガンは“BTS PRESENTS EVERYWHERE”。「BTSからのプレゼントはどこにでもあるよ」「BTSはどこにでもいるよ」という二つの意味が込められているという。

BTSはこれからもアーミーたちのために、来たるメンバー全員での復活の時まで様々な形でプレゼントを贈り続けるだろう。次なる彼らのプレゼントに注目だ。

(FNNソウル支局 柳谷圭亮)

柳谷圭亮
柳谷圭亮

FNNソウル支局特派員。1994年生まれ。仙台放送報道部で県警・県政クラブ、東日本大震災関連ドキュメンタリー制作などを担当し2023年2月~現職。