新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが5月8日から5類に移行される。これに伴い、外来医療費などが本人負担となるほか、鹿児島県内の宿泊療養施設は高齢者と妊婦対象に変わる。患者を受け入れる医療機関にはどんな変化があるのか、鹿児島市の病院で取材した。

コロナに翻弄された3年

鹿児島市の新成病院は2020年の11月から発熱外来を設け、新型コロナの診察にあたってきた。森山由紀則院長は、新型コロナに翻弄(ほんろう)された3年余りについて「感染対策を徹底しながらやるということで、職員には今までにない緊張感の中で毎日仕事に従事してもらっていた」と話す。

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鹿児島県内では、4月末時点で新型コロナの発熱外来に対応する「診療・検査医療機関」として880の医療機関が指定され、67の医療機関が入院患者を受け入れる「重点医療機関」などに指定されている。

しかし、新型コロナの流行時には必ずしもこの指定通りに患者が振り分けられたわけではなかった。

新成病院・森山由紀則院長:
入院患者(受け入れ)は指定されていなかったが、引き受けて治療した経験はある。鹿児島市立病院で診るべきか、うちで診るべきかと判断した患者は入ってもらった。重点医療機関以外でコロナ感染者の入院を経験した施設はけっこうある

医療機関間での“入院調整”

新型コロナが5類感染症に移行すると、県の説明では発熱外来に対応する医療機関の数は、これまでの880から順次拡大されることになる。

一方、入院が必要な患者の受け入れは、当面これまで通り重点医療機関や協力医療機関が中心となるが、どの病院が受け入れ先となるかを決める「入院調整」は実施主体が変わる。

鹿児島県新型コロナウイルス感染症療養調整課・内幸喜課長:
現在は保健所が中心になって入院調整しているが、5類移行後は基本的に医療機関の間での入院調整になる

しかし、病院同士による入院調整について医療機関側から懸念の声が上がったことから、県は行政による入院調整機能を9月末まで残すことにした。

鹿児島県新型コロナウイルス感染症療養調整課・内幸喜課長:
まずは医療機関の間で入院調整をして、不調となった場合は医療機関から保健所に調整を依頼してもらう。それでも不調になった場合は、県の広域医療調整本部に依頼してもらえればそこで調整する。そういう体制は継続する

「急に安心な世の中にはならない」

5類移行後の入院調整はスムーズに進むのか。森山院長は「今後は病院同士の連携だけでなく、介護施設との連携も重要になってくる」と指摘する。

新成病院・森山由紀則院長:
ここ1年は感染の対象者が高齢者になってきて、肺炎というよりは感染した後の衰弱で入院が長期化してベッドが回らず病床がひっ迫する。病院が患者の治療をして、容体がある程度安定したら介護施設に移して、連携を密にして診ていくということであれば、ベッドのひっ迫も解消されていくのではないか

5類への以降で大きく転換する、新型コロナの医療提供体制。しかし森山院長は、病院側の対応はこれまでと変わらないと語る。

新成病院・森山由紀則院長:
5月8日以降、急に「安心ですよ」いう世の中にはならないと思う。新型コロナがいつ変異してさらに病原性が強くなっても対応できるよう、油断しないで感染対策を続けていく。そう思っています

鹿児島県では、ワクチンの無料接種と入院の際のコロナ治療薬の本人負担なしは当面継続され、受診相談窓口となる「コロナ相談かごしま」も継続される。
森山院長も話す通り、あくまで位置付けが変わるだけで、今後も油断は禁物であることに変わりはない。

(鹿児島テレビ)

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