近年、値段が高騰し、“黒いダイヤ”ともいわれる高級な水産資源・ナマコ。そのナマコを密漁した疑いで、山口・宇部市の漁業の男と、その息子と妻ら合わせて5人が逮捕された。

中国で高値で取引される「クロナマコ」

2023年2月28日、四国・松山空港の沖合。門司海上保安部の捜査員が船上マイクで激しく警告する。

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海上保安官(門司海上保安部提供 2023年2月28日):
こちら海上保安庁、前方の小型艇、止まりなさい!前方の小型艇、止まりなさい!!止まりなさい!!!!

門司海上保安部提供の容疑者追跡映像。再三の停船命令を無視して猛スピードで逃走する漁船。操っているのは、“黒いダイヤ”とも呼ばれる高級食材・ナマコを密漁した疑いがある宇部市の漁業、中野政吉ことキム・チョンギル容疑者(71)だ。

桜井福大記者:
福岡県の苅田港では、このようにナマコが大量にとれることで有名なのですが、中でもこの「クロナマコ」は、中国では高値で取引されているということです

密猟者逮捕…緊迫のその瞬間

密漁の舞台になったのは福岡・苅田町沖の周防灘海域。海上保安部によるとキム(中野)容疑者は、地元の宇部市の港から船を出し、息子や妻と3人で苅田沖まではるばる遠征。知事の許可なく潜水器具を使って、ナマコ約620kgを密猟するなどした疑いが持たれている。

以前からキム(中野)容疑者一家の「ナマコ密漁」をマークしていた海上保安部は、2023年2月28日、宇部市の港に停泊していたキム(中野)容疑者の船の捜索に乗り出した。

ところが…キム(中野)容疑者は捜査員に気づき漁船で逃走したのだ。

瀬戸内海を逃げに逃げたキム(中野)容疑者。逃走距離は、実に約300kmにも及んだが、岡山・倉敷沖で巡視艇が追いついたという。

暗闇の中、キム(中野)容疑者の漁船に近づく捜査員。

捜査員(門司海上保安部提供 2023年3月1日午前5時ごろ):
寄せて、寄せて、寄せて

そして!緊迫の瞬間…海上に怒声が響く。

捜査員(門司海上保安部提供 2023年3月1日午前5時ごろ):
「おおおい!」
「出てこい!どこおるや!」
「出てきた?」
「どこおる?」
「どこ、どこ、どこ?」
「分かっとるね。門司の海上保安部です」
「分かっとる?」
「逃げとったやん、ずっと」
「何しよったん、ずっと」
「はい、確保!」

漁船の中に隠れていたキム(中野)容疑者を発見し、身柄を確保した。

捜査員(門司海上保安部提供 2023年3月1日午前5時ごろ):
お前、逮捕状、出とるんよ。あとで説明するけん。キツかったやろう?ずっと逃げて

海上保安部は、キム(中野)容疑者本人に加えて、妻の中野ふじ枝容疑者(71)と息子の中野純一容疑者(48)、さらに密漁されたものと知りながらナマコを買い取った宇部市の仲買人・佐藤由季容疑者(39)と競り人で松山市の嶋矢拓郎容疑者(37)の合わせて5人を漁業法違反などの容疑で逮捕した。

「密猟している」うわさはあった

貴重な水産資源であるナマコを大漁に密漁された苅田町の漁業関係者は…。

「健稀丸水産」今村聡司さん:
密漁はしているのは知っていたが、なかなか捕まらなかった。誰がしてるか分からんけど、夜に来るから「たぶん密漁をしているんだろうな」とうわさはずっとあった。真面目にルール守ってとってる側からしたら腹立たしい

中国での需要増加を受けて近年、ナマコの値段は高騰していて、農林水産省のまとめによると1kg当たりの卸値は全国平均で2,868円と高値で取引されている。価格の高騰を背景にナマコの密漁も急増していて、2020年には全国で1,368件。中には暴力団の資金源になっているケースもあるという。

調べに対し密漁を認めているというキム(中野)容疑者は、犯行の動機について「借金による生活で苦しかった」と供述しているという。
海上保安部は、キム(中野)容疑者が密漁を繰り返していたとみて余罪を含めて調べている。

(テレビ西日本)

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