日本時間の4日午前1時20分、罪状認否が行われるニューヨークの裁判所に向けてトランプ氏はフロリダ州マール・ア・ラーゴの私邸を出発した。
この記事の画像(6枚)米メディアは、私邸出発からパーム・ビーチで飛行機に乗り込みニューヨークに到着し、同午前5時10分トランプタワーに入るまでを一斉に生中継で報じた。
日本時間5日午前3時15分裁判所に初出廷へ
トランプ氏は、日本時間5日未明に、ニューヨークのトランプタワーを出発し、検察に出頭する。その場で、顔写真や指紋が採取され、一連の手続きが行われると見られる。そして、午前3時15分、今度は、検察官事務所と隣接する裁判所に初出廷し、罪状認否に臨むことになる。起訴状の読み上げのほか、裁判官は、トランプ氏を保釈するかどうか、トランプ氏が保釈後から裁判までの間、一定の制限を守る考えがあるかどうかも尋ねると見られる。この流れは、通常、比較的、短時間で行われるという。この間、トランプ氏には手錠はつけられないと見られ、警護する数人のシークレットサービスが同行する。
出廷から罪状認否までかかる時間は10分程度とみられている。トランプ氏の罪は、20から30以上とも言われているが、トランプ氏は法廷にカメラを入れることを拒否しているという、その理由について米メディアは起訴状の読み上げが「恥ずかしいものになるからだ」と推測している。こうしたことを考慮したかどうかは不明だが、裁判所は、法廷内の映像の撮影は禁止とした。
“マグショット”を応援グッズに活用?
米メディアは、トランプ氏が、起訴によるメディアの騒ぎに興奮し、側近は1994年にフットボール界のスーパースターO・J・シンプソン氏が妻を殺害したとして起訴された事件以上の騒ぎになると話しているという。
また起訴に伴い、特にトランプ氏がこだわっているのは、マグショット=出頭後に撮影される被告人の顔写真の撮影だと指摘している。トランプ氏は、撮影された写真を支持者の集会で活用できるようなTシャツに出来ないか検討を進めているという。
次期大統領選に向けた資金集めも加速している。起訴の報道がされた30日から48時間の間にトランプ氏は、500万ドルの資金を調達し、起訴後初の世論調査(Yahoo News/You Gov)では、共和党内の支持率は、トランプ氏が57%、フロリダ州知事のデサンティス氏が31%と前回(47%―39%)の調査よりもリードを拡大し、起訴が大統領選を後押しする結果となっている。
起訴を機に発信力を強め、大統領選を優位に進めたいトランプ氏だが、裁判を担当する判事は罪状認否の後、日本時間5日午前9時過ぎから予定されている私邸での演説を中止するようかん口令を敷く可能性があるという。陪審員に影響を与えるためだという。しかし、トランプ氏側は、合衆国憲法修正第一条の言論の自由を制限するとして反発する意向を示しているという。
トランプ氏を巡る4大事件
一方、トランプ氏はポルノ女優への口止め料を巡る疑惑のほかにも、ホワイトハウスからの機密文書の持ち出しで特別検察官の捜査が進んでいる。南部・ジョージア州では落選を覆すために州の担当者に電話で「票を探し出す必要がある」などと圧力をかけ、検察当局が捜査を進めている。
2021年の連邦議会襲撃事件では下院の特別委員会は司法省に対し、「起訴すべき」と勧告した。いずれの事件でもさらなる刑事訴追可能性があり、今後、「口止め料」疑惑と共にさらなる裁判を抱えながら大統領選を迎える事態に突入することも想定される。
ニューヨークは厳戒態勢…暴動の懸念も
トランプ氏の起訴の動きについて、共和党は「政治的迫害」「権力の乱用」などとして反発を強め、ニューヨーク市警察や政府も支持者らによる抗議が暴動に発展しないか、警戒感を強めている。トランプ氏に近いテイラー・グリーン下院議員もトランプ氏の出頭直前に裁判所前で抗議集会を開く予定で、現場ではさらなる混乱が予想される。
2021年の連邦議会襲撃事件の記憶が新しい中、不測の事態が不測の事態を呼ぶ懸念が米政治の歴史にどう刻まれるのだろうか。3日、ニューヨークのトランプタワー前に集まった人からは「起訴はむしろ選挙戦で有利になる」「検察はヒーローだ、これからたくさんの疑惑が晴らされると良い」などの声があがった。
ニューヨークの街は厳重警戒の中、抗議や歓迎、大統領経験者が初めて罪に問われる瞬間を迎えることになる。
(FNNワシントン支局 千田淳一)