福岡・北九州の街をざわつかせている防犯カメラに映る人物。取材を進めると「驚きの実態」が浮かび上がってきた。

同僚にも…「3000円貸してほしい」

「本当にいいおばあちゃんですよ。50代後半とか60代とか結構、年配」と語るのは、北九州市小倉北区片野新町にあるマッサージ店の店主・松井隆朋さん。町を騒がせているという問題の人物とのファーストコンタクトは、2023年2月23日のことだった。そのときの店の防犯カメラ映像が残されている。

マッサージ店の防犯カメラに映る女
マッサージ店の防犯カメラに映る女
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午後、店に現れた女は、黒いコートを身にまとい、チェック柄のマフラーをしている。てっきり客だと思い、女を対応する店のスタッフ。しかし、どうも様子が違う。店のスタッフは、店主の松井さんを呼んだ。すると女は、「銀行で財布を落としたので、お金を貸してくれませんか。交通費が必要だが、銀行で小銭はおろせないので、3,000円貸してほしい」と切り出してきたという。

女は「財布を落とした」、「3,000円貸してほしい」と身ぶり手ぶりで必死に松井さんに対し説明してきた。さらに「近くの店のオーナーが知り合いで、翌日、返します」などと3,000円を借りたあとの返済も約束してきたというのだ。しかし、松井さんは女の説明に違和感を覚えた。

マッサージ店の店主・松井隆明さん:
話を聞いてたら、あら?みたいな。ATMも小銭っていっても下ろせるじゃないですか、カードさえあれば

「3,000円は貸せない」と女に伝えた松井さん。すると、女は「あ、わかりました」と軽く会釈をし、足早に立ち去ったという。「いったいあの女は何だったのか…」と仕事を再開しようとマッサージ室に戻った松井さん。ここで驚きの事実を知る。

マッサージ店の店主・松井隆明さん:
施術してたお客さんから、前の週、お客さんの同僚の方に同じことがあったって聞いたんで…。正直、びっくりしました。え!? って思って。しかも、まわりに2、3件いたらしいんで…。金額は、全く同じ3,000円です

なんとあの女は、松井さんの店の周辺で、毎回3,000円を借りるフリをしてだまし取る、いわゆる“寸借詐欺”を繰り返していたのだ。

マッサージ店の店主・松井隆明さん:
お金って、そんなに簡単に貸せるものでもないし、人の善意とかを利用するのは、僕は嫌いなんで

“3,000円女”とは別の女も…

“3,000円女”は、いったい何者なのか?取材班は、防犯カメラ映像を手掛かりに、周辺で聞き込みを開始。

整骨院で聞き込み
記者:
お金を貸してほしいと言ってまわっているおばちゃんがいるみたいですが…
院長:
あぁ!!!
記者:
来ましたか?
院長:
来ましたよ!

女が寸借詐欺で訪れた整骨院の院長に会うことができた。院長によると、女が現れたのは3月1日の夜だという。

シバタ整骨院・黒川昌三院長:
お金がないので貸してくれと。普通の道を聞くような感じで、お金を貸してくれと言われた。額は3,000円

金額もやはり3,000円。女の手口はワンパターンのようだ。ところが“3,000円女”の映像を確認してもらうと、マッサージ店に現れた“3,000女”とは全くの別人というのだ。

シバタ整骨院・黒川昌三院長:
…いやあ、こんなに若くなかった。こんなにおばちゃんって感じじゃなかった。おばあちゃんだった。この画像は、若い感じですね、違いますね

整骨院に現れたのは70代くらいの女。マッサージ店に現れた“3千円女”とは全くの別人というのだ。

黒川院長が描いた女の似顔絵
黒川院長が描いた女の似顔絵

シバタ整骨院・黒川昌三院長:
こういう感じの杖を持っていました。ピンク色のこんな感じの杖

女は、淡いベージュのカーディガンにカーキのズボン。そして、特徴的ともいえるピンク色の杖を持っていたという。

この“ピンクの杖の女”は、院長に「近くのマンションの7階に住んでいる。お金がないので3,000円貸してほしい」と訴えてきたという。しかし、院長は話が怪しいと思い、お金を貸さなかった。すると“ピンクの杖の女”は「わかりました」と言って立ち去ったという。

この“ピンクの杖の女”も、寸借詐欺に手を染めようとしていたのか?その真意を確かめるため、取材班は、“ピンクの杖の女”が、自分が住む部屋だと院長に話していたマンションを尋ねてみたが、“ピンクの杖の女”が話していた住所はデタラメ。マンションに女は住んでいなかったのだ。

銭湯には“シマウマ男”「お金貸してくれへんか」

“3,000円女”と同様、街で寸借詐欺に手を染めているとみられる“ピンクの杖の女”。さらに取材を進めると、近くのスーパー銭湯でも寸借詐欺を繰り返す人物の情報をキャッチした。現れたのは、いったい、どっちの女なのか?

スーパー銭湯で聞き込み:
記者:
お金貸してくれませんか、と声掛けしてる方がいると伺ったんですけど、これってどういう人?
店の人:
うちでも何件かありますね。40~50代の「男性」でして
記者:
だ、だ、男性、ですか?
店の人:
男性です。服装は、派手目の感じだと思うんです

なんと“3,000円女”でも“ピンクの杖の女”でもない、第3の人物が確認されたのだ。その人物の通称は“シマウマパーカー男”。

スーパー銭湯「華の湯・片野店」・徳増雄大さん:
白と黒のシマウマみたいなパーカー。いろいろな理由をつけたりして、お金を貸してくれへんかという

問題の男は関西弁を喋り、髪は天然パーマ。シマウマみたいな柄のパーカーを羽織っているという。この“シマウマパーカー男”の場合は、脱衣所で「財布をなくした」、「部屋の鍵をなくした」、「困っている」などと利用客に泣きつき、1,000円から数万円を貸すように、執拗(しつよう)に頼んでくるという話だ。このスーパー銭湯では、2月、利用客から“シマウマパーカー男”についての相談が3件寄せられている。

“3,000円女”に“ピンクの杖の女”。そして“シマウマパーカー男”。

テレビ西日本報道部のまとめによると、小倉駅からそう遠くはない、北九州小倉北区の片野・片野新町エリアの非常に狭い範囲で、2月と3月7日までの間に、寸借詐欺疑いの声掛けが少なくとも11件確認された。人の善意につけこむ寸借詐欺。本当に困っている人との見分けが難しい中で、あらためて注意が必要だ。

(テレビ西日本)

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