3月8日は国連の定める「国際女性デー」。そもそも、何の記念日なのでしょう?

歴史を紐解くと、1975年に国連で「女性の社会参加と地位向上を求める」ために提唱されたといいます。諸説ありますが、1904年3月8日にアメリカで女性の労働者が参政権を求めてデモを起こし、それがヨーロッパやロシアなど世界中に広がったのが契機だそうです。

翻って…今の時代の日本。
女性も当然の権利として選挙に行けるようになり、また、社会進出を後押しすべく男女雇用機会均等法もでき、今や(男性雇用者世帯で妻のパート、フルタイム含めて)共働き家庭も6割を超えています。

ただ、「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野のデータで作成される「ジェンダーギャップ指数」は2022年も日本は世界146カ国中116位。ほぼ横ばいです。

この現実から、何がどう変わっていけばいいのか。

3月1日から3月8日にかけて、フジテレビアナウンサー8人が国際女性デーに向けて、それぞれ自分自身の視点でテーマを設定し、「自分ごとのリアル」を発信します。

そして、それぞれのテーマはこれまでにお互いにあまり口にしないままにしてきたことでもあります。

この機会に、普段のモヤモヤを言葉にし、テーブルに載せてみる…。

決して女性のためだけのものではなく、誰にとっても性別に紐づけられた“決めつけ”について一度立ち止まり、考え直してみようという試みです。

政治家・理系分野になぜ女性が増えないのか、女性のカラダと心の健康の話、男性の家事力、これからの働き方への問いかけ、等、テーマは多岐にわたります。

初回は立本アナ。間もなく第三子・女児誕生で育休を迎える立本アナの「ミモザデーとは?」から始まります。

なぜ「国際女性デー」に「ミモザの花」?

私には、まもなく、第3子が誕生します。一人目は男の子。二人目と三人目は女の子です。第2子の娘が生まれた当時、言葉にできない不安を抱いたのを覚えています。息子には抱かなかった感情です。この子が大人になるころに、女性みんなが社会で活躍できる世の中になっているだろうか…。女性が直面している様々な問題を、娘が生まれて初めて“自分ごと”として捉えました。それと同時に大きな不安が襲ってきたのです。

これを機に、ジェンダー格差とは何かを真剣に考えたい。そんな思いを胸に、「ミモザデー」発祥の地イタリアと日本の架け橋を担う在日イタリア商工会議所事務局長ダヴィデ・ファントニさんに話しを聞きました。

在日イタリア商工会議所事務局長 ダヴィデ・ファントニさん
在日イタリア商工会議所事務局長 ダヴィデ・ファントニさん
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立本:
「国際女性デー」は、「ミモザデー」と呼ばれますが、そもそもなぜ「ミモザの花」なのでしょうか?

ダヴィデ・ファントニさん
イタリアでは「国際女性デー」に女性へミモザの花を贈る習慣があります。町中が黄色で彩られる美しい一日です。そのミモザを贈る習慣を在日イタリア商工会議所が日本に紹介し、イタリア・Mimosa Day(ミモザデー)と名付けられました。ミモザはイタリアではポピュラーな花。女性への感謝や、社会・職場で地位向上を目指す前向きな女性を応援する。そんな意味が込められています。 

ミモザはイタリアではポピュラーな花で、「国際女性デー」に女性に贈る習慣があるという
ミモザはイタリアではポピュラーな花で、「国際女性デー」に女性に贈る習慣があるという

立本:
「国際女性デー」は女性の活躍を応援する日でもありますが、ダヴィデさんは、日本の現状についてどう思いますか?

ダヴィデ・ファントニさん:
日本では、女性の社会進出はかなり遅れているように感じます。残念ながら、私の知り合いには、社長などハイポジションに就いている女性は少ない。男性側の意識はもちろんですが、「ミモザデー」を推進して、女性の社会での活躍を後押ししようとしても「私なんて」と謙遜する女性が多いのにはショックを受けました。 

ジェンダー先進国ではないイタリア

世界経済フォーラムが公表した各国における男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数2022」によると、日本は146カ国中116位、イタリアは63位という結果でした。

「イタリアもまだまだ、ジェンダーの意識は高くありません。北欧やドイツなどに比べると遅れています。だからこそ感じてきた不平等がありました。男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという固定観念がありました。それはカップルに対してもそうです。

実は私はゲイです。若い頃には差別を受けてきました。『除外された』と感じることも多くありました。カップルは「男性と女性」というのも“決めつけ”です。それでも、時代が進んで少しずつ、自分のことをオープンにできるようになっていきました」

しかし、日本に来て、また振り出しに戻った感覚だったといいます。

「日本に来たのは20年前です。イタリアではようやく自分のことをオープンにできるようになりましたが、日本ではそれが『0』になったような感覚でした。日本では、『彼女はいるの?』 『結婚しないの?』といつも聞かれました。相手がゲイかもしれないという考えはあまりなかったのでしょう。イタリアよりもさらに日本のジェンダー意識は遅れているように感じました」

“決めつけ”をなくして

立本:
確かに私も「イタリア人男性は女性が大好き」というイメージを勝手に持ってしまっていたかもしれません…。

ダヴィデ・ファントニさん:     
それはこうあってほしい!という一方的な決めつけですよね。日本の人みんな着物を着ていますか?違いますよね?そういった決めつけをなくして、一人の人間として人権を尊重して接することが重要だと思います。

立本信吾アナウンサー
立本信吾アナウンサー

立本:
まだまだ女性が活躍が難しいとされる日本で、娘の将来に不安を感じてしまうのですが…。

ダヴィデ・ファントニさん:
子育てで大切なのは「男の子だらかこう」「女の子だからこう」と決めつけないこと。その子の可能性を認めて育ててあげること。当たり前だけど、一人の人間として接すること。君たち30代はこれから学ぶこともできる、そして教えてあげることもできる世代。だから頑張って!

娘の将来について、自分とは性別が違うという観点から勝手に不安に思ってしまっていたのかもしれません。それこそ「決めつけ」だったのでしょう。インタビューの後、少し不安が和らいだような気がしました。

「一人の人間として接するんだよ」というダヴィデさんの言葉を思い出しながら。子育て、仕事、日常生活。様々なところで一度立ち止まり、「決めつけ」ていることはないかと考える。そんなことから始めていきたいですね。

【執筆・インタビュー:フジテレビアナウンサー 立本信吾】

立本信吾
立本信吾

フジテレビアナウンサー。慶応義塾大学卒。2009年フジテレビ入社。
めざましテレビ、直撃LIVEグッディ、とくダネなどに出演し、現在はLive News Daysのキャスター。
報道キャスター、スポーツ実況、ナレーションなど幅広いジャンルを担当しながら、2人の子供のパパとして子育てと仕事の両立を模索中。