今日、63歳になられた陛下。
テニスや登山、乗馬などさまざまな特技をお持ちの陛下だが、なかでも40年以上ものあいだ続けられているのがビオラの演奏だ。
その知られざる情熱の深さを誰よりも間近で見てきたのが、陛下に長年ビオラを個人指導してきたいわば“天皇陛下の先生”の兎束俊之(うづか・としゆき)さん。東京音楽大学の学長も務めていたクラシック音楽界の重鎮である。
兎束さんは数多くの生徒に教えてきながらも、陛下のビオラへの熱意には驚きを隠せなかったという。
天皇陛下とクラシック音楽界の重鎮との出会い
学生時代の陛下がビオラの演奏を始めたころ、よく足を運ばれたのがビオラの第一人者である兎束さんのリサイタルだった。陛下はよほど兎束さんの演奏を気にいったのか、以来毎年のように兎束さんのリサイタルに通われたという。そんな陛下の熱意に応えるように、兎束さんは“天皇陛下の先生”として、個人レッスンを引き受けることとなったのだ。
この記事の画像(8枚)「陛下の人間性の素晴らしさ、優しさ、自然な思いやりが何よりも印象的だった」
初めて陛下と会った日のことを兎束さんは今も記憶している。
少し緊張していた兎束さんを思いやるように、陛下は兎束さんに対して「先生」と呼びかけ、礼を尽くして教えをもとめられたのだ。
レッスン中に垣間見えた陛下の優しい心遣い
ある日のレッスン中には、こんな出来事もあった。いつものように兎束さんは背広を着て陛下を訪ねたが、その日は気温が高く、兎束さんのワイシャツはすこし汗ばんでいた。その様子に気がついた陛下はすぐに自らの背広を脱ぎ、兎束さんにも声をかけられた。
「どうか、先生も…」と、背広を脱ぐよううながされたのだ。
礼儀を重んじる兎束さんを気づかって、まず自分から背広を脱がれる。そんな陛下の自然な心遣いに、兎束さんは感動したという。
レッスンが終わると、陛下はよくお茶菓子を出して兎束さんとの会話を楽しまれた。ある時ふと兎束さんが窓の外に目をやると、庭の芝生の上を小さな女の子が走り回っていた。そのすぐ後ろを女官が少し慌てた様子で追いかけていく。
ずいぶん元気な女の子だなと兎束さんが思っていると、陛下が微笑まれながら「愛子です」と教えてくれた。そのときの陛下は愛情に満ちた父親の顔をされていたという。
「ここまで熱心な人はいない」
その後40年以上続いた交流のなかで何よりも兎束さんを驚かせたのが、陛下のビオラへの情熱だった。多い時には週1回のペースでレッスンを希望されたと言う。それは若き日の陛下が兎束さんへ宛てた直筆の手紙にも表れている。
「おいそがしい中恐縮ですが、
いくつかの曲の中で指づかい、
ボーイングが分からないところが
出てきましたのでご教示いただければと思います。
譜面中◎をつけた箇所のみでけっこうですので
指づかい及びボーイングを記していただけますでしょうか。
(いちおう自分なりに指づかいを
考えたところもありますが…)」
(※ボーイング:弓の動かし方)
インターネットもスマートフォンもない時代、忙しくてレッスンを受けられない期間も、わざわざ手紙を書いてまで陛下は熱心に指導を求めてこられたのだ。
その情熱の深さをふりかえり、多くの生徒を教えてきた兎束さんも「ここまで熱心な人はいない」と驚く。
どんなことにもいちずに取り組み、どんな人にも真摯に向き合われる。
そんな陛下の“熱いハート”をよく知る兎束さんは、陛下が“運命の人”雅子さまとご結婚された際、その出会いを祝したオリジナル楽曲を両陛下へプレゼントした。
楽曲名はすばり、『ロマンス』。
ロマンティックな情熱をたたえながらも、穏やかな大河のように流れるその旋律は、ピアノを弾かれる雅子さまと一緒に演奏していただけるように、ビオラとピアノで編成された。
この楽曲『ロマンス』のメロディーのように、ご結婚から今日まで両陛下は仲むつまじくその長い旅路を辿ってこられた。
ご成婚から30年という大きな節目を迎える今年ーー、「お二人がこれからも健やかに、国民と共に歩まれていくことを祈っている」と話す兎束さんは、『ロマンス』を演奏する。
『皇室スペシャル2023 ~祝!ご成婚30年…両陛下と愛子さま“絆”の物語~』
2月25日(土)午後4時30分〜(フジテレビ)
https://www.fujitv.co.jp/b_hp/koshitsu_sp/
番組では、両陛下へささげたこの“幻の名曲”『ロマンス』を、ご成婚30周年を迎える記念として兎束さんが夫妻で初めて演奏してくれた。30年の時を経てよみがえる『ロマンス』の音色、ぜひお楽しみに。
その他、番組では雅子さまご出産の主治医が明かす「愛子さまご誕生秘話」や、プライベート旅行で見せられていた微笑ましい家族団らんの様子など、ご成婚から30年間におよぶ“ご家族の物語”をお伝えする。