富山とも関わりの深い、日本最古の和歌集「万葉集」。その万葉集を現代の若者言葉で訳した本が全国的にヒットし、1300年の時を経て注目を集めている。
“思わず笑ってしまう”という、「現代版万葉集」とは?

スマホを手にした大伴家持?書店では在庫切れも…

皇族や貴族、名もない一般の人々の歌まで、約4500首の和歌が収められている日本最古の歌集「万葉集」。その編さんに大きく関わったのは、越中国守だった大伴家持だといわれている。

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そんな、富山ともつながりの深い「万葉集」。元号「令和」は「万葉集」から引用されたものだったことから、元号の変わった2019年、富山も令和フィーバーに沸いた。
この万葉集が今、1300年の時を経て注目されている。

令和5年になった今、全国的にヒットしているのが「現代版万葉集」だ。表紙には、スマートフォンを手にした大伴家持が描かれている。

2022年10月に発売された「愛するよりも愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集1」は、香川県在住の作家・佐々木良さんが自ら立ち上げた出版社、その名も「万葉社」から出版した。発行部数はすでに5万部という人気ぶりで、富山市の「紀伊國屋書店 富山店」でも現在、在庫切れの状態だという。

紀伊國屋書店 富山店・林亮介店長:
お客さまから電話の問い合わせが増えてきて、入荷した分がすぐ売り切れてしまった。入荷に努めていて、(次は)2月下旬の入荷予定

なぜ人気?「イケメン」「ナンパ」現代の言葉で“共感”誘う

ほかの現代語訳の本と何が違うのか、その中身をのぞいてみると…。

「キュンキュンして死にそう」っていったら「死ね」っていわれるし、世間は冷たいもんや
「恋ひ死なば 恋ひも死ねとや 玉桙の 道行く人の言も告らなく(巻十一 2370番歌)」
※「告(の)らなく」は「告(つ)げなく」とすることも 

くんのかい?こんのかい!こんの?くんの?いや こんのかい!
「来むと言ふも 来ぬ時あるを 来じと言ふを 来むとは待たじ 来じと言ふものを(巻四527番歌)」

人気の理由は、現代の若者言葉やSNSで使われるフレーズ、顔文字なども織り込み大胆に意訳されている、その面白さだ。

例えば、“我のみぞ”は「うちだけやん」、“ますらを”は「イケメンの俺」。そして“初めより長く言ひつつ”は、「最初はあんたがしつこくナンパしてきたんやんか」。

この本について、万葉集研究で知られる高岡市の「万葉歴史館」で聞いてみると…。

高岡市万葉歴史館 新谷秀夫学芸課長:
研究者にはこんな本作れないなというのが、いちばんの感想。本当に歌の訳だけを並べるという、そういう点で面白い。若い人たちが万葉集の世界を知るきっかけにはなるかなと

こうした本をきっかけに、若い世代にももっと親しんでほしいと話すのは、万葉集を研究し続けて約40年の新谷秀夫さんだ。その魅力について…。

高岡市万葉歴史館 新谷秀夫学芸課長:
(万葉集の魅力は)一言でいうと”素直”。ストレートに思いを詠んでいる。(日本人の)“心の源流”ですよね。日本人が本来持っていた心の動きが万葉集に残っている

そして作者の佐々木良さんは、短い言葉に思いを託す和歌は「現代の感覚にも通ずるところがあると」話し、富山の読者にもメッセージを寄せてくれた。

「愛するよりも愛されたい」作者 佐々木良さん:
和歌は31文字。そこが面白いというか、ツイッターだと140文字。そこがすごく(現代の感覚と)似ているのかなと。

「愛するよりも愛されたい」作者 佐々木良さん:
(万葉集は当時の)意外と若い人たちが詠んでいて、現代語訳で読んでみると、「私たちと全然変わらない恋をしていたんだ」と。そこでみんな共感(できる)。ドラえもんや大伴家持が富山県に行く話も出てくるので、良かったら読んでください

(富山テレビ)

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