雪を解かす「融雪器」カンテラ。これがきっかけで先週、JR京都線で大雪による大規模な列車の立ち往生が発生した。JR西日本の対応は何がいけなかったのか検証しました。

JR西日本が対策を怠ったワケ

「10年に一度の寒波」に見舞われた1月25日。

記者リポート:
午前1時すぎ、JR西大路駅です。あちら電車の中に多くの乗客が取り残されています

JR京都線の列車内におよそ7000人の乗客が閉じ込められた。

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立ち往生した列車はあわせて15本。キッカケは線路の向きを切り替える「ポイント」21カ所が凍りついて動かなくなったことだった。

本来「ポイント」を温める「融雪器」があれば防ぐことはできたのだが…

JR西日本近畿統括本部・三津野隆宏本部長:
社内で定めた融雪器の点火目安を上回る降雪があったことも1つの原因

JR西日本が融雪器を使う目安としている積雪量は10センチ。

今回、予報が8センチだったため設置しなかったというが、実際の積雪量は15センチだった。定められた目安は絶対なのか。

JR西日本のベテラン現役社員に聞くと…

JR西日本の現役社員:
現場は上から言われた通りにするだけ。だから勝手に電源入れるわけにもいかへんし、勝手に火をつけるわけにもいかないのかなと思います

現場での判断が採用されない企業風土である中、絶対的に守られた目安”10センチ”は適切だったのか

一方で、守られなかった基準もあった。

「閉じ込めが1時間を超えたら乗客を救出する」という基準を破り、凍った「ポイント」の修理を優先しようとした結果、立ち往生は最長10時間に及んだ。

JR西日本・長谷川一明社長:
検討はしましたけれども、夜間であり非常に足元が暗い。ただちに歩いていただくという判断には至らなかった

さらに現役社員はほかの路線への影響について指摘する。

JR西日本の現役社員:
1つの電車(で乗客)を降ろすと、最低でも3~4時間は必ず止まります。ということは全線が止まってしまう

JR西日本の「列車を走らせよう」とする強い意識。18年前、JR福知山線脱線事故で息子を失った上田弘志さんは「このままではまずい」と訴える。

上田弘志さん:
「安全・安全・安全」と言われてきて慣れっこになってしまっている。戻って行っているような気がします

あの事態の3日後、深夜の京都駅ではわずかな雪でも早めの対策が取られた。今、新たなルール・意識づくりが問われている。

新実彰平キャスター:
大規模な立ち往生はなぜ起きてしまったのか、経済キャップで学生時代にアルバイトとして駅員だった経験もある鈴木記者とお伝えします。鈴木記者は「2つの判断ミス」が重なったとみているんですよね?

関西テレビ経済キャップ・鈴木祐輔記者:
1つが、立ち往生の原因となった「融雪器」見送りの判断ミス。2つ目が降車させない判断ミスと考えています。スタジオにはJRが使っているものと同じカンテラ融雪器を用意しました。京都駅には91カ所のポイントがあり、すべてこれを使います。線路のポイントの下に、火をつけて手作業で入れていきます

関西テレビ経済キャップ・鈴木祐輔記者:
燃料は灯油で火をつけると8時間ぐらいしか持ちません。先日の大雪では夕方から雪が降ってきたので昼ごろに融雪器を入れればいいですが、入れるためには電車を止めなければなりませんでした

新実彰平キャスター:
他の関西の私鉄は運休していましたが、どんな状況だったのでしょうか

関西テレビ経済キャップ・鈴木祐輔記者:
阪急は灯油式、京阪と近鉄は電気式の融雪器を使っています。いずれの社も事前に融雪器を設置していましたが、具体的な基準はなく、危なかったら準備しなさいという指示が現場に出ていてトラブルを回避出来ていました。一方でJRは10センチという基準に達しておらず、設置出来なかったということです

新実彰平キャスター:
なぜJRは臨機応変に対応できなかったのでしょうか?

関西テレビ経済キャップ・鈴木祐輔記者:
JRには「エリアが広すぎる」という問題があります。例えば京都線だと北は福井県の敦賀から西は兵庫県の播州赤穂駅まで一体で電車の運行が行われています。電車が止まると非常に影響が大きくなります。ちなみに同じ灯油式の阪急は電車を止めずに安全を確認して融雪器を置いていたということです

新実彰平キャスター:
これは阪急がJRに比べてポイントの数がそれほど多くないから出来るのでしょうか?

関西テレビ経済キャップ・鈴木祐輔記者:
JRは上りだけで何本も走っています。貨物列車も特急列車も多いです。複雑な体系なので止めるしかありませんでした

新実彰平キャスター:
常設できる「電気式の融雪器」を整えることはJRでは費用面などから難しいのでしょうか

関西テレビ経済キャップ・鈴木祐輔記者:
そうですね。JRにも電気式はありますがほとんどが雪の降る地域に集中しています。京阪神はほとんど灯油式の融雪器でやっています。京都駅はすべて灯油です。

危機管理が専門の日本大学・福田教授は「ダメな対応だった」としている。

危機管理で大事なのは起こる前の準備と起こった後の対応が大切だが、起こる前として設備・人員など対応能力に限りがあるなら計画運休にするべきだったと指摘する。

また立ち往生への対応に関しては、早めに自治体への協力要請をしていれば自衛隊の災害派遣もできたかもしれないということだ。

関西テレビ経済キャップ・鈴木祐輔記者:
今すぐに人員を確保するなどの対応は難しいです。必要であれば計画運休や間引き運転の対応はできたと思います。雪だとそういう状況がありうるということを、利用者側も事前にわかっておく、理解しておくといった意識改革も必要になりそうです

(関西テレビ・報道ランナー 2023年2月1日放送)

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