2023年中にも自衛隊施設が開設する予定の石垣島。安保関連3文書にも明記された敵基地を攻撃する反撃能力が、地元の頭ごなしに配備されないか住民は不安を募らせている。

自分たちの生活を守るために誰かを殺してもいいのか

石垣市議会 花谷史郎 議員:
私達の地域から発射されたミサイルが、やはり誰かを殺してしまうかもしれないっていうところもすごく複雑な思いで。自分たちの生活を守るために誰かを殺してもいいのか。
そもそも戦争が、なるべく起こらないようにしようという姿勢をまず国にはしっかり見せてほしいと思います

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石垣市議会の花谷史郎議員だ。

花谷議員は2022年12月、政府が閣議決定した安保関連3文書の改定で、敵のミサイル発射基地などを攻撃する「反撃能力」の保有を盛り込んだことや、南西諸島の防衛体制の強化を打ち出したことに懸念を示している。

石垣市議会 花谷史郎 議員:
私達島民は当然蚊帳の外状態。ましてや、国会ですら議論せずに3文書を決めてしまう。
この国の姿勢、民主主義っていうのはどうなっていくのかと。やはり、これをまず全国民が今、この民主主義の危機というところを認識していただいて、全体的に議論していただきたいなと考えています

反撃能力保有を明記 歴史的な大転換

日本のこれまでの防衛政策の基本は憲法第9条に基づく「専守防衛」。
日本の領空・領海において攻撃を受けた際に初めて迎撃し、その攻撃を退避させるというのが基本戦略だった。

しかし、今回の3文書の改定では、日本を飛び超えて他国のミサイル発射基地などへの攻撃を可能とする「反撃能力」の保有が明記され、戦後の防衛政策における歴史的な大転換となった。

大転換に踏み切った理由について岸田総理は次のように説明している。

岸田首相:
我が国の周辺国・地域においても核ミサイル能力の強化、あるいは急激な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きが一層顕著になっています

石垣市中山市長「すぐに必要かどうかの判断は難しい」

2023年中にも陸上自衛隊の施設が開設する石垣島。
石垣市の中山市長は政府の対応を支持している。

中山義隆 石垣市長:
反撃能力がある相手に対しては、攻撃を躊躇する可能性はあるというふうに思いますので、そういう意味では敵基地攻撃能力自体は反撃するためのですね、抑止力に繋がるというふうに思っています

中山市長は国防については国の専管事項だとする一方、石垣島に反撃能力が必要かとの質問には次のように回答した。

中山義隆 石垣市長:
持つべきだという認識ではないです。これについてはいろんな考え方があると思いますので、まずそういった説明を聞いてからでないと、すぐに石垣に必要かどうか、というような判断は難しいと思います

石垣島にもミサイル部隊が配備されるが、沖縄防衛局は市に対し現時点で反撃能力がある長距離のミサイルを配備する予定はないと説明している。

これまでの説明と違う 賛成してきた人も違和感

こうした中、2022年12月19日石垣市議会で2つの意見書が可決された。

与党議員が提案した意見書(全会一致):
あくまでも専守防衛のための自衛隊配備という説明がなされてきた経緯がある中、安保関連3文書の改定や今後の抑止力向上に伴う施設整備等については、これまで以上に十分な説明が必要なのは言うまでもない

野党議員が提案した意見書(賛成多数):
自ら戦争状態を引き起こすような、反撃能力をもつ長射程ミサイルを石垣島に配備することを到底容認することはできない

意見書を提案した花谷議員は政府が、頭ごなしに石垣島の自衛隊基地に反撃能力を持ったミサイルを配備しないか危惧している。

石垣市議会 花谷史郎 議員:
安保関連3文書によって、全然これまでの説明と違うような状況になってしまった。そうなってくるとこれまで賛成されてきた方もちょっと違和感を感じていて、そういう状況の中で、私達が市民の代弁をしてここは意見書を出さないといけない

基地の周辺に住む具志堅正さんだ。
具志堅さんは当初から自衛隊基地の配備には反対の立場だった。

具志堅正さん:
本当は受け入れたくないんですよ。ここは大自然に恩恵を受けた場所ですし、目のあたりにすれば複雑な気持ちになりますね

住民投票条例案を否決 意思表示の機会なく配備進む

反対する人達は自衛隊の受け入れについて、十分な議論や説明がされていないとして市民らが意志を示す住民投票を実施しようと、有権者の3分の1以上にあたる1万4263筆を集め市に条例の制定を要求。

しかし、市議会が2度にわたって住民投票に向けた条例案を否決した為市民が意思表示をする機会がないまま配備が進められてきた。

具志堅正さん:
よく国の専権事項とおっしゃっていますよね。それはこちらに住んでいる住民からしたら、住民の声は聞き入れてほしいんですよ

具志堅正さん:
色々な考えはあると思いますけど、ミサイル基地ができて自分たちの生活が安全になるということは一度も考えたことはありません

具志堅さんは軍備の増強で抑止力を高めることよりも外交努力を尽くし、平和的な解決を求めている。

具志堅正さん:
敵基地攻撃能力のミサイルですから、石垣島の基地も相手からすれば脅威じゃないですか。それで何か有事があれば、最初にこの島全体が有事に巻き込まれていくっていう可能性が強いんですよ

目まぐるしく変わる安全保障環境と国防政策に翻弄される島。
防衛体制の強化が声高に叫ばれる一方で、かき消されている声があることを忘れてはならない。

(沖縄テレビ)

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