国内で生産される花や観賞用の植物のうち、約3割は捨てられている現状。ロスが多い上に、一瞬で役目を終えてしまう花も少なくない。短い”花の命”に新たな活用法を見出そうとするSDGsの取り組みを取材した。

華やかな装花の”その後”

広島県福山市の河川敷で、ウェディングフォトの撮影が行われた。草原に立つモデルは、真っ白なドレスを大人っぽく着こなした新婦と、カジュアルなスーツ姿の新郎。自然のロケーションを生かし、まるで雑誌のワンカットのようだ。

広島県福山市の河川敷で撮影されたウェディングフォト
広島県福山市の河川敷で撮影されたウェディングフォト
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撮影用に装飾したアーチにはさまざまな花や植物が使われている。作成したのは、結婚式の装花やブーケなどを手がける木原利奈さん。

atelier R・木原利奈さん:
モデルさんありきというか、人がいてこその飾りなのでうれしいです

幸せな瞬間に彩りを添える花。しかし、活躍するのはほんの一瞬。中には出番がない花も…。撮影会やイベントでは、いざという時のために予備の花を用意するのが一般的のようだ。

atelier R・木原利奈さん:
”予備花材”と言って、何かあった時のために必要数よりちょっと多めに用意しているので、予備花材はすべてロスになってしまうことが普段からよくあります

私たちの生活に潤いを与えてくれる花や植物。国内で生産される花・花卉(観賞用の草花や植物)は、2020年で約33億本。その3割にあたる約11億本が廃棄されると言われている。

「捨てることがストレス」

木原さんは役目を終えた花や植物をゴミ箱ではなくアトリエに運び込み、長持ちするように茎の先を切り落として素早く仕分けていった。

持ち帰った植物をアトリエで仕分ける木原さん
持ち帰った植物をアトリエで仕分ける木原さん

atelier R・木原利奈さん:
この植物たちはまだまだ元気なので、水につけてあげて、次の出番がある時に使えるようにしたくて

作業を進める木原さんの頭上には、たくさんのドライフラワーが吊るされている。

木原さんのアトリエに吊るされたドライフラワー
木原さんのアトリエに吊るされたドライフラワー

atelier R・木原利奈さん:
余ってしまって痛む前に何とかしたいなっていう花を吊っています。ドライになったら小物やブーケに加工します。いいように言えば「第2の人生」ですね

自分のアトリエを持った2020年から、役目を終えた花を再利用して小物を作り始めた木原さん。

捨てられる花をドライにして小さく束ねた作品
捨てられる花をドライにして小さく束ねた作品

atelier R・木原利奈さん:
お花を扱っているとロスになるものが多くて、すごくきれいなのにもらわれる先がなくて枯れていってしまうのを見て…。しかも、それを捨てないといけないのが結構ストレスだったので

atelier R・木原利奈さん
atelier R・木原利奈さん

作品の名前にも木原さんの思いが込められている。

atelier R・木原利奈さん:
あえて”ロスフラワー”って名前を付けました。ちょっとでもその背景を知ってもらえるかなと思って

花を再び輝かせるために

atelier R・木原利奈さん:
ただの枯れた花じゃなくて、どうやったら魅力的なドライフラワーになるか。飾りたいと思ってもらえるような作品になるか

atelier R・木原利奈さん
atelier R・木原利奈さん

役目を終えた花を再び輝かせるためには「欲しい」と思ってもらう必要がある。店舗を持たない木原さんの作品はオーダーメードが多いが、街の雑貨屋で気軽に買えるものもある。「お店で選ぶ楽しさを感じてほしい」というのが木原さんのこだわり。

福山市卸町のインテリアショップ「101 design store」
福山市卸町のインテリアショップ「101 design store」

福山市卸町のインテリアショップには、”ロスフラワーカード”と名付けられたドライフラワー付きのメッセージカードが並んでいた。ドライでも鮮やかな色が残っている。そのまま飾っても、メッセージカード代わりにプレゼントに添えても素敵だ。

101 design store・平川雅之さん:
木原さんのドライフラワーは、本来なら捨てられる運命にあるお花ですけども、再生して再び皆さんを喜ばせてくれています

リースなど木原さんの作品を扱う「101 design store」
リースなど木原さんの作品を扱う「101 design store」

atelier R・木原利奈さん:
もう捨てないといけないって思っていた花も、使い方や飾り方によってはまだまだ楽しめるというのを知ってほしいです

役目を全うした花、人の手に渡らなかった花…。そんな花に新たな命を吹き込むことで、誰かの暮らしを彩り、ロスを減らす社会の実現へ一歩ずつ近づいている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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