12月22日(木)から開催される全日本フィギュアスケート選手権(大阪府門真市・東和薬品RACTABドーム)。
この全日本選手権に挑む選手たちは、さまざまな思いや目標を抱えて、大舞台に立つ。
今回は今年GPファイナル進出を果たした同世代の2人、佐藤駿(18)と三浦佳生(17)。
羽生結弦がプロへの転向を決めたことで迎えた「シン・フィギュア」時代。この時代をけん引する2人の天才ジャンパーは、どんな思いで全日本に挑むのか。
GPファイナルを終えて帰国した12月中旬に、それぞれの思いを聞いた。
佐藤駿、リスクを負って高難度ジャンプに挑む
今年、北京五輪で鍵山優真(19)が銀メダルに輝き、日本人最年少メダルを獲得。その歓喜の裏で、親友・佐藤は左肩の手術を受けていた。
5種類の4回転を練習で着氷させた経験を持つ佐藤は、“天才ジャンパー”として早くから注目を集めていた。

ノービス時代からその才能を開花させ、史上4人目のノービス4連覇を果たす。15歳のときには、日本人では羽生結弦しか成功させていない大技・4回転ルッツを成功。2019年のジュニアGPファイナルでは、ライバルの鍵山を押さえて優勝した。
しかし、自慢の大技は同時に諸刃の剣となった。
昨シーズン、GPスケートアメリカで左肩を脱臼。さらに、全日本選手権で転倒した際に、脱臼していた肩をさらに痛めたことで手術を決意した。

そんな状況でも佐藤は「4回転とか難しいジャンプを跳んでいったら、ケガはつきものだと思っている。『ケガをしてでもやる』は言い過ぎかもしれないですけど、それぐらいの気持ちでやっています」と、ケガのリスクと闘いながら高難度ジャンプに挑み続けた。
一方でジャンプが跳べない間にスケートの基礎となるコンパルソリーやスケーティングを徹底的に練習。
地道な努力が実ったのか、GPファイナルを終えて演技を振り返った佐藤は「夏に比べて上達してきている」と確かな手応えを感じていた。

佐藤にとっての今年は「進化の年」。
夏から鍛えてきたスケーティングは一番進化を実感していた。ケガがきっかけでジャンプ以外の基礎的な部分がイチからできたことも挙げ、「初心に戻ることができた」と話す。
これまでケガを歩んできた日々は無駄ではない。
今年9月下旬の東京選手権でようやく、実践に復帰した佐藤は、その後徐々に調子を上げていく。
ノーミスのカギは4回転ルッツ
GPイギリス大会で3位、フィンランド大会では2位に入り、シニアデビューしてから初めてとなるGPファイナル進出を果たした。
そのファイナルではショートで6位と出遅れるが、フリーの冒頭で4回転ルッツに成功。その後も大きなミスなくまとめきり、4位に。

帰国後、改めてGPシリーズやファイナルを振り返ってもらうと「ショートは悔しい結果となりましたが、フリーではフィンランド大会に続いてノーミスの演技をすることができたので、自分の中でもかなり自信になりました」と語る。
今シーズンのショート「Carol of the Bells」は、「激しさと切なさと苦しみ、複雑な感情からの解放を表現」がテーマ。
本人もお気に入りのこのプログラムはまだノーミスの演技ができていないため、「しっかりとノーミスの演技を。すごく良いプログラムなのでジャンプのミスでそれをかき消さないようにしたい」と明かした。
佐藤が何度も口にする「ノーミス」。それを達成するためのカギが武器である4回転ルッツだ。
「昔から試合に入れてきたジャンプで、僕の一番の武器。その武器を活かしたいと思っているので、4回転ルッツをまずはショートから決められるように。練習ではうまく行っているんですけど、試合になると緊張とかもあるかもしれないので。
ショート、フリー両方ともルッツを決めたことがまだ1回もない。そういった部分ではまだ自分のものにできていないと感じているので、全日本では両方とも降りられるようにしたい」

そして佐藤にとって今年の全日本は、4年後の五輪に向けての始まりだと闘志を燃やす。
「逆に“もうあと4年しかない”。今年の全日本で選考会が始まっていると思っているので、今年からしっかりと結果を残せるように。ショートから良いスタートが切れるようにして、フリーはファイナル以上の演技を。今シーズンで一番良い演技ができるように。
もちろん表彰台を目指していきたい。(世界選手権の会場である)さいたまスーパーアリーナは去年、悔しい思いをした舞台なので、リベンジしたい気持ちも強い。世界選手権に出たい」
全日本に向けての目標は「落ち着いて!練習通りに!」。去年の全日本は総合7位。悔しい思いをした全日本で佐藤は、今年こそノーミスで表彰台を目指し、世界選手権を狙う。
そして、その表彰台を狙う同世代がもう一人いる。
三浦佳生、GPファイナルのリベンジ誓う
2021年、全日本ジュニアを制した“王者”三浦が、今シーズンにシニアデビューを果たした。

昨シーズンはジュニアながら全日本で五輪代表の羽生、宇野昌磨、鍵山らに次ぐ4位に。
さらに飛び級で出場した四大陸選手権は、フリー前日に肉離れをしてしまうが、気迫の演技で3位となり表彰台にのぼった。
2学年上の鍵山、佐藤とはジュニア時代からしのぎを削ってきた。
北京五輪でフィギュア男子フリーが行われた日、テレビの前で鍵山にエールを送っていた三浦は、鍵山の快挙に「悔しいという感じよりは、自分も早く戦えるようになりたい。優真と争える存在になりたい」と語った。

そんな三浦の持ち味は、“ランボルギーニ”と異名がつくほどのスピード感のある演技と、回転速度が速く飛距離があることで多くの加点がつく4回転。
現在はループ、サルコウ、トゥループの3種類を操る。
さらに4回転フリップも練習中だ。

今シーズンはGPシリーズに2戦出場。スケートアメリカとスケートカナダともに2位表彰台とGPファイナルへの切符を一番乗りで手にした。
初出場したGPファイナルでは、ショート3位とまずまずのスタートを切るが、フリー後半1本目の4回転トゥループが2回転に。最後のジャンプで再び4回転トゥループに挑む意地を見せるが、成功せず総合5位で終えた。
試合後自身のSNSで「自分の下手さに呆れています。悔しいです。絶対に全日本見返して見せます」と投稿。
「久々にめちゃくちゃ悔しくなりました。全日本で結果を残して、世界選手権に選ばれて、4回転フリップを世界選手権でやりたいって思いはあります」
そんな三浦は、羽生が抜けた今の日本男子勢を「戦国時代」と例えた。
出遅れたら終わり、というプレッシャーも
この全日本では、誰が勝ってもおかしくないと語り、その中で鍵山や佐藤といったライバルの存在は常に刺激をもらっているという。
以前はその2人に差を感じていたが、今は同じ土俵で戦いはじめていると感じ、「もう容赦なく2人に勝負を申し込む」と常に越える気満々だ。

しかし、ジュニア時代は気負うことなく滑ることができていたが、シニアに上がったことで全日本は「ちょっと怖い」と表現。
日本男子は選手層も厚く、三浦が言うように「戦国時代」のような中で、出遅れたら終わりという危機感から、プレッシャーを感じているようだ。
ただ、それも含めて「全日本は面白い」とその緊張感も楽しんでいた。
だからこそ「自分が必要なことをしっかりやっていくことが重要になってくる」と自分自身との戦いでもあると明かした。

三浦も目指すのは世界選手権への切符だ。去年は羽生の代打で出場権を得るも、ケガによって出ることができなかった。
「このケガは日本で世界選手権デビューするためだった」とポジティブに捉え、代表権をとりにいく。
「全日本は(宇野)昌磨くんもそうですけど、勝たないと頂点は一生来ない。いつかは越す、でもいつかじゃダメ。常に越す気持ちで頑張りたい」
新時代の天才ジャンパーが挑む全日本。大技を決めて道を切り開くのは誰になるか。
全日本フィギュアスケート選手権2022
フジテレビ系列で12月22日(木)から4夜連続生中継(一部地域を除く)
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/japan/
全日本までの道の詳しい概要はフジスケで!https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/toJPN.html