北海道知床沖で観光船が沈没した事故から7か月あまりが過ぎた。20人が亡くなり、いまだ6人が行方不明のままだ。悲劇を未来にどう生かすのか。知床で生きる人たちの思いを取材した。
事故から7カ月あまりが経ち…
協和漁業部「OYAJI」店長・漁師 古坂 彰彦さん:
地元の俺らが食べている、おいしい食べ方を味わってもらいたい。うちの会社で取った魚しか出さない。他のものは使わない。種類は限られちゃうけど、その中でいろいろアレンジしていこうかなと
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北海道斜里町で魚料理の店を始めた、漁師の古坂彰彦さん。
自分で取った魚を振る舞うのが好きなのがきっかけで、自身の愛称の「OYAJI」を店名にした。
メニューに並ぶのは、知床の豊かな海の幸だ。
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協和漁業部「OYAJI」店長・漁師 古坂 彰彦さん:
沖に行けば思い出しますよ、だんだん寒くなってくると。あの時も寒い日でしたから、船に乗れば思い出します
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4月23日、知床沖で乗客・乗員26人の観光船「KAZU1」(カズワン)が沈没した事故。
古坂さんは副救助長として連日、捜索にあたった。
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事故から4日目に、古坂さんの班が菓子やゲーム機などが入った小さなリュックサックを発見。亡くなった3歳の女の子のものだった。
当時捜索にあたった 古坂 彰彦さん:
孫がちょうど3歳の女の子。ゲームもよくしていて、重なってしまって。本当にかわいそうだなと思う
事故が投げかける"暗い影"
あの日から7か月あまり。沈没事故は知床で生きる人たちに大きな影を投げかけている。
知床を訪れる人たちの安全を守るために、何ができるのか。知床で生きる人たちは苦しみながらも、それぞれの答えを探している。
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斜里町で民宿を営む、伊藤憲子さん。
毎月、事故が起きた23日に献花台で花を手向け、行方不明者の発見を祈っている。
民宿石山 女将 伊藤 憲子さん:
朝に海を見て「どこにいるの」って心の中で叫んでいる。冬が来ると流氷が来るし、あと6人はどうなるのかなと。その人たちも早く家族のもとに帰りたいだろうと思って
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30年以上、知床で民宿を切り盛りしてきた。今回の事故の犠牲者とも、かつて関わりがあった。
民宿石山 女将 伊藤 憲子さん:
10年近く前に斜里町ウトロに来て、民宿石山に泊まった人が亡くなったっていう情報が入った。「知床はすごくいいところだから」と、両親を連れてきていたみたい。本当にかわいそう
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17年前に世界自然遺産に登録されて以来、観光客の人気を集めてきた知床。
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しかし、事故の影響でコロナ禍以前の3年前に比べ、観光客数は6割ほどに留まっている。地元の大手のホテルでは…
北こぶしリゾート 佐々木 晃也さん:
観光に行くとなるとどうしても、余暇・楽しみに行くというニュアンスが含まれると思う。事故があった中で「ぜひ来てください」というのは、若干言いづらい部分はあった
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苦しみながらも"前"へ
沈没事故のイメージが観光に暗い影を落とすなか、斜里町の馬場隆町長は事故を教訓に何とか観光を前に進めようとしている。
斜里町 馬場 隆 町長:
海ばかりではなく陸も含め様々なアクティビティの提供をこれからもしていこうと考えている。自然の中で楽しむにはどんなリスクがあるのか。リスクを低減するためにどんなことをしたらいいのか。それぞれの立場できちんと取り組み、その行動を多くの人に伝えることで、安心して知床に来て頂くことにつながると思う。
斜里町 馬場 隆 町長:
計り知れない悲しみ・苦しみを与えた事故ですから、本当に二度と起こしてはならない。新しい知床、新しい斜里町を築き上げるぐらいの気持ちでいかなければならない
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知床を訪れる人たちの安全を守るために、何ができるのか。知床で生きる人たちは苦しみながらも、それぞれの答えを探している。
北こぶしリゾート 佐々木 晃也さん:
よりリアルな想定をしながら、起こった時にどう対応できるのか考えていく。知床の観光に携わる者として、決して忘れてはいけないことだと思っている。観光に係る一員として"二度と起こさない"としっかり頭に置きながら前に進みたい
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民宿石山 女将 伊藤 憲子さん:
来てくれる人に喜んで帰ってもらうには、病気にさせない。そして、無事に帰ってもらう。お客様に寄り添っていくということ
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協和漁業部「OYAJI」店長・漁師 古坂 彰彦さん:
あれだけの大きな事故でしたから、みんな悲惨な思いをした。ただ、みんなそろそろ立ち直ろうと、それぞれ工夫して努力している最中。なんとか知床を盛り返そうという感じ
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事故の深い傷跡を未来にどう生かすか。知床で生きる人たちは心に深く刻み、向き合い続けている。
(北海道文化放送)